第54話 再考
「エーテル・コロッセオの下見は明日するから、
今日は解散ね。ニールス、荷物を宿に運んでおいてくれ。」
「はーい。」
時刻が夕暮れに差し掛かっていたため、
ユーリ先生はそう言って街中に消えていった。
僕らはニールスさんについていき、宿についた。
「鍵はこれね。部屋は2階にあって、ドアに番号があるから、同じ番号の部屋に入れる。
じゃあ、また明日の10時頃に、ここに集合ね。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
僕とジーナは鍵を受け取り、各々の部屋に入る。
荷物と呼べるほどのものもなく、
まとめた布袋を部屋の隅に放り投げて、ベッドに身を沈めた。
「なんか、すごい世界に来ちゃったな。」
つい数ヶ月前まで、孤児院で平和に暮らしていたのに
今や、国の代表の一人になってしまっている。
いや、親善試合を申し込まれた時点でそのことは分かっていたのだが、
今日になってようやっと実感が湧いてきた。
「まあ、出来ることをやるだけ…か…。」
ジーナがよく言うセリフを真似てみる。
あれこれ考える自分とは異なる言葉に違和感を感じた。
――本当に、僕はここに居ていい人間なのだろうか。
そんな考えが、胸の奥で静かに渦を巻いていた。
扉からノックの音が響いた。
起き上がって扉を開けると、
そこにはジーナが立っていた。
「お疲れ様。どう?荷解きとか終わった?」
「あ、ああ。これといって特に解くものもないから。」
先ほどまで頭の中に登場していたため、
少し動揺しながら答えた。
「そう、少し散策に行かない?お土産とか買いたいし。」
「帰りの時の方がいいんじゃないか?かさばるだろ?」
「ユーリ先生じゃないけど、一応外交的に考えてみて?
勝敗に不満があったら、闇討ちとかあるかもよ?
まだお互いの顔も知らないんだから。」
なるほど、ある意味今の方が安全というわけか。
「…確かに、それじゃ行こうか。少し準備するから待っててくれ。」
それによく考えれば、
いや、考えなくても外国なんて初めて来たんだった。
別件でそれなりに楽しんでも、罰は当たらないだろう。
そう思い直し、急いで身支度をして出かける準備をする。
柄にもなく、胸の奥で少しだけ心が踊っていたようだ。




