第21話 訓練
「ハァ…ハァ…死ぬ…。やばい…ハァ…ハァ…死ぬぅ…。」
今までの死に目が、どれだけ温かったか思い知らされる。
隣を見ると、ジーナは青い顔で泡を吹いて倒れている。
「恨むぞ…、ユーリ先生…」
時は、訓練開始に遡る。
生徒たちはすでに校庭に集められていた。
「おはよう。昨日はごめんね。今日もよろしく。」
先日の謝罪をしながら、ユーリ先生が登場する。
今回は事前に校庭での訓練と聞いていたため、混乱もなく全員が集まっていた。
「リオ、ちょっと表情が気持ち悪いわよ。」
「うるさい。」
どうやら僕はミレーヌ先生との話から、
つい兄弟を見るかのような優しい目で見てしまっていたようだ。
「さて、今日の訓練、というかしばらくの間の訓練は」
内容が発表されるので表情を引き締めて聞く体制になる。
「50m走だ。」
「戦場で最も重要なことは、生き残ることだ。この距離を最も早く走れたものが生き残れる。」
校庭に線を引きながら、ユーリ先生が話を続ける。
「というわけで、3ヶ月以内にこの距離を5秒以内で走るんだ。」
……馬鹿なのだろうか。
「えーと、無理だと思います。」
ジーナが進言する。
全くもって同意である。
「え、そうなの?魔力使ってもいいんだけど。」
ユーリ先生が意外そうな表情を浮かべる。
「……浮遊魔法や運動補助の魔法は複雑で、私でも出来ません。」
「そうなのか…、皆の魔法って意外と不便なんだな。」
もはや宇宙人との交流会のような感じに思えてきた。
「じゃあ、8秒以内にしようか、これなら魔力無しでも行けるだろう。」
それでもなお高い目標にガックリするが、仕方がない。
準備運動を何となくしていた僕たちに対して、ユーリ先生が続ける。
「それじゃ、始めるんだけど。ただやっても面白くないから、昨日作ったこの装置を使います。」
そう言って何やら小さな装置を取り出す。
「これは肉体から漏れる魔力で動く、その名も『ハシルンデス』だ!」
ユーリ先生はその『ハシルンデス』を皆に着け、
親機のような大きめの装置を取り出し、整備しながら続ける。
「走っている途中で速度が遅くなったら魔力が流れて痛いから、注意してね。」
「え。」
「それと休憩も1分以上取ったら魔力が流れるから、とりあえず合計30分ね、じゃあ、始め!」
そうして今に至る。
少し速度を落とすだけで、魔力が逆流し、筋肉の内側を針で引き裂かれるような痛みが走った。
1分経ったかなんてわからないため、休憩中も気を抜けず
何となく走り出してしまうと、また魔力が逆流する。
周りから聞こえる阿鼻叫喚の悲鳴に耳をえぐられながら、
ただ走っていた。
ユーリ先生を見ると、
親機の様子が気になるようで、こちらに気が付いていない。
とりあえず休憩中の3分の間で、ジーナを助けないと。
「ユーリ先生!ジーナが負傷しました!」
その言葉にユーリ先生は驚いて振り向き、
文字通り一足で跳んできた。
「なるほど、すまない。少し負荷が高かったようだ。」
少し反省をしている様子だった。
「とりあえず医務室へ、僕が運ぼう。」
そう言って地面を蹴った次の瞬間には姿が見えなくなってしまった。
まさかの速度で啞然としていたが、
そこに強烈な痛みが走る。
……先生はスイッチを切り忘れていたようだ。




