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たぶん100人くらいいた

 異世界に転生した後、俺は父と母の愛情を受けてすくすくと育った。

 赤子の頃の記憶があるのは不思議なものではあるが、それはそれは幸せな赤子時代だったように記憶している。

 そして迎えた3歳の誕生日。なんと俺は魔法を使ったのだ。パチンと水を弾く程度の魔法だったが、父と母はたいそう驚いていた。というのも、この世界において魔法を使えるのは早くても5歳くらいからであり、3歳で魔法の片鱗を見せれば天才やら神童と呼ばれるらしかった。なので両親は俺の将来に大きな期待を寄せ、あれやこれやと手を尽くしてくれた。

 例えば元冒険者であり魔法使いであった母は「教えるなら、教える専門家のほうがいい」と言ってわざわざ魔法の家庭教師を雇ってくれたし、これまた現役冒険家の父は「俺が剣を教えよう」と言って俺に剣を教えてくれた。するとみるみるうちに魔法と剣の腕は上達し、さらにはその噂を聞きつけた魔法大学やら跡取りがいない貴族やら、果ては名高い資産家やらが俺を欲しがった。「将来は特待生として」「成人したら娘と結婚を」「将来冒険家になるなら支援しよう」という約束をしてくれた。そのことに両親は大いに喜び、俺も誇らしく思っていた。そして将来的には、


「異世転生したら俺ツエーで女だらけのハーレムパーティー。でも勇者に役に立たないからと追放されてスローライフを送っていたら勇者に戻ってきてくれと頼まれけど俺の必用性に気がついたときにはもう遅い。あとついでに悪役令嬢、始めました」


 みたいな人生を送ると思っていた。とても楽しみだった。だが思えば、そのあたりが人生のピークだったように思う。

 7歳になった頃、魔法の上達にかげりが見えた。それでも母親は「いままでの疲れが出たのね」と俺を励まし、魔法使いの家庭教師は「いままでが早すぎただけですよ」と俺をフォローしてくれた。なので俺もそうなのだろうと高を括っていたのだが、年を重ねるにつれだんだん魔法の上達スピードが落ち、同年代の子に追いつき追い越し追い越され、しまいには魔法の上達が逆行するという摩訶不思議な現象を体験した。

 そして迎えた9歳の誕生日。俺の誕生日会、兼、家庭教師のお別れ会が盛大に執り行われ、魔法使いは東の方に去っていった。ちなみに魔法使いが最後に残した「私は6年間を無駄にしました」とういう言葉はそれ以来俺のトラウマになっている。

 しかしそこで希望を捨てたわけではない。俺には剣があった。

 事実、現役冒険家であり一流の剣の腕を持つ父からも「筋がいい」と褒められており、剣の才能は本物であると思われた。

 ところが才能というものは厄介である。なまじなんでも出来てしまうため、己は特別な人間だと思い込んでしまうのである。他人ができないことを簡単にできるという事実は驕りをもたらし、他者へのリスペクトを完全に失わせるのだ。

 例えば模擬試合で相手を完膚なきまでに叩き潰し「よっわ!」などと煽り倒し、俺の胸を借りるつもりで挑んできた剣客を「田舎に帰れイモ侍!」と叩き伏せ、俺に師事を仰いできた貴族のお嬢様には「ちんぽちんぽ!」みたいなセクハラを繰り返し、それ以外にも多くの人の尊厳を踏みにじり続けた。

 そうして迎えた12歳の誕生日。どこぞの貴族が俺の誕生日パーティーを開いてくれるというので行ってみれば、そこには木刀を持った人々が待ち構えていた。たぶん100人くらいた。

 そこからのことは怖すぎて覚えていない。気がついたときには全裸の状態でゴブリンの巣穴の前に転がされていた。いったい自分の身に何が起きたのか気になるところではあったが、己の尊厳のためになにも追求しないことにした。

 そういう経緯もあって俺は剣を見るのも嫌になり、ついには剣の修行もやめた。そんな俺に見切りをつけたのか、父は俺が14歳になる頃に冒険者として旅立ってしまい、「俺、お前と冒険に出るの、夢だったんだけどなぁ……」という別れ際に放った言葉もまた、俺のトラウマになっている。

 そうして出来上がったのは剣も魔法も使えず、かといって幼少期の頃より冒険者になるための勉強しかしてこなかったなんちゃって冒険者、俺である。そのため、いざ就職しようにも何の技能も持たぬ人間が就ける職などたかが知れており、お声がかかる仕事は汚い、きつい、危険に付け加え、苦しい、苦しい、苦しいという地獄のような労働環境ばかりであった。

 しかしそれでも俺は諦めなかった。諦めるわけにはいかなかった。この世界において「もう大人だね」と言われる15歳を迎え、「そろそろ結婚を」と言われ始める18歳を過ぎ、「そろそろ子供がいても」と言われる20歳を過ぎても実家暮らしであったが希望は捨てなかった。そして22歳を迎え、23歳を通り越し、この世界において「おじさん」と呼ばれ始める年齢(24歳)に達したとき、ついに俺は……


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