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1.おバカな魔王と旅の道連れ。

たまたま会った友人とリレー形式で小説を書いてみました。

少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

でわでわ。

はじめまして。

私は、キルギヴァ。

歳は人間の年齢なら、19歳ぐらい。

私と雇い主のセレンシアト様は、わけあって長年住み慣れた自分達の国を離れて現在は、人間達の住むイルディオという国へとやってきた。

人間達は、広大な大地を数に物を言わせて長い間支配してきた。

一方、私達の種族・・・・人間達が言うところの魔族は、数が少ないゆえに1個体能力は高いにも関わらず、僅かな領土で慎ましやかに暮らしてきた。

人間達にとっては忌むべき魔族。

それは今も変わっていなくて。

私達は魔力に封印をして、見た目人間と変わらない姿で旅を続けている――――。





とある港町にある小さな両替所。

窓口は1つとあって、店内はそこそこ混んでいる。


ダンッ!!


扉が勢いよく開かれる。

私は、セレンシアト様と共にこの両替所で順番がくるのを今か今かと待っていた。

「おとなしく、手を挙げろ!誰も動くなっ!」

そこへ入ってきたのは、マントを肩から羽織り、帽子を被って顔を隠すように布を口にあてた、体格のいい男達。

総勢4人余り。

各々が剣を手にして2人が両替所の職員へ、2人は客達に脅しの剣を突き付けた。


「きゃああああああ~っ!!」


一瞬にして両替所は人々の悲鳴に溢れかえった。

「金を出せ!!さっさとしろっ!」

働く人間に命令をしている男がリーダーらしく、顔を隠している布の隙間からたっぷりと蓄えた髭がはみ出ている。

「客は一ヶ所に集めろ!」

リーダーの指示に従って、両手を挙げる客達を一ヶ所に集める。

「おいっ!そこの!」

強盗達の1人が、客であるセレンシアト様の肩をむんずと掴んだ。

「は、はいっ?」

振り返ったセレンシアト様の容姿に強盗は布の隙間から覗く目を見開く。

その容姿は、端正で中性的な色気を纏っている。

少し長めのショートカットにした黒髪は光の加減で天使の輪が幾重にも輝いている。

男という性別がかろうじて判別できるのは背の高さのみ。

身長180cmを越えているのは、女性だとしたらかなり規格外。

外見年齢は20歳で止まってしまったが、実際には500歳を優に超えている。

私の個人的な希望としては、もう少し大人っぽくなったセレンシアト様も見てみたいような・・・。

着ているものは、木綿でできた簡素な上着にズボン、そしてマントという一般的な旅人スタイルであるが、よくよく目の肥えている人が見れば、そのどれもが上質な仕立てのものだと分かる。

「客の持っている武器を、全部集めろ!」

「えっ?・・・・・僕がですか?」

緊張感のない態度に強盗はイラッとした口調を隠さない。

「そうだ。はやくしろっ!」

顔から3cmと離れていない距離に剣の刃先を向けられても、セレンシアト様はのんびりとした口調のままだった。

そこに、私は割って入る。

「お待ちください!セレンシアト様の代わりに私がっ!」

必死に訴えて、セレンシアト様と強盗の間に立ってみたら、強盗の方が後ずさって隙間を開けてくれた。

「キル?危ないよ。」

そう思ってくれているなら、セレンシアト様が下がって隙間を作ってくれればいいのにと少し思う。

「いいえ。セレンシアト様に任せる方が怖いですから。」

うっかり強盗を捕まえるつもりで、ここにいる人たち全てを殺しかねない。

私は強盗の人がいいとも悪いとも答える前に、他の客が武器を持っていないか、1人づつに声をかけて回収していった―――。

「キルってば、人質になっても働き者なんだねぇ。」

強盗を無視してセレンシアト様は、はははと笑う。

剣を突き付けていた強盗の一人も、呆れ気味でその姿を見つめていた。

人質サイドは、なぜだかユル~イ雰囲気が漂っている。




一方の、従業員側2人の強盗達の間には依然、緊迫した空気が流れていた。

女性従業員が、指図されるままに現金を麻の袋へと詰めている。

表にいるはずの警備の人間が中へやってこないということは、殺されている可能性が高い。

中にいた2名ほどの警備の男達は、あっという間に斬り伏せられてしまった。

強盗達は、ただのならず者ではない。

しっかりと剣の基礎を学んだ者たちであることが、隙のない動作から窺い知れた。

「よしっ!ずらかるぞ!!」

リーダーが大声で叫ぶと、他の強盗達が互いに頷き合って立ち去る準備に取り掛かった。

両替所に入ってから、時間としてはまだ5分ほど。

町の治安を守っている騎士団の人間が来るには、まだ時間がある。

警備の交代の時間を狙った、隙をついた強盗達の行動は普段から幾度となくこういった集団行動をしている者特有の統制がとれていた。

その頃、せっせと客が懐に護身用として身に着けていたナイフを回収していた私は、人質の中の一人、私達より少し年上ぐらいの外見をした青年にも声をかけた。

「武器となるものを回収させていただきますね。」

私は、そう言って青年が腰に下げていた剣の鞘に手を伸ばそうとした。

「剣士が剣を渡すわけにはいかない。どけっ!」

私だけに聞こえるくらいの声の大きさで青年は言うと同時に、5人いた人質の中から強盗の1人に向かって剣の鞘に手をかけて飛び出した。

「あっ。ちょっと・・・」

私が慌てて止めようと声をかけるけども、青年の耳には当然届かず。

果敢にも強盗をぶちのめしてやるみたいです。

セレンシアト様は、先ほどの強盗に向かってイルディオの特産物やら名所はどこかなんて世間話をしている。

自分の主人ながら、ちょっとは空気読んでほしい。

青年は、悲鳴を上げさせる時間も与えず、あっという間にもう一人の客側にいた強盗を斬り伏せた。

早いっ!

青年の剣の腕は、素人である私から見ても無駄が無く、洗練された動きだった。

よっぽど名のある剣士なのだろうか。

弱肉強食が常である、私達が以前住んでいたウォルデスタートという国の中でも、十分に上位貴族達と張り合えそうだ。

「あっ!きさまぁ、なにをっ!」

セレンシアト様の世間話に付き合わされていた強盗が、相方の死に気づいて動揺の声をあげる。

「死ね。」

青年は、一人目をほふった瞬間にはこちらへと加速していた。

あっという間に至近距離へと近づいた青年が、強盗の心臓を狙って剣を奮う。


ガキィーンッ!!!


金属同士が触れ合う不協和音に、従業員側にいた強盗も異常に気付いた。

「なにっ?!」

青年は、自分の剣が強盗の心臓を刺し貫かなかったことに驚いている。

けどけど、この場合、私が何より目を見張ったのは・・・・・。

「うわっ!せっかく酌み交わそうとしてた酒が・・・・・」

酒を入れてあった金属製の水筒を使って、青年の攻撃の軌道をずらして見せたのはセレンシアト様。

水筒は蓋部分がコップの役割もするようにできていて、セレンシアト様が使ったのはこのコップの部分だけだった。

なぜだか、セレンシアト様のコップを持つ左手は酒まみれになっていて、コップも原型が分からないくらいにボコボコになって握られていた。

何をどうやってそんな器用な真似をしたのか分からないが、とにかくセレンシアト様が何かをやって、青年が殺す予定だった強盗の命を助けた事は確かだ。

まったく・・・。

強盗の味方になってどうするんですか?

私は、セレンシアト様のフォローに回るため、急いで3人のところへと行く。

強盗は九死に一生を得たセレンシアト様に信じられない目を向けている。

青年は、今にも目で射殺しそうな鋭い眼光でセレンシアト様を睨みつけていた。

うっ。

この輪の中に入るの勇気いるんですけど。

ただ、中心にいるはずのセレンシアト様だけが、ベッコベコになったコップを見つめて泣きそうになっている。

「あっ、キル~。水筒が・・・」

近付いてきた私に気づくと、顔をあげてセレンシアト様がコップを差し出す。

ふぅ~。

呆れる溜息を隠そうともしないで、私はセレンシアト様から壊れたコップを受け取る。

「全く・・・あなたはどっちの味方なんですか?」

「いや、どっちって言われても・・・・。両替したいだけなんだけど・・・・」

「強盗の味方したら、両替えるお金が無いですよ。」

「あ、そーか。僕は、この青年を応援するんだね。」

「そうです。」

にっこりとお互いに微笑み合う。

「じゃあ、青年は剣を持っているから、向こうにいる残りの2人をやっつけてきてください。お願いします。」

セレンシアト様に言われた青年は、ふんっと踵を返して残り2人のところへ駆け寄り剣を振り上げた。

残されたセレンシアト様の横にいた強盗は、状況を悟ると逃げだそうと方向を変える。

ダッシュした強盗に向かって、セレンシアト様は私に預けたコップをもぎ取ってそのまま投げつけた。

「ぐあぁっ!」

頭部にコップの攻撃を喰らった強盗は、脳震盪をおこしてその場に倒れた。

傍から見ると、大げさなくらいの強盗の状態に皆きょとんとしている。

私だって、詳しい事は分からない。

でも、セレンシアト様の事だ、唯コップを投げただけとは思えない。

きっと何か他の事もちゃっかりやったに違いない。

「青年もお疲れ様。すごく強いんだねぇ。」

セレンシアト様が声をかける方向を見れば、先ほどの見事な剣技を見せた青年が剣を鞘にしまいながら、こちらへと戻ってきた。

セレンシアト様の正面までやってきた青年は、180cmのセレンシアト様より少しだけ背が高い。

青年は、突然セレンシアト様の前で膝を折ると、騎士が王に忠誠を誓うみたいな態勢になって片膝を床に付けた。

そして、下げていた頭を持ち上げると、口を開いた。

「俺を貴方の弟子にしてください。」
























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