第28話 準備
「リオ君、ジーナさん。少しいいかな?」
午前訓練の開始前。
準備をしていたところで、ユーリ先生に呼び止められた。
「何ですか?」
「これから約一ヶ月後に親善試合を行います。」
「……え?」
「相手はミトレス国、士官学校の生徒だ。」
ユーリ先生が続けるが、情報が入ってこない。
「えーと、どうしてでしょうか。私たちはまだ50m走くらいしか訓練はしてないのですが。」
「君たちの情報が漏れていた。」
先生は声色を低くして答える。
「かの国は太陽王亡き後の政治を考えている。その上で親善試合を申し込んだ。これでわかるかい?」
「……勝敗によって政治に影響を及ぼすって事ですか。」
「ああ、あまり言いたくないが、もう戦争は始まっている。外交戦という形で、ね」
「……。」
スケールの大きい話に戸惑いを隠せなかった。
いきなり国を代表して戦ってくれと言われているようなものだ。
いつか戦うかもしれないとは思っていたが、
そのいつかが唐突に訪れた。
「情報が漏れていたことに関してはこちら側の不備だ。申し訳ない。」
ユーリ先生が頭を下げる。
「ちょっ、やめてください。そういうのはいいですから。」
いきなりの謝罪にこちらも慌てて止めに入る。
「決まってしまったならいいです。そんなことより、これからどうするんですか?」
「…そうだね、ありがとう。」
少し落ち込んだ様子のユーリ先生だったが、
ここで意気消沈してもらっても困る。
「少し早いが、演習をしよう。」
あまり実感したくなかったが、
僕らはもう、この国の代表の一人として、
逃げ場のない場所に立たされてしまったようだった。




