第38話 帰る場所
「え、もう行っちゃうの?もう少しゆっくりしていきなさいよ。」
翌朝、テキパキと出発の準備を進めていると、
シスターに呼び止められた。
「別にいいよ、もう。それに僕はもう居ていい年齢じゃないんだから。」
孤児院にも推奨の年齢がある。
僕は受験していたから延ばしてもらえていたが、
通常であれば働きに出ていて孤児院には居られない年齢だった。
「いいのよ、レオ。ここがあなたの家なんだから。文句いうやつは私が許しません。」
「ヘイヘイ。ありがとう。まあ、準備したいこともあるから。」
そう言ってまとめた荷物を持って立ち上がる。
「あ、首飾り、着けてないみたいだけど、どうしたの?」
「邪魔だから寮に置いてる。」
「なんでよ!それが無いと、あなたのご両親に会った時わからないかもしれないでしょ?」
「分からなくていいよ。面倒くさい…。」
突っかかってくるシスターを、適当にあしらう。
装飾品は戦闘時、邪魔にしかならないので、
寮の引き出しにしまったままにしている。
「でも…。」
「いいんだよ。前にも行ったけど、自分を捨てたやつに興味ないんだ。」
それ相応に事情はあるのかもしれないが、
本当に興味もないし、特段恨んでもない。
「それに。……血縁は関係ない。だろ?」
内心でしてやったりと思い、シスターを見る。
だが、シスターは何とも言えない表情だった。
え、そこはしてやられたみたいな感じじゃないのか。
「…じゃ、また。」
思わぬ反応に少し焦り、足早に去ろうとする。
「え、ええ。いってらっしゃい。」
そのまま出ていこうとしたが、
ふと思い立ち、踵を返す。
玄関から広間を抜けて部屋を開ける。
兄弟の顔を、一人ずつ見ていくことにした。
部屋を覗くと、
皆、仲良く寝顔をさらしていた。
今日も平和な様子だ。
「起こさなくていい?」
「いいよ。十分。」
太陽王の代わりだとか、世界の平和だとか。
そんな大それた話を、まだ自分のこととして受け止めきれてはいない。
見知らぬ誰かの為に頑張れるほど、僕は高尚な人間じゃない。
ただ、彼らの為なら――。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」




