第32話 器
それからは、座学はジーナから教わり、魔力操作は僕が教えることになった。
元々要領はいい方なので、
座学に関しては右肩上がりで成長し、特に問題無く授業についていけるようになった。
生徒が二人しかいないため先生も僕のレベルに合わせてくれただけ、ともいえるが。
そして、ジーナの魔力操作に関してだが…、
「何よこれ!凄い難しいじゃない!」
…あまり芳しくない状況だった。
「魔力を圧縮するんだよ。手で握りこむイメージかな。」
「やってるって!でもどこからか漏れてるの!」
〈コウキュウ〉を発動させているが、中々小さくならない。
いや、小さくは出来るのだが、密度が高くならないのだ。
「…自分で言うのもなんだけど、こんなにも出来ないって思ったの初めて。」
「少しは僕を尊敬してくれたかな?なんちて。」
何でも出来る王族様に出来ない事が自分には出来ている。
少しくらい愉悦に浸っても、罰は当たるまい。
「…ムカつくけど、否定できない。」
「僕の方でも、もう少し簡単な方法が無いか考えてみるよ。」
「…ありがとう。はぁ、何か、ここに来てから出来ない事ばかりだわ。」
「そうでもないさ。実際僕も座学はお手上げだったし。」
「リオは知らないだけじゃない。私は知ってても出来ないのよ…。」
自分のことを天才だと言っていただけに、
その落ち込みようは思ったより深かった。
いじけた表情が、孤児院の弟たちと重なる。
ここは少しフォローをしておくか。
「ジーナ。僕が仮に太陽王と同じ力を持っていても、世界を平和には出来ないと思っている。」
「…何でよ。」
「器の問題だ。僕が何かを考える時、大体孤児院のことを思い出す。それ以外のことはあんまりよく分からないんだ。でも多分、王は一番に国のことを考えるんだと思う。」
そうでなければ、ここまで平和を維持できないだろう。
王立魔法学校しかり、〈紙上の戦争〉しかり、
表に血を流させない形で国を守ってきた。
太陽王は独裁者ではあるが、暴君ではない。
それはこの国に生きている全ての民が理解している。
「だから、ジーナ。君じゃなきゃいけないんだよ。それに今はまだできないだけさ。」
「…ありがとう。」
「まあでも、太陽王になった暁にはそれなりに優遇していただけますと幸いでございます。」
「ハイハイ。」
いつもの調子に戻ったようだった。
太陽王になれなかったとしても、この縁は大事にしておきたい。
そう思わせるだけの器が、ジーナにはあった。




