第29話 戦い方
「え、演習ですか?戦い方とか習ってませんが。」
実際入学してから50m走しか行っていなかった。
格闘訓練を行うにしてもぶっつけ本番は危ないのではないのだろうか。
「入学初日と一緒だよ。何してもOK。一旦それで行こう。決めるのはそれからだ。」
ユーリ先生は準備運動をしながら答える。
「…勝てるわけなくないですか?」
走れるようになっただけで魔力は落ちている。
どうやって勝てばよいのか検討もつかなかった。
「勝つ必要はないさ、見るのが目的だから。いつでもいいよー。」
ジーナと顔を見合わせる。
まあ、二人しかいない。僕から行こう。
先生の前に立つ。
「それじゃ、お願いします。」
「ああ、どんとこい。」
戦闘が始まった。
〈コウキュウ〉。
光の玉を撃ち出す、基本的な魔法。
僕の放った魔法に対して、先生は相変わらず避け続けた。
「はあ、やっぱり当たらないか…。」
「そうだね。じゃあどうする?」
言い切られる前に飛び出した。
どうせ距離を取っても、投石で終わる。
距離を詰めつつ、先ほどより速く魔法を放つ。
「いいね。戦いって感じだ。」
先生が〈レツ〉を操れるなら、肉体の速度そのものが違う。
近づき過ぎず、かつ投石の動きに入れない絶妙な距離を探る。
少なくなった魔力出力と、先生のいつまでも余裕のある態度に、胸の奥がざらついた。
「集中してください。殺しますよ。」
それが魔法にも現れてしまい。
〈コウキュウ〉の収束が鋭くなる。
「はは、ゴメンゴメン。」
にこやかな笑顔を返される。
その間も一つも当たらない。
近づき連続で放ってみるも、効率的に躱されているのがわかる。
「くそっ、これでどうだ!」
一気に距離を詰め、魔法の範囲を広げる。
さしずめ自爆ともいえる所業をした。
先生は……。
距離をとって回避されたようだ。
「…やっぱり、弾かないんですね。何でですか?」
先ほどの自爆は魔力が収束していないため、
通常の魔法使いなら大したダメージにはならない。
その上で、多少強引にでも回避を選択している。
赤子程度の魔力量。
初日の演習。
そして――今の戦い。
「さあ、何ででしょう。」
恐らく――いや、そうであってほしい。
ユーリ先生は魔力抗体が、極端に少ない。
勝つ方法があるとすればここだろう。
「いいですよ、答えなくて。敵は教えてくれない。でしょ?」
「…!いいね。戦士っぽくなってきた。」
今までなら息切れしている運動量だが、
訓練のおかげでまだ戦える。
放った魔法も必要最小限で抑えられている。
仕掛けた罠にまだ気が付いていないようだし。
教師としての余裕があるうちに、終わらせる。




