第34話 振り返り
あー、ヤバい、しんどい。
芝生の上で仰向けに倒れる。
…ユーリ先生との訓練は潰れるまでが基本になってしまうようだ。
顔を上げると、
交代でジーナがユーリ先生と訓練をしていた。
「防御もいいけど、魔力足りなくなっちゃうよー。」
ジーナは自身の多い魔力量で防御を構えていた。
防御が鬱陶しいのか、
ユーリ先生の小石が威力を増していく。
「もう!」
次第にジリ貧になり、ジーナは回避を選択する。
「いいね。そら、まだ行くよー。」
これはジーナも僕と同じ結果になりそうだな。
数分後、
ジーナは何も考えられないといった様相で、
こちらに近づいてくる。
「お疲れさん。」
「ハァ…、ハァ…。あんまりこっち見ないで。恥ずかしいから。」
まあ、今の姿はジーナの目指す姿とは程遠いか。
少し遠くに目を逸らすと、
ユーリ先生が近づいてくる姿が見えた。
汗一つ流してないその姿を見ると、
落胆を拭えない。
「一応、振り返りね。僕は遠距離の魔法が使えないから今回は小石で代用したわけだけど、」
ユーリ先生は解説に入る。
「リオ君、君は問題を解決しようとし過ぎている。解決しなくていい問題も意外とある。そのことを肝に銘じて置くように。」
「どういうことでしょうか。」
「そういうところだよ。平時はともかく、戦闘中に相手に話しかけられて、答えるやつがあるかい?」
…いや、訓練なんだから。
そう言いかけて、言葉が喉で止まった。
入学時の出来事が、脳裏をよぎる。
戦場。
当たり前だが、僕がこの力を使うときは戦いの場だけだ。
敵の問いに答えている暇は、ないのかもしれない。
「極端な話、殺すやつの顔も名前も聞く必要はないんだよ。」
「…すみません。」
どんな状況でも殺したくはないが、今回は僕の意識が悪かったようだ。
素直に謝ると、ユーリ先生は頷く。
「よし、次はジーナ君。君の魔力量があるなら最初にやることは防御ではなく、攻撃だよ。
攻撃すれば僕に石を投げさせないように振る舞うこともできたはずだ。」
「…そうですね。」
「それにせっかく鍛えたのに、今までと同じ戦い方はもったいなくないかい?もう少し発想を柔軟にね。」
「…ごめんなさい。」
ジーナも謝る。
「謝る必要は無い、リオ君もね。出来ないことを出来るようにするのが、僕の仕事だから。」
ユーリ先生は諭すように僕らに伝える。
その言葉は優しかったが、先ほどの指摘が強すぎて、
胸の奥まで届くことはなかった。




