第25話 目覚めの朝
「あら、おはよう。って何してるの…。」
「ツクリタテ」の店内で、声をかけられて振り向くと、
ジーナがそこにはいた。
「……おはようさん。ジーナこそ早いな、いつもこの時間なのか?」
「ええ、ここで少し勉強しているの。人もいないし丁度いいのよ。」
相変わらずの優等生っぷりだった。
「リオはどうして?二つも頼んでるじゃない。」
「昨日飯を食べ損ねたんだよ。訓練とは別で死にかけた。」
あの後、寝てしまったせいで、晩飯にありつけず、
ひもじい思いをしながら夜を明かした。
「確かに、よく寝てたわね。ご愁傷様。」
向かいの席に座るジーナ。
「どのくらい残っていると思う?」
「……大部分はいないんじゃないかな。」
人生で初めての痛みへの恐怖。
体が思うように動かなくなる恐怖。
呼吸困難という、死へ一歩ずつ近づく恐怖。
それらを突きつけてきたユーリ先生への恐怖。
あの訓練で、大小様々な形で僕らを追い詰めてきた。
温室育ちの僕らには、少し重すぎた。
「やっぱりそうよね。まあ、切磋琢磨なんて期待はしてなかったけれど」
「…泡吹いて倒れてたくせに。」
「何か?」
「何でもないです。」
生きている実感をここでも得られてしまった。
怖い怖い。
「それにしても、どうして私は気絶したのかしら。なんだけどあなたより魔力量は多いし、その分魔力抗体も多いはずよね。」
「…多いから、じゃないかな。」
「…というと?」
「ユーリ先生はあの装置を肉体から漏れ出る魔力で動くって言ってたよな。」
「ええ、」
「魔力量が多いと、その分漏れ出る魔力も多い。そのせいでしっぺ返しを食らったんだと思う。」
「なるほど、だからあなたは大丈夫だったのね。」
「大丈夫ってレベルじゃなかったが……。」
まだ痛む肉体をさすりながら答える。
食べながらジーナを改めて見ていた。
気絶はしていたが、それなりに走ってもいた。
僕と同じく筋肉痛に襲われているだろうが、
それでも姿勢が良く、凛としている。
先ほどから何度か紅茶を口にしているが、
少しも音が立っていない。
不快感を与える気配もなく。
所作が洗練されているのがわかる。
…こうしてみると、やはり王女様だな。
「…なによ、こっち見て。」
絵画のようについ見入ってしまい、怪訝な表情で返された。
「いや、すまん。何でもない。」
いつもよりよく見える景色に、戸惑いを隠せなかったが、
不自然と嫌な感じはしなかった。




