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世界は魔力でできている  作者: 真瀬 万知久
第一章 入学編

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第53話 力のありか

「お疲れ様です。滞りなかったですか?」


役所の扉を開けると、

ニールスさんが出迎えてくれた。


…いつから居なかったんだ?

ニールスさんの姿に、今さら気づく。

緊張していて、周りが見えていなかったらしい。


「お疲れ様、ああ、大方予想通りといったところだ。そっちも問題なかったか?」


「はい、平和なもんでしたよ。次は何処へ?」


「エーテル・コロッセオへ下見だね。後は事前にソラリス国へ挨拶くらいかなー。こっちは前日の方がいいだろうけど。」


ユーリ先生とニールスさんが言葉を交わしていた。

だが、先ほどまでの現実離れした光景にまだ影響されているのか、

実感が湧かない。


「それじゃあ、リオ君、ジーナさん、一旦宿に行こうか。」


「え、あ、はい。」


ジーナも同じようで、

変な声を上げる。


「…どうしたんだい?」


「いえ、その現実感が無くて…、すみません。」


「あー、分かるよ。外交モードのユーリさんは怖いからね。」


ニールスさんが僕らの気持ちを代弁してくれた。


「そうなの?」


「そうですよ。有無を言わせない感じがプンプンしています。」


「利益にならない事を断っているだけなんだが。」


「今回だって、2名だけの参加でゴリ押ししたんですよね?もう1人くらい用意出来るでしょうに。」


「人を用意するのもタダじゃないんだぞ。

なんでヴァレンス連邦の利益の為だけに、ソラリス国がコストをかけなきゃいけないんだ。

向こうがこっちの利益を用意出来ないのが悪い。しかも今更言ってくるなんて論外だ。」


ユーリ先生は自身の考えを話す。

言われればそうかもしれない。


「厩舎でも迎えを待たずに来ちゃうし、わかってたんじゃないですか?」


「ま、向こうからしたら、よくわからない生徒2名と先生1人、

対応を後回しにする気持ちもわかる。カインズ市長じゃないって言われて納得した。」


「道理で。」


ニールスさんは納得といった表情を浮かべた。


「その、カインズ市長というのはどんな人だったんですか?」


ジーナがユーリ先生に質問する。

先ほどよりは落ち着きを取り戻した様子だ。


「一言でいうと、交渉の達人だね。特に、利益に関しての嗅覚は凄まじいものがあった。」


ユーリ先生はどこか懐かしむように答えた。


「今回でいうと、ジーナさんの好物くらいは用意していたんじゃないかな?」


「え、冗談ですよね?」


ジーナの顔に恐怖の色が濃くなる。


「確かに、カインズ市長ならやりかねない。」


ニールスさんが同調するおかげで、現実感が増していた。


「ああ、気楽に話せる人間だった。」


「それはユーリさんだけです。普通の人はビビって何も言えないですよ。」


ニールスさんがツッコミを入れた。

なるほど、似た者同士という事らしい。


「個人的な用事もあったし、彼なら話が早かったんだが、退任したなら仕方ない。」


そう言ってユーリ先生は歩き出す。


魔法使いというには、あまりにも強い膂力。

研究者というには、あまりにも強い外交力。


この人は一体何を見てきたのだろうか。

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