楽しそうだな
それから俺とアリスは詳しい依頼内容を聞き、フーゴと共に応接室を後にした。冒険者ギルドの大広間にて、俺たちとフーゴは向かい合う。
「それでは、依頼書は後日駒使いの者に届けさせます。それ以外で、なにかご質問は?」
「いや、特にないよ。アリスは?」
いえ、とアリスは首を振った。
「わかりました。それでは、姫。ユースキー殿。なにとぞ、よろしくお願いいたします」
と、フーゴが頭を下げてきたので、俺とアリスはそれぞれ返礼してからその場を立ち去ろうとした。
「ああ、ところでユースキー殿。少し、よろしいですか?」
フーゴに呼びかけられ、歩き出していた足が止まる。俺はアリスに先に行くように伝えた後、フーゴの元まで帰ってくる。
「なんか用か?」
「いえ、つかぬことをお伺いしますが……姫の警護には王の盾が付いておいでで?」
はぁ、と首を傾げてしまう。フーゴにはその辺の話はしていないはずだが。
「その通りだけど……よくわかったな」
「ええ。私もそれなりの役職には付いておりますので、そういう話が上がってきます。姫をお守りしていたアルベリク殿の隊が、ここ数週間姿を現さないとか」
どうにも、そういう経緯もあってフーゴは知っていたらしい。
「しかし、安心しました。これで姫は心置きなくお過ごしいただけるというもの。それに、ユースキー殿という心強い味方がいればなおのことです」
言って、フーゴは小さく微笑みを浮かべた。その表情は、やはり妹を見守る兄貴役のように見えた。
「楽しそうだな」
「そう見えますか」
と、フーゴは再び笑った。
「と言っても、大した理由ではありません。私も大した自由を与えられずに育った身ですので、姫が自由を楽しんでおられるのが嬉しい。それだけですよ」
言いながらフーゴは、立ち去っていくアリスに視線を向けた。その視線には、どこかアリスのことを羨んでいるようにも思えた。
「ま、アリスは楽しくやってるよ。てか、王女にしくにはもったいないくらいの冒険者だ」
「ははっ。でしょうねぇ。姫の魔法は、本当にお強いですから。……では、ユースキー殿」
と、フーゴは俺に向き直った。
「姫のこと、なによぞよろしくお願いいたします」
「ああ、善処する」
そう言って、俺はフーゴの元を後にした。




