表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/141

第43話 いっぱつぶん殴っておいた

(うー)

  

朱儀(あけぎ)はどうしようか迷った後、やっぱりもう一発ぶん殴っておいた。

朱儀がダークエルフに集中している間、楽市をものすごく馬鹿にしているのが伝わってきて、ムカムカしたのだ。


そして放してやる。

殺してはいない。

楽市が「放っておけ」と言ったから。

 

炎の目くらましが薄れるころ、その場にはもう朱儀の姿は無かった。

目の効く獣人兵が、ストーンゴーレムを登る朱儀の姿を見付ける。


ストーンゴーレムの構造は一枚岩ではない。

多くの岩石を組み合わせて、その巨大な姿を保っている。


朱儀は爪を食い込ませて、石垣のようなストーンゴーレムを、するすると登っていくのだった。

獣人兵たちは弓矢を引き絞り、銀髪の後頭部へ狙いを定める。 


(なんか、うしろ、ちりちりする?)

(するする、してる!)

「見つけるの早すぎっ、朱儀いそいで!」

(んー!)


獣人兵が指を離す瞬間、気配に気付いた楽市たちがリミッターの壊れたエンジンのように、四重の炎を吹かせまくった。

朱儀の登るストーンゴーレムの側面が、炎で覆われて見えなくなってしまう。

これでは魔法も定まらない。 


獣人兵は朱儀を追うため、炎の届かぬ反対側からストーンゴーレムを登り始めた。

朱儀とまでは行かないまでも、かなりの速さで力強く登っていく。

しかしストーンゴーレムが一歩進むごとに発生する、上下落差五メートルの激しいタテ揺れが、獣人兵たちを苦しめた。

 

ストーンゴーレムが進むごとに、獣人兵がパラパラと落ちていってしまう。

運の悪い者は、落ちてストーンゴーレムの腹にすり潰された。

朱儀はそんな中でもあっさり登り切り、姿が見えなくなる。


ストーンゴーレムの上部は緩やかに湾曲しており、組み合わされた岩が石畳のように広がっていた。

朱儀は迷わず中央に進んでいく。

すると朱儀をさえぎるるように、手前の石畳が四つ迫り上がってくる。


(!?!?)


朱儀に立ち塞がるのは、一辺が二メートルほどの大岩だ。

岩の表面に、細やかな亀裂が入っていき、綺麗に各部が分かれていく。

展開する立方体は、人の姿を模した四体のストーンゴーレムとなった。


それは六つの腕を持ち、それぞれの手にミスリル製の巨大な斧槍(ハルバート)を握りしめている。

身長はゆうに三メートルを越えており、感情の無い眼で朱儀を見つめた。

首から上だけの楽市が、目を丸くする。


「護衛だっ、こんなのまでいんの!?」

(ごえーてなに?)

夕凪(ゆうなぎ)が聞き返す。

 

「ここを守っているヤツ!」

(あー)


霧の中でも妖しく光る合計二十四本のハルバートを見て、楽市の顔が青くなった。


「朱儀!」


心配する楽市とは反対に、朱儀は真正面からスタスタと近付いていく。


(はっはっはっ)


心象から、朱儀が思いっきり喜んでいるのが分かった。


「うわー……」

 

懲りないのである。

それが鬼というもの。

楽市はそれに呆れながらも、霧乃と夕凪に指示を出す。


「霧乃っ、夕凪っ、朱儀の手助けを!」

(わかった!)

(らくーちは、あたまがくんがくん、なんとかしてっ)


「むむむ!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ