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ゼロワールド  作者: kaito
一章 龍の戦士編
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平和を取り戻す旅

 七大悪強悪の魂が浮かんでいる。肉体を再生することはなく、完全に機能を無くした状態になっている。

 ゼロは早速、魂を取り込もうとする。零世界の王になるには七大悪の魂を全て取り込む必要があるからだ。

 ふと、あることを思い出す。


「魂を取り込んでも、身体が耐えきれず死ぬかもしれないけどね〜!」


 あのふざけた世界の創造者が過去にそう言っていた。

 だが今さら命欲しさに取り込まないなんてことはしない。ここで死ぬのなら、零世界の王になり平和を取り戻す資格が無かっただけだ。


 「…ッ!?アアアアアアアッ!?」


 魂を取り込んだ瞬間、想像を絶する痛みがゼロを襲う。

 身体に無理矢理巨大な鉄の塊をねじ込まれているような。内側を刃でかき混ぜられてるような。全てを焼き尽くす炎に身体を焼き尽くされるような。そんな痛みがゼロを襲い続ける。


 痛みは収まり始める。どれほど時間が経っただろう。とても長い間、痛みに襲われていた感覚だけが残る。

 実際のところ、一分しか時間は経っていなかった。だがゼロにとっては、その一分が一時間のように感じた。


 「俺は…魂を取り込めたんだな…零世界の王になる資格があるんだな…」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 闘技場で死闘を繰り広げていた頃、イゼは城の地下を探索していた。

 地下には腐肉の臭いや、糞と下呂が混ざったような臭いが充満していた。そして辺りには、今にも崩れそうな吊るされた人の死体、顔などが溶けてしまっている人の死体、羽虫に群がられている人の死体などがあった。


 「臭いし見ているだけで最悪なものばっかり…悪趣味すぎよ!」


 文句を言っていると大広間に出る。辺りには下水が流れており、天井には羽虫が大量にいる。


 「何ここ〜!?うじゃうじゃいて気持ち悪いよ〜!」


 羽虫達が突然、イゼの目の前に集まり始める。

 すると忽ち姿を変え、人の姿となる。


 「先程から文句ばかり言いおって、ここは儂の部屋だと言うのにのぉ。」

 「あ〜!六位なのに七位に従っている虫悪じゃーん!こんなところにいたんだ〜!こんなとこにいたらもっと身体臭くなるんじゃなーいの?」

 「口を閉じろ無礼女がァ!儂は本気を出してないだけであのような殴ることしか脳の無い悪種族なんぞ…!」


 悪種族ってなんでこんなに煽りに弱いのかしら〜?とイゼは思う。


 「まぁ良い。無礼な者は儂の虫の餌にするだけじゃ。虫達よ。喰え。」


 次の瞬間、あらゆる場所から羽虫が現れイゼの身体に群がる。完全に羽虫により包み込まれ、イゼの姿は見えなくなる。


 「こんなもんとはのぉ。口だけは達者な無礼女じゃなぁ。」


 悪に染まった目と笑みをしながら見つめていると…


 突然イゼを包み込んだ羽虫達が紅い炎で焼き尽くされる。


 「なんじゃ!?この炎は!?」


 炎の中から無傷のイゼが出てくる。羽虫達に食い尽くされた痕跡は無く、襲う前と変わりない姿だ。


 「気持ち悪いことしないでよ〜!背筋が凍りそうになったんだよ〜!」


 この女…只者ではない!そう思った虫悪は、虫達を直ちにこの場に集合させる。


 「我が虫達!その身を繋げろ!究極の一となれ!」

 「おや〜?必殺技かな〜?」


 虫達が一つになり、巨大なハエのような姿になる。


 「見よ!これこそ我の最高傑作!ベルゼブブ!」


 虫悪はベルゼブブをイゼに突撃させる。だがその次の瞬間だった。


 ベルゼブブは紅い炎に包まれ藻掻き苦しむように焼き尽くされる。


 「なんなのだ…お前はなんじゃ!?そのような力何処で!?」


 イゼは悪種族のような笑みを浮かべながら話す


 「こんなのが七大悪なんて、笑っちゃいそうになるわね。」


 虫悪はかつてその笑みを見たことがあった。悪種族を焼き尽くす姫の姿を。


 「貴女は…まさか…姫…!」


 虫悪は何も喋らず焼き尽くされた。そして灰も残さず、塵となって消えた。


 「よーし終わった〜!ゼロ達は無事かな〜!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 イゼが虫悪を討伐した頃、虫悪の魂が何かに導かれるように闘技場に引き寄せられていた。

 ゼロはこちらに向かう虫悪の魂に気づく。


 「あれは…七大悪の魂…勝ったんだなイゼ…」


 想像を絶する痛みを耐えたところだが、ゼロはそのようなことを構わずに虫悪の魂を取り込む。


 「…グッ!?」


 あの痛みが再度発生する。だが、今回は一度取り込むことに成功したからか痛みは10秒程度で収まった。


 「これで二つ目…」


 痛みを耐えたが、限界が来ていたのかゼロは意識を失い倒れる。死体にでもなったかのように静止してしまう。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 声が聞こえる。名前を呼ばれている気がする。とても聞き覚えのある声で…


 「ゼロ〜!起きて〜!」

 「…」


 目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。俺はベットで横になっていた。


 「闘技場ではゼロが意識を失ってて玉座ではサンが意識を失ってたからビックリしたよ〜!」

 「ここまで運んでくれたのか…」

 「宿まで二人を運ぶの大変だったんだから!」

 「ありがとう…少し身体が休めた気がする。」

 「そういえば、今国民達が七大悪を倒したお祝いに外で宴してたよ!美味しい食べ物たくさんあったから一緒に食べに行こ!」


 ゼロは正直まだ完全には身体を休めておらず、少し動くだけでも痛さを感じてしまうほどだ。

 だがゼロはここまで助けになってくれたイゼの誘いを断ることはできなかった。


 「それじゃあ、一緒に何か食べに行こうか。イゼ」

 「やったー!美味しい食べ物ゼロにも食べてほしかったから嬉しい!」

 「そういえば、サンは誘わないのか?」

 「サンなら先に行ったよ〜!「ゼロ達の勇姿を国民達に伝えなければ!」とか言いながら宿を出てった!」

 「…そうか。」


 勇姿なんて無い。俺はただ力を借り、勝利した。ゼロはそう思いながらイゼと共に宿を出た。




 宿を出ると、ゼロとイゼに国民達が目線を向けている。

 そして少し先にある大広間から、サンの声が聞こえてくる。


 「私はこの二人を!この国を救いし名誉ある英雄として!遠い未来永遠と語り継がせる!英雄を讃えよ!太陽国サンを救いし英雄のために喝采を!」

 「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 ゼロは本当に恥ずかしい気持ちになった。感謝されるのは嬉しいことだ。だが、英雄として讃えるはいくらなんでもベクトルが違う!俺はここまで感謝されることはしていない!


 「英雄だって!カッコよくていいじゃん!ゼロは私のこと助けたりと英雄気質だよ〜!」


 早く夕食を済ませて宿に戻ろう…ゼロはそう思った。




 「やっと宴が終わったか…」

 「美味しいのたくさんあったね〜!」


 イゼが満足そうな表情をしている。少しは宴に出た甲斐があった。


 「そういえば、さっきサンから七大悪に関する情報を聞いた。「闘国コンバッティメントの国王、彼は七大悪に関する情報を持っていると聞いた。太陽国サンで十分に身体を休めたら行ってみるといい。」ってな。」

 「またかなり遠い…いつ行くの?闘国には」

 「明日の朝、太陽国を出る。」

 「身体の方はもう大丈夫なの?たくさん歩くなら万全にしとかないと!」

 「心配してくれてありがとう。けどもう大丈夫だ。」

 「無茶したら怒るからね!?」


 実際のところ、あまり万全じゃない。だが、今も何処かで悪種族による被害が出てると思うと…あの最悪の過去を思い出す。


 「明日は早い…今日はもう寝よう。イゼ。」

 「そうね!それじゃあおやすみ〜!ぐっすり寝てね!」

 「言われなくても、ぐっすり休むさ。」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 翌日の朝


 ………何だ?この感触。抱きしめられてるような感覚がする。イゼは別の部屋のハズだ。一緒に寝てるわけ……


 「えへへ〜…猫ちゃん…待て〜…zzz」


 イゼだった。なんで同じ部屋で寝てんだ?とりあえず起こして聞いてみることにした。


 「おい…起きろ。イゼ」

 「ん〜…おはよう〜…ってゼロ!?なんで私の部屋にいるの!?」

 「こっちの台詞だ。なんで俺の部屋で、俺のベットで、俺を抱き枕にして寝ていた?」


 不思議そうな顔をするイゼ。そして突然、謎が解けたような顔をし、思い出したことを話す。


 「そういえば、真夜中にお手洗いに行ってね〜寝ぼけて部屋に戻りに行ったから、隣のゼロの部屋と間違えちゃったかも!」

 「かもじゃなくて間違えてんだよ。」

 「ごめんなさいゼロ!次からは気をつける!」


 朝から一気に疲れた気分だ。早く支度を済ませて、闘国を目指そう。




 「イゼ、忘れ物は無いな?」

 「大丈夫!早く行こうゼロ!」


 太陽国の門を通ろうとしたその時だった。サンがゼロとイゼに声を掛ける。


 「もう行ってしまうのか?ゼロ、イゼ。」

 「…少しでも早く着きたいからな。七大悪が何か起こす前に、殺さなければならない。」

 「そうか…行く前に一つ。お二人の旅に、太陽の加護があらんことを。」


 その言葉を貰い、ゼロとイゼは微笑みながら別れを告げた。


 「イゼ。俺の旅に着いてきて本当に良かったのか?次の国では、今以上に死闘があるかもしれない。太陽国に残った方が…」

 「私はゼロと平和を取り戻したいの。だから何を言われても、この旅を抜けることは無いよ。」


 イゼの想いを聞き、嬉しく思う。共に平和を望んでくれるこの想いに応えなければとゼロは思った。


 「イゼ。俺と一緒に取り戻そう。平和を。」


 その発言を聞いたイゼはとても嬉しそうな笑顔で言う。


 「うん!一緒に取り戻そう!平和を!」


 二人の旅は、本当の意味で始発点を迎えた。

一章エピローグ

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