第41話 誤解を説く
「どうしたんだい?その落ち込みよう。」
文献を棚に戻して図書館を去ろうとしていたところにジルさんに声をかけられる。
「いえ、何でも。あ、魔力操作についてはありがとうございます。大変参考になりました。」
「ついてはって事は、何か別の事で引っかかっているんだね?」
意外と鋭い。
「いえ、ただ……実験って、残酷だなと。」
「非人道的な実験はしてないはずだけどな。ラッセルは。」
ジルさんはそう答えながら、僕に椅子に腰かけるように促す。
「とりあえず最初から話してみなって、間違えてもいいし、ゆっくりでもいいからさ。」
相変わらず優しいジルさんに絆され、
向かいの席に座った。
それから少し話をした。
自身の魔力低下のこと。
そして、先ほど見たラッセルの文献が示していた、後戻りのできない可能性のこと。
「なるほど、難しい問題だね。」
僕の話を聞き終えたジルさんは神妙な表情をしていた。
「後天的に、かつ爆発的に魔力を増加させた話は聞いたこともないし。そもそも魔力の向上は一朝一夕に出来るものじゃない。」
「まあそうですよね…。そんな方法があったら、皆やってますし。」
…少しの沈黙が流れる。
「んー、学者としてあまり言いたくはないんだけど…。」
頭をかきながらジルさんは答える。
「実験ってのはあくまでも実験なんだよ。白く見ようとすれば、都合よく白くなってしまうものだし。」
「そうなんですか。」
「ああ、例えばラッセルの実験だって体重減らす、いわゆるダイエットから魔力向上を目指していた。けれど、そもそも肉体に対して作用するという事なら、鍛えると同義かもしれない。」
「鍛えると同義なら低下しないとおかしくないですか?」
「あくまで仮説だよ。重要なのは事実じゃない。解釈だ。」
「…解釈ですか?」
「そう、リオ君。君は今まで体を鍛えた魔法使いが一体どれだけいたと思う?」
「…ユーリ先生くらいしか知らないですね。」
「くらい、なんてもんじゃない。ユーリだけだよ。被験者なんて集まらないし。」
確かに、
自分から魔力を低下させようとする人はいない。
材料が無ければ実験も何もない。
「だから……極端な話、今この場においては、君の主観が答えだ。」
ジルさんはこちらを見据え、力強く続ける。
「リオ君、この事実を君ならどう捉える?」




