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ゼロワールド  作者: kaito
四章 悪逆の兄妹編
33/43

ロボ七代目

 「嘘だろ………?」


 目の前には自分達を笑顔で見送ってくれたカフェの店主の悲惨な死体。顔の原型は無く、あの時のメルドサズのように…


 「うっ…!?」

 「ゼロっ!?大丈夫!?」

 「っ…大丈夫だ。心配しなくていい。」

 「そう…?調子が変だったらちゃんと伝えてね。」

 「……やはり、少し悪種族特有の魔力を感じないか?この死体から。」


 店主の死体からは確かに悪種族の悪の魔力が少し感じる。店主が悪種族という線はまず無い。なら、ここから推測できることは…


 「悪種族が…店主を殺した。」


 怒りのみが湧き続ける。悪種族がこの国の何処かにおり、今後もこのように罪無き人を殺し続ける前に、何としても見つけ出さなければならない。すると突然、機械国の騎士に話しかけられる。


 「君、少しいいか?」

 「…?はい、なんでしょうか。」

 「国王が君を探していた。太陽国を救い、闘国すらも救ったゼロである君のことを。」

 「俺のこと…何処で?」

 「詳しい話は城で話をする。ついて来い。」

 「……いつの間に機械国に来てることを知ったのかしら。」

 「どうする?行ってみる?」

 「……何か悪種族に関する情報を聞けるかもしれない。行ってみよう。」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 機械国の城の中は意外にも狭く、一本道の廊下のみ。辺り一面が機械仕掛けであり、歯車等が常に可動している。城の床は鉄だが、耳を澄ますと床の下からも機械仕掛けが可動しているような音が聞こえてくる。


 「……ここまでうるさいと、逆に住みにくくないか?」

 「それ思った〜!」

 「ゼロ…気持ちはわかるが黙っておこう。」


 最も奥の方まで来て、国王がいる玉座の間が見えてくる…と、思いきや何やら一つの部屋の前に連れてこられる。


 「この先に国王がいる。辺りのものには触れず、何があっても騒ぐなよ?」

 「らしいぞ。イゼ」

 「バカにしすぎ〜!」


 部屋の扉が開く、そして中に入るとそこには…


 「な…な…なにこれぇ!?」


 辺りには青や紫そして緑の液体が入った巨大なカプセルから見たこともない機械の数々、そしてその周りには白衣を着た人達がおり、一番奥にはボサボサ髪の眼鏡をかけた男が椅子に座りながら皆に指示を出している。そして今、ゼロはその男と目が合った。


 「この男がもしかして…」

 「やぁぁぁっ…とぉ来たかぁぁ!」

 「テンション高っ…!?」


 男はゼロに近づき、ニッコニコの笑顔で自己紹介を始めた。


 「僕ぁ機械国の国王、ロボ!ちなみに今の僕ぁ七代目ね!」


 そう言うとロボの腕が突然伸び始め、ゼロと無理矢理握手する。


 「腕が…!?」

 「身体を伸ばす能力!?」

 「いや、腕をよく見ると機械っぽいわ…もしかして国王は機械なの?」

 「おっ!正解〜!僕ぁ二代目以降、身体はぜーんぶ機械!人の身体にはいずれ限界が来る!僕が死ねば機械国の発展は今よりも遅くなるだろう…そこで!僕の代わりに機械国の発展の為、可動し続ける機械人形を創ることにした!基盤となる機械人形を創ったら、後は僕の脳を機械国の魔術師の手によって機械人形に組み合わせる!本当は魂を機械人形に移すとかできればもっと発展が早く進むんだけど、僕の持ち合わせてる技術じゃ自分の脳と機械人形を一体化させてこのように本人の如く動くことしかできなくてねぇ!そんな感じで機械国が発展すると同時に、僕の身体の基盤となる機械人形も新たに創り、世代交代してって今に至るってわけ!本来は腐って使い物にならなくなる脳を今もこうして生かしながら活用してる僕、すごくね!?」

 「要するに、すっごい人なのね!」

 「そんな一言で片付けられないわよ…」

 「………」


 この国王、バカっぽく見えるのにとんでもないことしてるぞ…!?

 色々ツッコミたいところはある。だが、今はそこではない。嘘みたいな本当の情報で混乱しかけたが、今は自分を呼んだ理由と悪種族について聞くべきだ。


 「ロボさん…早速なんですが、俺をここに呼んだ理由は?」

 「あーそれそれ!君、太陽国と闘国救うほど強いだろう!?だから今この国にいる悪種族の討伐をお願いしたかったっつうわけ!僕がもし殺されることがあれば、機械国の発展がカタツムリの動く速度並に遅くなって間違いなくおしマイマーイなんでね!カタツムリだけに!?ダーハッハッハッハッハ!」

 「………」

 「………」

 「………」


 ………


 「あの、なんで俺が太陽国と闘国にいた事を知ってるんですか?」

 「えっ!?渾身のおやじギャグ無視!?まぁいいや!それはだね、僕はこの世界のあらゆる場所にこの子を飛ばしてるからなんだよ〜!」


 白衣からリモコンを取り出しボタンを押す。すると突然部屋の壁が動き、小さな穴ができる。そこから白い鳥が飛び出しロボの肩に止まる。


 「この子も機械でできていてね!瞳は写るものを記録するカメラになってるんだよ〜!」

 「カメラ…?」

 「なにそーれ〜?」

 「私も初めて聞いたな。」

 「あーそっか!まだ機械国ぐらいでしか流通してないからわからないか!すんません!」


 いちいちウザいなと思うゼロ達であった。


 「この子が観て記録したモノを僕が観ることで、他の国がどんな様子かここにいても知ることができるってわけ!口だけの噂じゃ信憑性に欠ける!だからこうしてポッポちゃんに記録しに行ってもらってるってわけ!」

 「……お前は、闘国はまだしもそれより前から太陽国があんな状態だったことを知ってたのに、ただ観てただけってことか?こんなにも発展した国なら、悪種族の討伐が無理にしても太陽国の国民を避難させることは可能だったんじゃないか!?」


 冷たい目で問いかける。機械をよく知らない自分にとって、それを実行することが困難かどうかなんて知る由もない。とても失礼な問いだと言うことも理解してる。だけど、もし本当に避難させることが可能だったとして、見殺しにするなんて自分には到底無理なことだ。機械国の国王がもし見殺しにしていたのだとしたら…なんでそうしたのか問い詰めるだろう。


 「ん〜助けられるけど僕に得がない!」

 「は…?」


 得?それだけで見殺しにしたのか?あの光景をただ観ていただけ?

 あの時、太陽国のコロシアムで起きていた惨劇を思い出す。若い男が恐怖に怯えた顔で血だらけの男を突き刺している光景、女性と少女が血だらけの男の死を観て絶望した表情で泣き叫ぶ。そして残った男は最期に羽虫達に喰い殺された…今でも思う。俺がもっと早く駆けつければ、あんな惨劇を止められたのではないかと。

 コイツはそれを助けて得が無いからで見殺しにした。


 「お前はあの惨劇を観て、得が無いからで見殺しにしたのか!?」

 「うん!僕ぁ自分の国の発展、それ以外興味無し!いちいち他者の命を気にするなんて生きづらいねぇ少年!」


 下唇を強く噛み、手から血が出るほど強く拳を握る。この国王は機械の身体に変わると同時に人としての心を失ったのか?いや、コイツは元から心というモノを持たない機械のような人間なのかもしれない。こんなヤツ今すぐにでも殴り飛ばしてやりたいが、今は冷静になることにした。揉め事を起こし悪種族の情報を得られなくなるのは俺としても困る事だ。


 「ゼロ、血が…!」

 「ゼロ……これ以上は…」

 「……すまない。つい怒ってしまった。この話はもういい。」

 「あっ、そう!?それじゃあ本題に戻そっか!この国にいる悪種族、討伐してくれるかい?」


 深く息をつき、ゼロは答える。


 「これ以上、理不尽に殺される人を出すわけにはいかない。機械国にいる悪種族は俺が討伐します。」

ゼロワル豆知識


ロボ一代目の死後から現在までは、20年経過してる。

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