夢と願う過去
俺は幸せに生きていた。小さな村で毎日、家の家事を手伝い、友人と遊び、父さんに魔術を教えてもらい、母さんに教えてもらった魔術を見せて褒めてもらい…
「ぐぬぬ…ダメだ!また失敗した!」
「まだこの魔術はお前には難しかったか~!ま、練習あるのみだぜ!」
「うん!俺練習しまくって絶対この魔術覚えてみせる!」
俺は父さんが好きだった。
「よっしゃ!また俺が1位!」
「くっそぉ~!やっぱ走るの速ぇな~!」
「ほんと!私達じゃ勝てないよ~!いいな~!」
「何度でも挑戦受けるぜ!俺は優しいからな!」
「今度は負けねぇからな!俺の全力ダッシュみせてやるぜ!あの木まで競走だ~!」
「あっ、ズルいぞお前!待てぇ~!」
「あっ!二人とも!待ってよぉ~!」
俺はあの二人の友人が好きだった。
「母さん!みてくれよ!これ!」
「あら、お父さんの魔術を覚えたのね♪凄いわ♪」
俺は母さんが好きだった。
俺が弱かったから奪われた。
「おい!おい!しっかりしろよ!なぁ!なんでなんも言わねぇんだよ!」
村は燃え、焼き尽くされてく。俺の目の前には友人が二人。声は出なくなっていた。
「行こう…ここにいたら命が危険だ。」
「父さん!嫌だ!俺は二人を連れてかなきゃいけないんだ!」
俺は村の避難用地下に連れてかれた。友人の二人を見つめながら。
「いいか?ここからは絶対に出ちゃダメだからな。」
「父さん!行かないで!アイツに殺される!」
「……母さんを頼むぞ。誰よりも優しくて強いお前ならできる。」
俺は泣き叫んで父さんを呼び続けた。最後は優しく微笑んでくれていた。
「ここに逃げたヤツがいたな。」
黒い鬼の口面、黒の短髪。黒のコートに黒の長ズボンの高身長、紅く鷹の眼のような瞳をした男がこちらに近づいてくる。
「……お母さん。一緒に生きていたかったな。」
少年「母さん…?何言ってんだよ…」
母さんは次の瞬間、俺を突き放し避難用地下から出る。
「ッ!?母さん!?今出ちゃダメだ!」
「ほう。自分から出てきたか。」
俺は外に出て母さんを連れ戻す勇気は無かった。死ぬのが怖かった。
避難用地下の扉を少し開け地面から顔を出す。母さんとアイツの姿が見えた。そして俺は………目の前で殺される母さんと目が合った。
「ゼロ…幸せに…生きて…」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「母さんッ!」
「うわっ!?ビックリした…大丈夫?急に叫んで起き上がって。」
太陽国サンから少し離れた森の中にいた。イゼは心配そうに俺を見つめる。
「大丈夫だ…夢を見ていただけだ。」
夢と思いたい過去を思い出しただけだ。