第16話 才覚
「そんな…、信じられない…。」
「そうだな。だが事実らしい。」
ジルから教えてもらった内容をジーナに伝えた。
王族で由緒正しい教育を受けてきた彼女にとって、
ユーリ先生の話の驚きは僕以上みたいだった。
「…どうすれば勝てるのかしら。」
「…勝ちたいのか?」
正直なところ、勝とうとも思えないほどの強さだった。
それでもジーナはまだ勝とうとしているようだった。
「当たり前じゃない。負けたままで終われないわ。」
「…すごいな。ジーナは。」
心からの言葉だった。
「ありがとう。でも勝つにはリオの力は必要みたいね。」
「え、なんで?」
「なんでって、ユーリ先生の魔力に気が付いたのリオだけじゃない。」
言われてみればそうだった。
「ジル兄の話を聞く限り、細かい魔力操作がカギみたいだし。リオの得意分野なんでしょ?」
「ちょっと待て、何で知ってるんだ。」
「ジル兄に聞いた。初めて会った時から魔力の揺らぎが少なくて、ユーリ先生と似たタイプだって。恐らくリオも得意分野だろうってさ。」
あの先生と似たタイプと言われても、差は天と地ほどある。
一緒にされても困るのだが。
「だからこれからもよろしくね。私のために。」
「横暴だ…。」
そんな会話の中、ふと気になったことを聞いてみる。
「…というか、ジーナも残るのか?」
「当たり前じゃない。じゃないとユーリ先生と戦えないわ。」
「いや、そうじゃなくて、魔力が無くなるんじゃ。」
僕のような庶民と違い、実践魔法学科をやめても問題ないと思うのだが。
何より魔力が無くなれば、王権貴族といえども、
異端の目で見られるのではないだろうか。
そうなるとデメリットでしかないが、ジーナは続ける気らしい。
「私、魔力が無くてもいいし。」
「え。」
意外な言葉だった。
演習でジーナの魔法は見ていた。
王族で由緒正しい教育を受けたからといって出来る魔法のレベルを超えていた。
かなりの労力を払っていると断言出来るほどにジーナの魔法は洗練されていた。
「うーん、どういえば良いのかしら。」
説明に少し悩んでいる様子だった。
「私、天才なの。」
「悩んだ末の答えかよ。」
「いいから、一旦聞いて。」
少し真剣な表情をしていたので、黙り込む。
「生まれつき何でも出来たわ。魔法はもちろん、座学、芸術、運動もバレエは少し出来る。皆褒めてくれたわ。すごいって」
王族らしい技術の数々だった。
当たり前だが、僕程度の人間が話をしていい人ではないらしい。
「でもね、それは太陽王がいるから成り立っているの。当たり前だけど。」
周知の事実、平和は太陽王が担っている。
全てはその上で成り立っていた。
「だから次の太陽王は私がやるの。私、天才だから。」
「へ?」
突然の告白に驚きを隠せなかった。
「いやいや、無理じゃないか?」
「無理じゃないわ。私、天才だから。」
「ていうか、魔力が無くなれば元も子もないんじゃ。」
「強ければ良いのよ。普通に鍛えたからって太陽王にはなれない。」
ジーナは続ける。
「それに校長がユーリ先生を選んだのよ。ただ珍しいからという理由で選んだりしないわ。どんな形であれ必ず強くなれると思うの。だからこそ実践魔法学科に入ったんだし。」
何という覚悟だ。
これが王族というものなのか。
「それに失敗したとしても、数ある才能の内、一つが無くなるだけよ。」
何も問題が無いと言いたげな態度でジーナは答える。
「……凄いな、ジーナは。」
「そう?ありがとう。」
「ああ、ジーナは凄い。」
言葉にすると安っぽくなる気がして、それでも口にせずにはいられなかった。
繰り返すように呟く。
そうせざるを得ないほど、衝撃的だった。
「ちょっと、そんなにやめてよ。」
流石に照れ臭かったのか。ジーナは止めにかかってきた。
どんな人間も、目の前の事に精一杯だ。
だからこそ余裕を持った王族が必要なのだろう。
どうやらこの国の王族は正常に機能しているようだ。




