第10話 魔力と力
「ふざけないでください!」
熾烈な演習のなか、ジーナの怒号が飛ぶ。
「真面目にやってるんだけどな。」
ユーリ先生は至って冷静に対処をしている。
確かに戦いというには余りにも一方的だ。
先生が劣勢という形で。
「さっきから避けてばかりじゃないですか!戦う気があるんですか!」
言いたくなる気持ちもわかる。
実際、ジーナの魔法は見事なものだ。
王族に伝わる洗練された火の魔法を使い、当たれば確実にダメージを負う。
そんな魔法に対して、ユーリ先生は魔力を一切使わずに、走って逃げ回っているだけだった。
ジーナの渾身の連撃をかいくぐり、膠着状態に入る。
「戦っているさ、ジーナ君。」
ユーリ先生は続ける。
「逆に聞こうか、君も当てる気があるのかな?」
「はぁ……はぁ……っ、どういう……ことですか。」
流石に魔法を使いすぎたのか、呼吸が乱れている。
「君の魔法は素晴らしい。威力も十分。だが、走り回る私に対して、一度も当てることができていない。それは魔法が使えないのと同義ではないかな?」
極端な理屈だな。
別に凄いんだからいいじゃないか。演習なんだし。
「何故同じ事を繰り返すばかりなのかい?当たらないなら近づいて打つなりすれば良いのに。さらに息も切らしてしまっている。」
ジーナは呼吸を整えてから答える。
「先生の武器が、身体能力なら、近づくのは得策じゃないです。遠くからなら一方的に攻撃できます。」
「決定打を与えられないなら、同じことだ。」
少しの沈黙。
魔力を使い過ぎ、息を切らしていたジーナに対して、逃げ回っていた先生は何一つ消耗していない。
先生の優勢は誰の目にも明らかだった。
「それに君は勘違いをしている。」
ユーリ先生は答えながら、おもむろに校庭に落ちている石を拾う。
一体何を
「僕はこの距離でも決定打を与えられる。」
その仕草を見た途端、戦慄が走る。
「やばい!ジーナ!避けろ!」
ユーリ先生は振りかぶり、石を投げる。
その石はジーナの僅か左を掠めて、通過していった。
当たれば死ぬ。そう思わせるだけの威力があった。
ジーナもそれを理解したようで、へたり込んでしまう。
「ここはね。戦場なんだよ。」
そういう先生の言葉は、どこか悲しそうだった。




