不良品らしく響きの悪い音
「ふぅ。やれやれだぜ」
俺は目に溜まった涙をぐいっと拭い、手に隠し持っていた目薬をポイと宙に放った。そしてそれをパシリと空中でキャッチする。
おそらく、ここまでやれば二度と俺が正社員に誘われることはないだろう。いくら平田課長とはいえ、泣いて嫌がる俺を正社員にさせることはしないはずだ。
ふと顔を上げてみれば、目の前に広がるのはのどかな公園。親に引き連れられた子供が駆け回り、くたびれた感じのサラリーマンがベンチに座っている。
そもそもである。俺を正社員なんぞにしてみろ。いったい自分でもなにをしでかすか分からん。会社は会社で責任のある仕事を任せるだろうし、俺はそれをとんでもねぇミスで返す未来しか見えない。なれば俺は非正規に甘んじるのが最善であり、かつ会社にとっても最良の選択であるはずだ。あの会社で働く連中のためにも俺は正社員になるわけにはいかないのである。
「よし。このまま早退してゲームでもするか」
俺は手に持っていた目薬を再び放り投げ、パシッとキャッチして懐にしまいこんだ。そしてポケットに手を突っ込んで歩き出そうとしたところ、
「ん?」
と硬い感触があった。不思議に思い取り出してみれば、それは先ほど平田課長から受け取った不良品だった。
「ん、いらね」
ガコンとそこら辺にあったゴミ箱に叩き込めば、不良品らしく響きの悪い音がした。




