始末書
始末書『Y–25 A2の製造ラインにて不良品を出してしまった経緯について』
差出人 製造部 品質管理責任者 山田祐介
本日、49度目の不良品を製造してしまったことをここに深くお詫び申し上げます。
さて、本来であれば不良品が出てしまった経緯や、そこに至るまでの過程、そして今後の改善策を記述するべきではありますでしょうが、ここは手っ取り早く「なるべくしてなった」と、省かせていただきます。
これは決して私が始末書を書くのが面倒だからとか、同じこと何回も書かせんじゃねーよとか、これだけ不良品が出るってことは管理体制に問題があんだぞいい加減気付けボケ、などと言いたいわけではなく、単純にこれを読まれる部長課長社長その他もろもろの皆様の心理的ストレスと、昨今なにかと話題にあがるSDGSによる紙資源削を深く考慮した結果であり、決して私がこのクソみてぇな始末書を長々と書きたくない、というわけではないことを釈明させていただきます。
さて、それでも私に「始末書を書けボケ」などと仰る方もいるでしょうが、思い出していただきたい。私は『非正規』です。非正規雇用で、独身。34歳にして実家に住み、親の脛をかじって生きる『こども部屋おじさん』。そんな私に『品質管理』などという責任ある仕事を与えれば、いったいどうなるかは明々白々。
上司からの指示を忘れ、言われてもいない作業をこなし、いらない仕事を作る増やす当たり前。ミスを犯し、それを隠し、後で大問題になったことは数知れず。果てはパートのお局供から「仕事の邪魔すんな!」と罵倒され、なれば仕事の邪魔にならぬように作業所の隅でボーッとしていれば上司がすっ飛んできて「ボケっとすんなボケ!」と仕事を与えてくる始末。いったい、どうしろというのでしょうか?
ですが、貴方側は私を怒ったり、ましてや叱りつけたりすることはできません。なぜなら私は『こども部屋おじさん』。そんな私に正社員が務めるはずの仕事を与え、給料も上げずに責任を負わせ、あまつえ正社員に昇進させることなくこき使う非道っぷり。故に、私がこの始末書を書かされているのは不当であると表明せざるおえません。
それでは最後に、ここまで読まれた方の中には私をクビにすることを検討されている方もいらっしゃるでしょう。ですが、これだけは覚えておいて頂きたい。私をクビにすれば、間違いなく私と同じような人間がやってきます。なぜなら私がこの会社にいるという事実が、この会社のレベルを表していからです。---同じ穴のムジナ。私に怒りを抱いているあなた方ですら、私と同じなのです。あなた方の生きる領域は、私のような『こども部屋おじさん』が生きる領域と同じなのです。ですからもし、私をクビにするの気なら考え直したほうが懸命かと思われます。一から教育し直さないといけない、私のような人間を雇いたくないのであれば、ね。
それでは皆様、また近いうちにお会いしましょう。次の始末書で。




