第43話 必要
「んー!!、どう?」
「…もうちょいだな。」
翌朝、午前訓練の時間。
演習前にジーナと魔力操作の特訓をしていた。
「…難易度上がってない?目を閉じて操作するなんて。」
「それは言えてる。」
先日発見した文献をもとに訓練を進めていた。
だが、そううまくはいかないようだ。
「とりあえず、見て出来る事を見なくても出来るようにするのが大事みたいだ。
その後に、見て出来る範囲を増やしていくっていう手順だと、効率が良いらしい。」
「結局すぐには出来ないってことね。」
「まあ、そうだな。」
魔力低下の件についてはジルさんも調べてみるとお墨付きをいただいた。
…ユーリ先生より色々教えて貰っている気がする。
「そういえば、ユーリ先生は今日は来ないのかな。」
「そうね。時間になっちゃったから勝手に始めたけど。」
いつもなら走り方を細かく指摘されるのだが…、
今日は顔を出していなかった。
「ジーナ、実際どう思う?ユーリ先生のこと。」
「どうって何?具体的には?」
「いや、何というか、このまま言われた通りに行っていいのか…とか。」
「ユーリ先生は次元の違う強さを持っている。
近づける可能性が少しでもあるなら、それに従うまでよ。」
…素直に羨ましい限りだ。
「太陽王は魔力が多すぎて無理だし、氷の魔女は行方不明。そもそも氷結の魔法なんてリディア・ソラリスしか使えないみたいだし。」
「え、そうなの?」
「そうよ。他の王族でもダメだったって、そもそも文献にも載ってないのよ。」
…また特別なやつが現れた。
「何というか、もしかして太陽王がいなくてもどうにかなるんじゃないか?」
ユーリ先生然り、リディア・ソラリス然り
ジルさんだって太陽王に及ばずとも相当な魔力を持っていることは分かっている。
ここの教師だって、
一般的な魔法使いを優に超える魔法を使えるはずだ。
「どうしたのよ。なんかナイーブ入ってない?」
「……。」
その問いには答えられなかった。
自分が強くなるイメージもわかない。
かと言ってそれが必要とされてもいないかもしれない。
あまり考えないようにしていた現実が一気に襲ってきた。
彼女の言うようにナイーブになっているようだ。
「はぁ、今度は私の番ね。」
「え?」
そう聞き返すと、
ジーナはこちらに近づきながら話す。
「あのね、現時点ではリオの方がユーリ先生に近いのよ?
緻密な魔力操作、魔法の変質、私の疑問にもすぐに答えを出してくれる。」
そして、逃がさないといわんばかりに
こちらの目を凝視して、続ける。
「リオ、あなたがいないと困るのよ。だからここにいて。」
…凄い圧だ。
怖い怖い。
だが、必要としているということを全力で伝えてくれている。
必要とされるのは何も強さだけじゃない。
そんな当たり前のことを忘れていたようだ。
「ゴメン、すこし考えすぎていた。」
「ゴメンじゃありません。」
「ああ、ありがとう。」
「分かればよろしい。」
彼女はそう言って笑った。
その笑顔は僕には太陽のように映った。




