第20話 理解
ミレーヌ先生は自然学の教師なので、自然学教室にいるだろう。
ということで自然学教室の扉に到着し、ノックをする。
「はーい、どうぞー。」
優しい声で入室を促されたので、扉を開けて入室する。
妙齢の女性、ミレーヌ先生がいた。
「あら、やっぱりあなたたちね。入って入って」
「はい、失礼します。」
部屋に入ると、様々な生物の標本や資料の山がミレーヌ先生と共にお出迎えをしてくれた。
「ごめんなさいね。少し手狭で。」
「いえいえ、それにしても凄いですね。この標本の数。」
「ありがとう。ここは国内一、標本の数があってね。研究生みんなで作成しているの。もちろん量だけじゃなくて、質も一級品よ。」
壁一面に展示されている標本に目を奪われる。
大小様々な魔生物の標本が展示されていた。
一つ一つを見てもまるで生きているように感じる。
この量にもかかわらず、全て丁寧に保管されているのが伝わってきた。
「でも、お連れのお嬢さんはお気に召さない様子だけど。」
言われて振り返ると、肩を震わせているジーナがいた。
「…ゴメン。ワタシ。ココ。ムリ。」
……カタコトで謝りながら外に出ていった。意外に繊細らしい。
「すみません。外でお願い出来ますか?ここの標本は改めて拝見させてください。」
「あら、ありがとう。じゃあ少し外に出ましょう。」
ミレーヌ先生とジーナの元へ向かう。
外に出ると、少し落ち着いた様子のジーナが口を開く。
「すみません。どうしても嫌悪感が拭えなくて。」
「いいのよ。嫌悪感があるってことは、それだけ忠実に再現出来ているってことだもの。むしろ光栄だわ。」
ミレーヌ先生は、研究者冥利に尽きるという具合だった。
「さて、ユーリ先生についてでしたね。教えてあげたい所なんだけど…。」
少し言い淀んでいた、どうしたのだろうか。
「あの後、校長に口止めされてしまって、詳しく言えないの。ごめんなさいね。」
「え。」
校長が…、口止め…。
そういうことを指示するような人には見えなかった。
何というか、少し裏切られた気分だった。
「あのね、誤解されちゃ嫌だから、これだけは伝えさせて。隠したいわけじゃないの。ユーリ先生が話すべきだって。」
…そういうことか、と、少し安堵する。
「まあ、本人がいない状況で話を聞くのは良くない…ですね。」
「理解してくれて嬉しいわ。ユーリ先生のこと。お願いね。」
そう言ってミレーヌ先生はまた、自然学教室に入っていった。
生徒に先生をお願いするとは妙な状況だが、これ以上は何も聞き出せそうにない。
「どうする?ユーリ先生を探すか?」
「…どこにいるかわからないわ。これ以上はまた明日ね。」
そういえばそうだった。
気になることは多いが、そのうち聞き出せるか。
「でも意外と、ユーリ先生は愛されているみたいだな。」
「え?」
ジーナは理解できないといった様子だった。
「学生時代は問題行動を起こした上に、同期全員行方不明。教師になった後でも、他の教師は僕たちの授業という仕事を増やされている。それでも、皆協力している。」
ジーナも言われてみれば、といった表情だ。
「何かあるんだろうけど。少なくとも嫌な感じじゃない。かばっている感じがする。」
「…そうね。焦らなくても、そのうち聞き出せるか。」
ジーナも同じ結論だったようで、
ひとまず僕らの胸の内に納めることにした。
いつか、話してくれるかもしれない未来を信じて。




