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第53話 まるでブーケのよう

「僕はいつだって真面目だよリールー」


リールーの問いに真摯(しんし)に返すイース。

見つめ合うふたりに、サンフィルドが割って入った。


「ちょっと待ってくれ〈開放〉だと!? 

本気で言ってんのかっ、コントロール出来んのかよ!?」


「コントロールは出来ない。けど大丈夫。

僕のそばにいればね。エス型を襲うことは決してないよ」


「ぐっ……いやだからって、戦闘の流れ弾が来たらどうすんだよっ。

それは対象外だろ!?」


「そのために、僕にはサンフィルドが居るんじゃないのか?」

「うぐぐ……っ」

「僕はサンフィルドを信じている」


イースはここでじっとサンフィルドを見つめた。


「いつだって君に、命を預けて来たつもりだよ」


その真摯な眼差しから、サンフィルドへの絶対の信頼が伝わってくる。


「イース……」


サンフィルドはどうして良いか分からぬ顔をして、イースに背を向けた。

そして吐き捨てるように言う。


「ちっ、勝手にしろ。どうなっても知らねえからなっ」


口ではそう言っているけれど、サンフィルドの手元がせわしなく動き始めた。

防御魔法を構築する、(しゅ)を唱える。

最大防御の魔法は、常時展開するには燃費が悪すぎるので、いつでも発動できるようにしておく。


「俺の背中から離れるなよ」


背中越しに語るサンフィルドへ、イースは強い眼差しを送る。


「ありがとう」


そんなふたりのやり取りに、リールーは生暖かい目を送った。

リールーはいつも思う。

サンフィルドのツンとした態度の後に、デレる性格は面倒くさいと。


今回の作戦もそうだ。

自分が早く帰りたいからこうするんだとリールーには言っていたが、実際はこんな危険な地帯から、イースを一刻も早く遠ざけたいからだった。


なぜ素直になれないのか?

可愛いと思わ無くもないけれど、やはり面倒くさい。

サンフィルドの悪い癖だと、リールーは思う。

ぼんやりと考えていたリールーに、イースが振り向く。


「リールー、頼めるかな……」


イースの真摯な眼差しが、今度はリールーに向けられていた。

声をかけられたリールーは、イースを見つめたまま長い溜め息をつく。

そのままリールーは前を向き、〈開放〉へと至る魔法陣の構築を始めた。


呪の高速詠唱を、口の中でモゴモゴと転がしつつ、指先で空中に小さな魔法陣を幾つも描いていく。

空中に描かれた魔法陣が、深紅に輝き始めた。

リールーはそれぞれの魔法陣を線でつなぎ、第一段階、第二段階の(せき)を開いていく。


そこへ更に線を描き足して一つにまとめ、空中を滑らせてイースの前に差し出す。

小さな円が複雑にからみ合い束ねられたそれは、まるでブーケのようだった。


「ありがとうリールー」


礼を言うイースに、リールーは肩をすくめ黙って双眼鏡を覗き込む。

観察準備はバッチリである。

今日一番の見どころを逃してなるものかという気迫が、リールーから伝わってきた。


イースはリールーを微笑ましく思いながら、腰にある剣を抜く。

左手の薬指を少し切る。

指先から流れ出たエス型種の血がしたたり、魔法陣に吸い込まれていった。



    *



最初に気付いたのは、ストーンゴーレム内の術者たちである。

突然ストーンゴーレムが、言うことを聞かなくなったのだ。


「何だ、どうした!?」


理由など誰にも分からない。

一度大きく揺れて、部屋に浮遊感が生まれた。


「おいっ、ゴーレムの形が変わっていくぞ!」


表面の動きを感知した術者が、戸惑っている。

同時に五人は誰かの視線を感じ、辺りを見た。


「何だこの感覚は!?」


確かに感じるのだが、相手が分からない。

上や下から視線を感じ、四方からも感じられた。

術者の一人が、貼りついた喉でつぶやく。


「部屋が……見ている?」


陽光の中、ストーンゴーレムは余分なスペースはいらぬとばかりに、部屋を押し潰し変化していった。




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