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ゼロワールド  作者: kaito
三章 暴の祭編
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戦士の休息

 深い海の底で少年は眠る。

 何かを感じることはなく、空っぽになったかのように眠り続ける。

 このまま目覚めること無く…永く永く永く…この眠りをいつまでも…


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「あっ…!目覚めた!」


 目が覚めると赤髪の少女が目元を少し赤くした状態で見つめている。意識はまだ朦朧としており眠る前の最後の記憶が無い。


 「俺は…何が…」

 「昨日の夜、七大悪と戦ったでしょ?無茶し過ぎてボロボロだったんだよ!私が駆けつけなかったら危なかったんだから!」


 そうだ…俺は七大悪の一人と戦った。アルクやザックが来てくれたお陰で無事に倒せたとこまでは思い出せる。その後の記憶が朦朧としていて…あの後いつ意識を失ったかを思い出せない。


 「毒は…」

 「それなら私が焼き尽くした!だからもう大丈夫!」

 「そうか…ありがとう」


 そういえば俺は…いつまで眠ってたのだろうか?今日は決勝当日だったはずだ。もしかしたら遅刻してしまっているのでは…?


 「イゼ、そういえば今日…」

 「安心して!決勝はゼロとザックが完全に休めたらって国王が言ってたわ!」

 「そ、そうか。なら安心だ。」

 「安心!?私はさっきまでゼロが目覚めないと思ってハラハラだったんだよ!?」


 本気で怒っている。こんなにも心配させてしまい申し訳ない限りである。


 「お腹、空いてるでしょ?昨日の夜から今日の夜までグッスリだったんだから!」

 「そんな寝てたのか…」

 「そうよ!だから今から、私と夕食でも食べに行きましょう!」

 「そうだな…そういえばアルクとザックは?」

 「アルクなら外を散歩中!ザックは今日の昼頃起きて家に戻ったわ!「妹と弟が不安になってるかもしれねぇ!」って言ってね!」

 「良かった…二人もあの後無事だったんだな。」

 「全員もう何とも無いかもしれないけど、明日も念のためしっかり休んでね!また無茶したらもっと怒るんだから!」


 明日から決勝を行われても構わないと思っていたが、釘を刺されてしまった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ゼロとザックの下に、悪討伐騎士団隊長代理がメルドサズを殺した悪種族討伐について感謝を伝えに来る。


「悪種族の討伐、本当にありがとうございます。」

 「俺はお礼を言われる立場じゃないです。隊長をあの場で助けることもできたかもしれないのに、俺はただ目の前で殺されるのを愕然と見ていただけで…」

 「突然何処からともなく攻撃されたんだ!助けられなかったのは悔しいが、ゼロがそこまで自分を責める必要はねぇ!むしろあの世で仇を討ってくれて今頃感謝してるかもしれないぜ!」

 「隊長なら、むしろあの世で自分の弱さを悔やんでいるでしょう。ゼロさんやザックさんをあんなにも死にそうな状態まで頑張らせてしまったと。」

 ゼロ「弱さを悔やむなら俺も同じだ…あの時もザックがいなきゃ今頃…」

 「隊長なら、こう言うはずです。君達のような勇敢な少年達には、笑顔で生きていてほしいと。だから今は………隊長のために笑っていてください。」


 声を震わせ口にする。相手の心情を考えないこんな自己満足に近い頼みを無理強いするのは騎士として相応しくないのかもしれない。だが今は一人の人間として、隊長を心から尊敬していた一人の部下として、あの世にいる彼が報われてほしいその一心で、ゼロには笑顔でいてほしいと頼む。


 「……はい。」

 「よっし!せっかくだから、今から飯食ったりしに行こうぜゼロ!こういう時は美味いもん食って気分をリフレッシュしねぇとな!」

 「ふっ…俺のためにありがとな。ザック。」

 「いいんだぜ!ライバルであり友だからよっ!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 真夜中、冷たい風が少女に当たる。

 宿の屋根から眺める美しい夜空の星、何時しか弟と観た想い出の…


 「………」

 「こんな真夜中に、身体が冷えるぞ?」

 「それはゼロにも言えることだ。」


 少年と少女は共に夜空を眺める。街の光は消えていき、星と月の輝きだけが二人を照らす。


 「私は…あの時何もできなかった。今にも死にそうな二人を前に、恐怖で動くことができなかった。イゼが来なければ私は…あの時弟を救えなかったようにゼロも救えずいたかもしれない。」


 アルクの中にはあの時のことがトラウマとして染み付いている。あの時の光景を恐怖する。また失うのかと恐怖する。また救えないのかと恐怖する。


 「会って間もないのにおかしいと思われるかもしれない。けど、私はもうゼロ達すら失いたくないと思ってしまう。また一人になるのは嫌なんだ…」


 声を震わせ心の中に思っていることを吐き出す。アルクが初めて見せた自身の弱さ、彼女に対しての答えは一つだった。


 「約束しよう。俺は…いや俺達は…絶対にアルクを一人にすることは無い。むしろ俺の方こそ、いつまでも傍にいてほしいと思っている。一人の辛さを…俺はもう味わいたくないからさ。」

 「っ…ありがとう。ゼロ」


 少年は優しく微笑み、少女の手を握る。少女は安心を得たからだろうか、微笑みを浮かべる。

 同じ辛さを知る者同士、星空の下で約束する。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 翌日の11時55分頃


 国王から城に来るよう呼び出されたゼロとザック。決勝のことについて話をしたいとのことだ。

 二人は城に向かうと、城の騎士達の誘導の下、国王のいる玉座の間へと招かれる。


 「ここが国王の…」

 「すっげぇ広いな…!」


 奥まで進むと国王の姿がお見えになる。


 「よく来てくれた戦士達よ!決勝について話をする前に、改めて俺から名を名乗らせてほしい!」









 「闘国コンバッティメント国王であり、七大悪三位の地位を持つ闘志溢れた戦士、暴悪と言う!」

ゼロワル豆知識


イゼの炎は対象を決め焼き尽くす。ゼロとザックの毒も対象を毒のみにし二人の身体に染みついた毒を焼き尽くした。

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