第23話 伝える
保険室へ向かっていると、人影とすれ違った。
恐らくユーリ先生だろうか。
引き留める間もなく、行ってしまった。
「速すぎるだろ、まったく。」
まあ、他の生徒の確認に行ったのだろう。
ジーナが心配とはいったが、僕自身無事と言っていいのかわからない。
保険室へ足を進めていたところ、
「やあ!元気にしているようだね!」
校長がいた。
…よし、無視しよう。
「おいおい、無視は酷いな。校長だよ?」
流石に呼び止められたか、面倒くさい。
「僕は元気じゃないので、他の人に話しかけているのかと思いまして。」
「何言ってるんだ。ここには君以外いないじゃないか。ハハハッ」
なんで今日に限って元気なんだ。
「……何か用ですか?」
「いやなに、なんかスッキリした表情だったから。いいことあったのかなって。」
…図星を指されて固まってしまった。
「ん?どうしたの?」
校長の言葉に慌てて返事をする。
「あ、いえ。…凄いですね。わかるんですか?」
「まあね。なぜなら校長だから!」
うざったいがやっぱり校長らしい。
「………先ほど死にかけました。」
「ああ、みたいだね。」
「走って、走って、魔力で引きちぎられそうになって、また走って。」
「そりゃ大変だね。」
「……全部終わった時に、生きてる。って、思いました。」
軽口ばかりの校長だったが、押し黙った。
「何というか、今まで俯瞰しすぎていたような気がしました。自分を後ろから見ていたような。」
自分でも何を言っているかよくわからなかったが、
話を続ける。
「でもさっきは違った。僕は間違いなく、生きていました。それが…、よくわかりました。」
言った後、少し後悔していた。
自分でも何を言っているのかわからないのに、
絶対茶化される。
でも、何故か校長には言っておきたいと思ってしまった。
そうしなければならない気がした。
「…凄いな君は。」
何か言ったようだが、よく聞き取れなかった。
「え、なんですか?」
「いや、何でもない。どうやら未来は明るいようだね!期待しているよ。リオ・フェルム君。」
そう言って校長は背を向け、歩いて行った。
来た時よりも足取りが軽い、そんな気がした。




