第6話 図書館と王家
ホームルームが終わり、第三教室を後にし、皆それぞれの目的地へ散っていく。
先ほどの校長の話が本当なら、魔力が無くても強くなれるということなのだろうか。
ユーリ先生は全力で否定していたが。
――あの校長のことだ。ノリで適当に喋っていただけかもしれない。
あれこれ考えながら、目的の場所につく。図書館だ。
ここには、各国から集められたほぼ全ての蔵書がある。
この学校に入った楽しみの一つでもあった。
中に入ると目の前に広がる光景に思わず絶句してしまった。
世界の全てが、理解可能な形で並んでいる。そんな錯覚を引き起こすだけの景色がそこにはあった。
「流石に、圧巻だな。」
「うわ、ビックリした。」
すぐ隣に誰かいたらしく、驚かせてしまった。
「すみません。驚かせてしまって。」
「いえいえ、こちらこそ、なんか迷ってそうだったから。話しかけようかと思って。」
目を向けるとそこには、車輪のついた変な椅子に座った男がいた。
「ここは初めて?少し案内しようか?」
「あ。はい。お願いできますか。」
「もちろん!」
車輪が独りでに回転して男が椅子ごと移動する。
凄い技術だ。魔力か、それとも別の何かなのか。
「基本的には作者で分類されているよ。一階は大体ソラリス王国だね。多いからだけど、他の国のものは二階、作者不明のものはこっちの棚。大まかな案内版はあそこにある。」
「ありがとうございます。」
「いいよいいよ。学ぶ者はみな兄弟さ。」
軽快な人だ。少なくとも、恩を着せる気はなさそうだった。
「その、その椅子って。」
「あー、これ?やっぱり気になるよね。生まれつき足が悪くてね。どうにか楽に移動できないか考えて、親友と作った。スゲーでしょ。」
「す、スゲーです。」
見たこともない技術だった。精巧に作られているのがわかる。
「こういうのは少し得意なんだ。まあ、また迷ったら声をかけてよ。大体ここにいるから。」
「ありがとうございます。」
そう言って男は立ち去った。いや、立っていないから座り去った。
「あれ、ジル兄と知り合いだったの?」
そんなことを考えていたら、また声をかけられる。
教室にいた。見覚えのある少女、ジーナ・ソラリスがそこにはいた。
「ジル兄ってのがさっきの人だったら、初めましてだな。」
「意外、ジル兄が話しかけるなんて。」
そうか?結構フランクだったが、
「兄ってことはやっぱりあの人がジル・ソラリスか。」
「え、知ってたんだ。」
ジル・ソラリス。太陽王直系で唯一の男。
足が弱く、公の場には顔を出さないらしいという噂だけ耳に入っていたが、
普通に良い人といった印象だったな。
「そりゃあ有名人だし。……なんだよ、その『え?』って顔」
「いや、だって王族相手だったら緊張するでしょ。なのに普通に会話してるから。どう見ても庶民出身だし。」
ナチュラル失礼な奴だな。
「全人類平等主義なので。」
「王族に言っちゃう?それ、造反者と取られても仕方がないわよ。」
そういえばどうしてだろう。何となく兄弟にするように軽口を言ってしまった。
「……信用しているから、かな。」
「どうして?」
「筆記満点の奴がいちいち新設の学科なんか来ないだろ。ということは世間的な価値より、自分の指針に従って生きている証拠だ。そんな奴が庶民の戯言に一々腹を立てるとは思えない。」
これは本心だ。あの瞬間はムカついたが、それなりに理由があるのだろう。
彼女を見ると驚いているようだった。こうして見ると、意外と表情が豊かだ。
そこから少しだけ目を伏せ、小さく息を吐いた。
「……改めまして、ジーナ・ソラリスです。以後お見知りおきを。」
現実には無いドレスをつまむかのように両手を広げてお辞儀をする。
恐らくだが王族の挨拶なのだろう。
「ご、ご丁寧にどうも。リオ・フェルムです。以後お見知りおきを。」
突然の挨拶に戸惑いを隠せず、声が上ずってしまう。
顔を上げると彼女は笑っていた。




