第61話 第三試合
コロッセオ中央にて、両者相まみえる。
そこへ審判と思しき人物が近づく。
「では、ルールの確認です。
降参の意思表示をした場合、もしくは私が継続不可能と判断した場合、試合は終了です。
その他何をしても良いですが、観客、及び施設への重大な破損行為は禁止です。
よろしいですね?」
「あいよ、異議なし。」
「……。」
魔法使いは無言で頷く。
「それでは両者開始位置へお願いします。」
そう言って審判は少し離れた。
「あー。ロドリック?だっけ?今日はよろしく。」
ザイードが手を差し伸べる。
だが、ロドリックは気に留めず、背を向けて開始位置に行ってしまった。
観客からもブーイングが走る。
「あらあら、嫌われちゃったかね。」
そう言ってザイードも開始位置へついた。
「それでは、エーテル・コロッセオ!!、第三試合ッ!!
――始めッ!!」
開始と同時にザイードがロドリックに向かって走り出す。
それに対してロドリックはゆっくり詠唱を行い、迎撃を行う。
先ほどまで感じられなかった魔力が、
地の底から噴き上がるように立ち昇る。
〈コクキュウ〉
黒い玉を生成する。基礎的な魔法だ。
ロドリックは重ねて何度も発動する。
黒い玉の群れがザイードを襲った。
「くっそ、やっぱ反則だろ!!」
ザイードは悪態をつきながら回避を試みるが、
「ぐはっ!」
何発かはもろにあたってしまい、
後ろへ吹き飛ばされた。
「はぁ、何が好きで魔法使いと戦わなきゃいけないんだ。」
剣を地面に突き立てて立ち上がる。
だが、開始位置より離されてしまった。
すでにロドリックは次に備えていた。
ザイードは近づくことができず足を止めた。
膠着状態に入ってしまう。
「おいおい!お見合いしてんじゃねえ!!」
「やっぱ魔法はズルだろ!正々堂々戦え!!」
しばらくすると、観客からの野次が酷くなっていく。
剣士は近づけない。
魔法使いは近づく必要は無いが、かといって浪費する必要も無いため、
ただ座して待っているという感じだ。
「ずっとこのままならどうなるんですか?」
ユーリ先生に聞く。
「基本的には指導が入る、
だけど剣士に不利になるだけだから、目をつむるんじゃないかな。
彼、人気みたいだし。」
「そうなんですね。ユーリ先生はどっちが勝つと?」
「魔法使いだね。」
断言された。
まあ、素人目から見ても不利な状況だ。
どうしようもないものはどうしようもないらしい。
やはり、ユーリ先生ほど速く動けないと、どうすることもできないのか。
そんなことを考えていると、試合が動く。
「ま、出来ることはやってみるか…。」
ザイードが剣を構えながらゆっくりと近づく。
ロドリックも構えるが、魔法は発動しない。
ザイードが開始位置を過ぎる。まだ、ロドリックは何もしない。
更にザイードが近づく、
刹那。ロドリックが魔法を発動する。
先ほど同様、〈コクキュウ〉がザイードを襲った。
「うりゃああああ!!!」
ザイードは魔法に対して剣を切りつける。
一つ、剣に命中する。
だが、〈コクキュウ〉が弾けた勢いで剣士が退く、
そこに対して更に〈コクキュウ〉が追撃を行う。
「なめんな!!」
襲い掛かる〈コクキュウ〉に対してザイードは迎撃体制を取る。
一つ、また一つ、切り落としていくが、ロドリックとの距離は遠くなるばかり――
そう、思った次の瞬間だった。
ロドリックが魔法を発動する。
「な!いつの間…」
いつの間にかザイードに近づいていたロドリックの〈コクキュウ〉をもろに受け、
ザイードは倒れた。
司会の10カウントが始まる。
だが、ザイードは立つことは出来ず、ロドリックの勝利となった。
観客からのブーイングがこだましていた。
ロドリックは表情を変えずに、入場口へ歩いて行った。




