第52話 為政者
タリスキ市長に案内され、応接室に入る。
「こちらにかけてください。」
案内させるがままにソファに座る。
返ってくる感触がこのソファの価値を主張してきた。
汚したらヤバいよな…。
「では改めて、ヴァレンス連邦より今回の親善試合の取り仕切りを担当させていただきます。
ステファン・タリスキと申します。よろしくお願いします。」
「ソラリス国より王立魔法学校、実践魔法学科の担任、ユーリです。」
「生徒のジーナ・ソラリスです。」
「…同じく、生徒のリオ・フェルムです。」
ジーナから目配せをされ、慌てて挨拶をする。
「先ほどの無礼は失礼いたしました。」
「いえいえ、もう過ぎたことです。」
社交辞令もそこそこにユーリ先生が切り出す。
「それで、今回はどちらの闘技場で行う予定ですか?」
「はい、こちらのエーテル・コロッセオで行う予定です。」
タリスキ市長が地図を広げながら、
地図上の空間を指し示す。
「…随分広い場所を選びましたね。」
「両国の親睦の為ですから、この国一番の大きさです。」
地図上を見ると、他に闘技場と思しき施設があったが、
他とは比較にならないほどの大きさだった。
「それはどうも、ミトレス国側はもう来られているのですか?」
「はい、昨日到着されました。予定通り、3日後に開催予定です。」
「一応の確認ですが、親善試合のルールはヴァレンス連邦の闘技場ルールでいいのですよね?」
「はい、ミトレス国の使者にも了解を得ております。」
「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。
ソラリス国からの確認事項は以上になります。
ヴァレンス連邦からは何かありますか?」
「そちらの方々が今回出場予定の方々で合っておりますか?」
「はい、何か問題ありますでしょうか?」
「いえその、二名となりますと、決着がつかない可能性がありまして、観客としても少々…。」
そう言われればそうだった。
一勝一敗で引き分けで終わっても不完全燃焼の気持ちは大きい。
闘技場がある以上、
興行として決着がつかないのは避けたいのだろう。
「今回はあくまで親善試合、勝ち負けより内容を重視したいと思っております。
現在の生徒は2名のみですので、これ以上増やす理由はソラリス国としてはございません。
何か問題ありますか?」
そんなことお構い無しと言いたげのユーリ先生。
あくまでも主導権を譲らない姿勢に
研究者より為政者としての顔が強くなる。
「承知いたしました。2名での登録で大丈夫です。」
「ご理解いただきありがとうございます。他に何もないようですので、これで失礼いたします。」
「ありがとうございます。当日もよろしくお願いいたします。」
ユーリ先生に促され、立ち上がる。
一礼をして、部屋を出る。
部屋を出てエントランスへと向かうと、
先ほどの受付のお姉さんがユーリ先生を怯えた様子で見ていた。
放っておいた方がいい気がするのだが、
ユーリ先生はそちらに近づき声を掛ける。
「今回は、特に問題無く終了いたしました。ありがとうございます。」
「いっ、いえ、不手際があり申し訳ございません。」
急に話しかけて、声が上ずっていた。
後ろを見ると、上司と思しき人間があたふたしている。
「今度からは、全ての人間に丁寧に対応していただけると助かります。」
「は、はい。承知いたしました。申し訳ございません。」
「いえいえ、わかっていただければ幸いです。では失礼します。」
ユーリ先生が立ち去ろうとするので、慌ててついていく。
もはや僕らは、ユーリ先生に付属するアクセサリーなのではないか
とそんなことを思っていた。




