第3話 始まりの部屋
「こちらが部屋になります。」
受付で入校を済ませ、寮内を案内される。
「では荷支度を済ませて頂いたら、15時に第三教室へお願いします。」
「あ、はい。ご丁寧にどうも。」
香水の匂いをさせたお姉さんが立ち去る。
荷物を脇に置き、ベッドに寝転がる。
「とうとう来てしまったか。」
部屋の中で1人、そんな小言をぼやいてしまう。
特権の為だとそれっぽいことは言っていたものの、この学校にはそれなりに憧れていた。
何を学ぶにしろ、情報の多くはこういう所に集まるものだ。
静寂の中、目をつぶり、少し思考を巡らせる。
情報が集まると言っても、手当たり次第に掴めば、かえって見失う。
先輩の知恵を借りたい所だが、僕が入った学科は新設された学科のため、そもそも先輩がいない。
さらに言えば、今期の入学者の振る舞い次第で、
学科そのものの認知や立場が軽々に決まってしまうだろう。
貴族や王族への立ち振る舞いも不明。
そして僕の場合、自分より優れた人間に会ったことが無く、
気づけば、人に何かを教わった記憶がほとんどない。
どんな顔をすれば良いのだろうか。気に入られなければ、何も教えてもらえないかもしれない。
「……こりゃまいったな。」
うだうだ考えていても仕方がない。
悪循環に入る前に体を起こす。
荷を解き、整理をする。
孤児院では自分のものが他のものと混ざりやすいため、一般的な家庭より大袈裟に整える。
「それでもトーラスは適当だったなぁ。」
どうしても彼らの顔が浮かんでしまうのが嬉しくもあるが、
その世界しか知らない自分に対して悲しくもなる。
僕はまだ、何も知らない。




