第55話 散策
ジーナと共に宿から出た。とりあえず賑わっている市内の方に足を進める。
やはり、商売の喧騒が耳をつんざく。
街全体が意思を持っているかのように、僕には響いた。
「…やっぱりしんどいな。」
「まあまあ、非日常は観光の醍醐味でしょ?それにこう言うのは楽しんだもの勝ちよ。」
ジーナに宥められる。
確かに、いつまでも卑屈だと、ジーナも楽しめないか…。
「そうだな、少し気張るか。じゃあどこいく?」
「特に決めては無いけど、民芸品店は行きたいわ。」
「民芸品ね、多分こっちじゃないかな。」
そう言って、商店街の入り口の方を指す。
「あら、知ってるの?」
「いや、全く。でも民芸品なんて観光客しか買わないだろ?
入り口に多いんじゃないかなって。この辺りは宿舎も多いし。」
足を運んでみると、
推測通り、お土産屋さんが立ち並んでいた。
目を凝らしてあたりを見渡すと、その中に民芸品店『ツクリテ』という看板が目に入った。
「本当にあった。リオやるじゃない。」
「お気に召されて何よりでございます。お嬢様。」
「うむ。くるしゅうない。」
ジーナはそう言って少し笑い、『ツクリテ』に入っていった。
後を追って中に入ると、
どこかの部族がつくったらしい、手作りの雑貨が所狭しと並んでいた。
「そういえば、なんで民芸品なんだ?」
「半分は私の趣味、好きなのよ。こう言うの。」
「…それはまた意外だな。」
率直な感想だった。
「うん、よく言われる。でも見て、可愛くない?」
そう言ってジーナは、口を大きく開け目が異様に大きい妖怪のような像を見せてきた。
「…人の心を理解するのは難しいと思いました。」
「普通にわからないで良いから。」
ジーナは唇を少し尖らせながら棚に戻す。
「こういうの見てるとね。人って凄いって思っちゃうの。」
そう言われて、棚に目を向ける。
同じようなものが並ぶ棚でも、
よく見ると所々形が不揃いだったり、欠けたりしている。
街の店なら、不良品だと怒るところなのかも知れない。
だがここの商品を見て、そういう感情にならないのは、
一つ一つ丁寧に作られていることが、何故か伝わってくるからだろうか。
確かに、凄いかも知れない。可愛くはないが。
「…そっちはよく分かった気がするよ。」
そういうと、ジーナは嬉しそうに笑った。




