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ゼロワールド  作者: kaito
三章 暴の祭編
31/43

祭の終わり

 「………」


 目が覚めると宿屋の部屋の天井が見える。身体の傷は治っており、腕と片目も治っている。


 「ゼロ…?」

 「ッ!?…イゼ、いたんだな。」


 俺を見つめ続けて何も言わない…どうしたんだ…?


 「ッ…!バカッ!バカッ!バカッ!アルクから全部聞いたわ…!ボロボロなのに自分を囮にするような作戦して、しまいにはもうすぐ死ぬとこだったなんて、元凶を倒して来なさいとは言ったけど、死ぬかもしれない無茶してまでもとは望んでないわ…!元凶を倒したとしても、ゼロが死んだら意味ないわよ…!」


 泣きわめきながらゼロを抱きしめ、無茶したことを怒り続ける。


 「確かに、俺はアイツの攻撃をわざと受けて隙を作った。だが、あのままアイツを生かしてたら─」

 「もっと仲間を頼ってよッ!アルクはボロボロになったゼロを止めれなくて後悔してた…私のせいでもうすぐ死にそうになってたって…ゼロを連れて一時撤退もできたはずだって…!悪種族を憎んでるのはわかるわ…!でも、悪種族を殺した後に待つのが苦しい死なんて、ゼロは報われない…!」

 「………すまん、無茶し過ぎた。」


 涙を拭き、ゼロの方を向く。目元を赤くさせ、呼吸を整える。


 「私も…起きたばっかりなのに、怒ってごめん。今日はゆっくり休んでよ!」

 「わかった…ゆっくり休むよ。いや待った…国民は無事なのか!?」

 「………30人の国民が無事よ。それ以外は突然魂が抜けたように倒れて死んだわ。」

 「ッ…俺は…また救えなかった…」

 「生き残った人達は感謝しているわ。大勢死んでしまったけど、助かった人達もちゃんといる。自分を追い込み過ぎないで。」

 「………あぁ、わかった。」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 闘国には三万人ほどの民がいたが、半日にして30人まで減少。暴悪の霧により暴走した国民達は、暴悪の死亡と同時に魂が抜かれたように突然動きを止め死亡。七大悪三位暴悪による被害は、この国に計り知れない影響を及ぼした。


 「起きたの。ゼロ。」

 「あぁ、起きたさ。」


 俺はどうやら、2日間目を覚まさず眠っていたらしい。その間、闘国には悪討伐騎士団が新たに派遣され、国の復旧作業を行っているらしい。イゼとアルクは、交代交代で俺の様子を見に来て、今はアルクに変わってイゼが復旧作業を手伝っているらしい。


 「………」

 「アルク、その─」

 「バーカ。若いのに無茶し過ぎ。」

 「………お前に、辛い思いをさせてしまった。すまない。」

 「……本当よ…バーカ。」


 涙ぐみながら、アルクはゼロに言った。


 その日の夜


 「よぉ、坊主。」

 「マスター…無事で良かった。」

 「俺が?死ぬとでも?俺はこれでも、この国では元国王の次に強いぞ。あんな暴走したヤツらに殺されるのはまずねぇよ。」

 「そんなに強かったのか…マスター、すまない。俺がもっと早く気づけば、国民は、闘国はこんな事にならず…」

 「おい坊主!テメェ、自分のせいにしてんじゃねぇぞ!?この国がこうなったのは俺達国民の問題だ!国王を安々と信じ、油断し続けたことで起きた末路だ!外から来たテメェには関係ねぇことなんだよ!わかったか!?わかったらテメェは仲間のお嬢ちゃん二人を心配させるほどに無茶したことを反省しろ!」

 「は、はい!」


 ガチ説教されてしまった。


 「それで、坊主はこれからどうするんだ?」

 「残りの七大悪を探します。行く当てはないですが…」

 「なら、機械国ロボに行け。魔術技術では無く機械科学技術を発展させ続けている国だ。何かしら、探す方法を知ってるかもしれねぇぞ。」

 「機械国ロボ…じゃあ明日にでも行きま─」

 「駄目だ!」

 「もう少しここでゆっくり休んで!」


 部屋に突然入ってくる。………部屋の外で聞かれていたらしい。


 「…万全になるまで休んでからにします。」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 3日後の早朝


 身体を万全に休ませ、機械国に向かう準備は整う。

 宿を離れ闘国を出る前に、とある場所まで向かう。


 「来たぜ…ザック」


 今回の被害により死亡した民達の墓場。簡易的に建てられた墓が並んでおり、その中からザックと弟妹達の名が入った墓の前に来る。


 「俺は平和を取り戻すために旅を再開する。俺はもう…ザック達みたいな不幸な家族が生まれないために、悪種族を零世界から無くしてみせる。」


 眼は強い意志で満ちており、ゼロは別れの言葉を告げる。


 「じゃあな…闘国の戦士ザック、天国で家族と幸せでいてくれよ。」


 三人は闘国の出入口門まで向かうと、マスターが待っていた。


 「行くんだな。坊主」

 「マスターさん、朝早くから見送ってくれるんですか?」

 「マスターさんやっさし〜!」

 「ゼロの様子見に来てくれたり、本当に優しい人なんですね。」

 「うるせぇよ。俺はついでに見に来てやっただけだ。」

 「短い間、色々お世話になりました。」

 「ふっ、平和を取り戻すんだろ?さっさと行け。戦士の坊主!」

 「あぁ…俺達は平和を取り戻します!」


 戦士は前を向き進み続ける。救えなかった者達が望んだ、平和を取り戻すためにも。もう二度と、大切な人が失わないためにも。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 洞窟の最奥、天井から光が差し照らす花畑、その更に奥の文字が刻まれた岩の壁、悪を知らない純粋な白に染まる長髪の男が文字を眺めていた。男は白い神父服を纏い、光無き悪に染まった眼をしている。笑みを浮かべ、男は言う。


 「少年が零世界の中心へと辿り着く時、零世界の王は誕生する。だが、そんな結末は私が望まない。零…貴方の定めた運命は私が滅ぼしましょう。」

三章エピローグ


自己犠牲の戦士

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