表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/141

第87話 ベイルフじわりと圧がかかる

リールーは盆地のアンデッドが消滅した瞬間、手首に付けているバングルを凝視した。

そこに()め込まれている、五つの宝石は無傷だ。

輝きは失われていない。


「ふう……ふう……あのでっかいスケルトン、アイツほどじゃ無いってわけね。

ふふふ……」


そこへサンフィルドが小声で突っ込む。


「そんなもんが判断基準になるかよっ。

もう転移はやばいっ。リールー!」


「分かってるってっ。魔力足りなくなったら寄こしなさいよっ」


さすがにリールーも危機感が戻ってきたようだ。

名を呼ばれただけで、自分の成すことを始める。

リールーは片っ端から魔法をかけた。


最適強化(オーブリインフォース)

持続時間増大(トルクリース)

効果範囲増大(レネゾブクリース)


消音(サイントールス)

不可視(インフィジル)

暗幕効果(ダークハイド)

三重効果(トリムフェレクト)!」

 

一気に「潜伏系」の魔法をかけたリールーが呼吸を整える。


「ふう……ふう……ふう……」


イースがそんなリールーに声をかけた。


「すまないリールー」


リールーが目を細めてニヤリとする。


「イース……あたしは、あなたと最期に居れればいい……」

「リールー……」


ふたりは刹那の時間を永遠へ刻みこむため、見つめ合うのだった。

そこへサンフィルドが割って入る。


「勝手に最期みたいな雰囲気作ってんじゃねえよっ。

イースもやる事あるだろうが!」


「ああそうだった」


イースは見つかった場合に備えて攻撃魔法を、サンフィルドは防御魔法をそれぞれ準備し始める。



    *



ベイルフ北面・城壁塔にて――

本日の千里眼担当である、パーナ、ヤークト、クローサが、アンデッド監視のため石造りの城壁塔に詰めていた。


三人同時に行うのではなく、二人が千里眼を発動させ一人がサポートを行う。

自動筆記の紙の補充や、金属関節の油さしなどを行うのだ。

それを一時間交代で入れ替わっていく。


今はパーナとヤークトが監視し、クローサがサポートに回っていた。

パーナとヤークトの自動筆記が、少し文字を乱れさせながらもしっかり二人の心象を書き留めていった。

その文面をチェックしていたクローサの顔が、驚愕の表情へとかわる。


「パーナ、ヤークトっ、一体なにを見ているの!?」


俯瞰(ふかん)した視点で、パーナとヤークトの視線が飛び交う。

眼下では、今まで北方に気を取られていたアンデッドたちが、南下しているように見えた。


アンデッド全てだ。

それは今までのような、母体から()がれた一部の集団とは質が違っていた。


あまりにも多く、一体一体の顔など識別することができない。

それは一個の巨大な不定形の生物のように、生きる者の世界を飲み込もうとしていた。


パーナとヤークトはパニックを起こしていたが、千里眼発動中はその表情を動かすことが出来ない。

術を解除すればいいのだけれど、アンデッドたちを追い立てるように、その後方からやってくる巨影に目が釘付けとなっていた。


巨大な四足獣のスケルトンが二体、谷底を並んで歩いてくる。

さらにその後ろから、半透明の巨大な幽鬼(ゴースト)がいた。

フードを被っているように見えて、顔がよく見えない。


パーナの視線が恐怖心を忘れて、幽鬼へ近づいていく。

いや幽鬼がパーナの視線に気付き、吸い寄せているのかもしれない。

すると幽鬼の顔がすっと上がる。


――見られた


そう思った瞬間、パーナの意識がフツリと切れた。



    *



「おや……?」


ヤクトハルスの巨樹に吊り下げられたハンモックで、くつろいでいたシノが不思議そうな声をだす。

そして自分の左手をまじまじと見る。

その左手には薬指がなかった。


「どうしたんです、シノさん?」


その隣に座っていた、楽市(らくいち)が声をかける。

ふたりが乗るハンモックは、五人と一匹がゆうゆうと寝そべられるように、かなり大きく作ってあるのだ。


「ラクイチ殿、子供たちは確か北へ狩りに行ったんですよね」

「ええ、北に良い狩場があるんですよ」


「いまチヒロラが〈南〉へ飛びました……」

「は?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ