狂い美
少女は夜の森を走る。
追いつかれれば終わり。
異形の怪物の腹の中。
「お願い…早く…パパ…ママ…家に帰りたい…」
人の目や口、臓器を繋ぎ合わせて創られたような犬のカタチをした異形の怪物。目に口、耳に子宮、口に眼。この世のモノとは思いたくもない。見てるだけで鳥肌が立ち、強烈な不快感や不安、恐怖に襲われそうになる。
少女はとにかく走り続けた。異形の怪物は追ってきていなかった。そして…光が見えた。
賑わう村の人達、美味しい食事の匂い、パパとママの姿。
「や、やった…私…会えるんだ…パパ…ママ…!」
少女が村の入口門に向かって走ろうとしたその時だった。
黒がうごめくナニカ。先程の異形の怪物よりも恐ろしい姿をした怪物が少女の腕を掴みそして…
少女は身体を食い千切られていく。死にたくても死ねない。痛みだけが襲い続け、絶望の中叫ぶ少女の姿。
「あぁぁぁぁぁぁ!なんてイ異ッ!!これこそ美!私の観たい美!最高の絶叫!最高の痛み!最高の絶望!アァァ!素晴らしい!狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う!!!」
人の皮で作られたコートを着た死体のように白い肌をし、ボサボサの髪型をした男がいた。
「もっとミ体!この素晴らしい美!私の脳を狂わせる!もっと創らなければ!次は何で美ヲ創ル!?アァァ我が主である美!私の美に幸福を齎さんことを!」
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ゼロ達が太陽国を旅立ち、気づけば辺りは暗く夜になっていた。
「もう歩けないよ〜!」
「確かにかなり歩いたな…仕方ない。今日はここで野宿しよう。」
「こんな暗い森で野宿かぁ…いくらなんでも広すぎでしょこの森!どうなってるのよぉ〜!」
ゼロはため息をつきながら言う。
「欲張っても、宿がその辺にあるわけじゃない。我慢しよう。」
「はぁ〜…わかったわ。」
そのように話していると、奥の方に光があるのが見えた。あの光は松明とかランタンなどの光ではない。村の中を照らす明るい光のような光だ。
「ねぇ待って…!ゼロ!あれ村の光よ!かなり近いし走っていけば宿で寝れるかも!」
「おいまて、突然こんな夜遅く来られても困るだろ。」
「大丈夫大丈夫〜!さ〜!出発〜!」
イゼは疲れが吹き飛んだように全力ダッシュで村の光に向かう。ゼロは少しため息をつきながらも、イゼの後を追った。
二章プロローグ