第36話 家路
「来週から親善試合に行くから。一旦家に帰りなさい。」
ユーリ先生から暇を頂いたため、
孤児院への家路に付いていた。
ジーナもジルさんや他の姉妹に挨拶してくるとのことだ。
すっかり暖かくなり、特に着こまなくて良い季節になった。
入学してから色々あった。
校長、ジーナ、ジルさん、ユーリ先生や他の教師たち、
孤児院出身の異質な僕に対して、対等に接してくれた。
世界は思ったより優しい。そんな気がしていた。
「厳しいのは現実の方だ。なんてな。」
そんなことを考えていたら、孤児院が見えてきた。
丁度洗濯の時間だったらしく、皆外に出ていた。
最初に僕に気が付いたのは服を干していたトーラスだった。
流石兄弟。なんてことは無い。
ただいつも集中力が無くキョロキョロしているだけだ。
声の届かない所から大騒ぎしているのが見えた。
徐々に他の兄弟たちも気が付き始めて声を上げている。
ばれている中で近づくのは気恥ずかしさが拭えないが、
少しずつ近づいて行く。
アンドレ、ジャックは汗をかいている。
恐らく洗濯物を運ぶ係だったのだろう。
シャルル、アンリ、二コラは服が濡れている。洗濯の係だったようだ。
シスターはいつも通りの笑顔でこちらを見ている。
皆元気そうだ。
「……ただいま。」
「おかえり!」
「で、どうなの?学校は。」
食卓に売店で買ってきたお菓子を広げていると
シスターに質問される。
「まあ、ボチボチだよ。」
「僕知ってるよ!兄ちゃんセイエイなんでしょ!」
僕の代わりにお菓子をボリボリ食べているトーラスが答える。
こら、洗濯したばかりでしょうが。
「何の話だ?それ。」
「セイエイはセイエイだよ!皆知ってるよ!」
本当に何の話だ?それ。
そんな僕の表情を汲み取って、シスターが答える。
「あのね、村でも噂になっているの。太陽王の代わりに国を守る戦士の育成を始めたって。」
「…もうばれてるのか、他国にばれてるなら当然か。」
「それでここにも役人?みたいな人が何度か訪ねてきたの、リオがどんな人間だったかって。」
少し緊張が走る。
「何でまた。というか、応対してないよな?」
「もちろん!リオがとってもいい子だって、2時間ほど。」
思ったより平和だった。
「はあ、何というか、何でだろうな。」
「皆不安なのよ。太陽王が本格的な育成に踏み込んだって知ったら。」
「それは分からなくもないが、」
世界の平和を担っている本人が次世代の育成と聞くと
力が無くなってきていると思ってしまっても仕方はない。
「だから、リオがちゃんと守ってくれるって言っておいたから!」
…見ないうちにトーラスと同等の脳みそになってしまったらしい。
「……他国のスパイの可能性もあるし。今度からはちゃんと追い払ってくれよ…」
国内の役人だったとしても、弱みを握られているようで嫌な気がした。
「…流石に考えすぎか」
「あー!!、トーラス兄ちゃん!!食べ過ぎ!!」
そんなことより、今は目の前のお菓子争奪戦に終止符を打たなければならなかった。




