第5話 例外
「こいつが担任のユーリ先生だ。みんな仲良くしてね。」
先ほどの衝撃的な入室とは異なり、極めて普通に紹介をされる。
ユーリ先生と言われた人物はまだ納得がいっていないのか、不安そうな顔をしていた。
校長に促され、ユーリ先生が教卓に立つ。
「えーと、担任になった、ユーリです。その、よろしく」
不慣れなのか、たどたどしく挨拶をした後、教室の隅に逃げるように目を逸らす。
だが、そんなことよりも気になることがあった。
それは他のクラスメイトも同じだったようで、
「先生、少しよろしいでしょうか。」
生徒の一人が手を挙げる。
「えー、君は?」
「ジーナです。ジーナ・ソラリス」
うわ、王家の家名かよ。
「ジーナさん、ありがとう。それで何でしょうか。」
「ここは実践魔法学科ですよね。担任であるあなたは、どうして魔力が無いのでしょうか。」
正直突っ込んでくれて助かった。
彼女の言うように無いとまでは言わないが、この距離で相対すれば伝わってくるはずの魔力が、ほとんどない。赤子レベルだ。
ユーリ先生がアタフタしていると、代わりに校長が答える
「あー。それは生まれつきでね。大した問題じゃない。質問は以上かな」
……問題だらけだと思うのだが、
「問題だらけだと思います。」
彼女もそう思ったようなので続ける。
「私が聞きたいのは魔力がない理由ではなく、魔力がないお方が何故担任かという理由です。それに体を鍛えていらっしゃるようですし。」
魔法についての一般常識がある。
人によって差異はあるが、体を鍛えると魔力が落ちるというものだ。
ただでさえ生まれつきに起因している魔力を、更に落とす行為である。
「いい質問だね。だが、少し考えて欲しい。君の答えが最適なのだとしたら。担任は太陽王になってしまうよ。」
「飛躍しすぎでは。」
思わず声に出してしまった。
全員がこちらを見てくる。仕方がない。
「極端すぎます。少なくとも魔法の使い方を教えることが可能な人物であるべきでは?」
「魔力が全くないわけではないし、ちゃんと使い方は教えられる。それにだ、入学時の話をするなら彼は筆記テストが満点だったよ。」
それを言われると弱い。そんな中、彼女は続ける
「私も満点なので、異論があります。」
こいつ何でここにいるんだよ。帰れよ。
「そうだね、納得しない生徒もいるようだし、少し話そうか。」
校長が切り替えるように咳払いする。
「彼はこの学校創設以来の天才でね。入試では筆記は満点、入学後も実技以外の全てで秀でた成績を収めている。その上で論文もいくつか発表して、魔法界の歴史を進めている張本人だ。」
やはり実技はネックらしい。
「そして彼の研究結果によって。彼自身もまた進化したようでね。魔力によらない別の力を獲得している。」
校長が言葉をためる。
「端的に言おう。彼は私より強い。」




