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ゼロワールド  作者: kaito
三章 暴の祭編
26/43

狩人と獲物

 怒りしか沸かなかった。冷静さなんてありもしない。ただ思うことは一つ…


 「メルドサズ…俺が…アンタの勇敢な魂を殺した悪種族を…!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「とか、言ってんだろうな。あの顔。感情に左右されるヤツは周りが見えなくなる。俺にとっては好都合の獲物だな。」


 自身の悪の魔力で満ちた森の中で、暗殺悪はただただ待つ。怒りという感情に身を任せ、無謀にも突っ込んでくる能無しが立ち止まるその時を。


 いつまでも森の中を駆け回ることは決して無い。この能無しは必ず止まる。何故なら能無しは既にこの罠に落ちているからだ。能無しは今、この森の一番悪の魔力が濃い場所に向かっている。その場にいるのは勿論俺、真っ先に魂を殺しに来るだろう。ただ一つ、その場にいるのは俺であり俺ではない。膨大な魔力により創り出された偽者だ。これにより本者の俺から漏れ出される悪の魔力はここに充満した悪の魔力と大差の無いものになる。能無しが偽者に攻撃を仕掛けると同時に俺は引き金を引き能無しの脚を撃ち抜く。行動を停止させたら後は娯楽だ。少しずつ苦しみを与え、絶望に満ちる時…


 「俺自ら出向き、絶望に満ちたお前を舐め回すように見下し殺してやろう…!」


 ゼロは膨大な魔力を感じる方角へと進み続ける。龍刀を創り出し、先手必勝を狙うつもりだ。

 進むたびに悪の魔力が強くなる。黒い人影が視線上に姿を出し、ゼロの突き進む速度は上昇する。

 人影が目の前の距離まで近づく。ゼロは龍刀を振り上げ、人影に振り下ろす。


 「ここでぶった斬る…!」


 振り下ろされた龍刀は人影の正体である暗殺悪を縦真っ二つに斬る。斬るのだが、忽ち魔力となり、暗殺悪は消えていく。


 「手応えがない…?まさか…!」


 気づくには遅すぎた。銃声と共にゼロの胴体を貫く銃弾。威力、弾速、どちらもゼロの動きを止めるには充分だった。一発では終わらず、追撃で二発目、三発目、計五弾がゼロの身体を貫いた。


 「ぐっ…!?がはっ……!?」


 罠にまんまとハマった…俺は獲物として狩られる側だったらしい…


 「はーっ…はーっ…はーっ…」


 龍の魔力で傷口の自己治癒を行う。だが暗殺悪はその隙を見逃すつもりは無かった。

 背後から何かが突き刺さる。ナイフのような鋭い刃物、銃弾ではなく刃物でわざわざ攻撃を受ける。


 「クソッ…!刃物が背に…ウッ!?」


 突如来る強烈な吐き気、逆流してくる胃酸、吐かずに飲み込むことすら不可能な勢い、ゼロは嘔吐する以外の選択が無かった。


 「オォェ"…ヴッ…ウォェ"…」


 気持ち悪い…思考することすら…吐き気がする…

 赤い…とても赤い…


 胃酸と共に血が吐き出る。立ち上がるのが困難になるほどの目眩、胃にあるものを全て吐かなければ気がすまないほどの吐き気、身体を動かすたびに寒い。


 「この…ナイフ…毒が…」


 来た!

 来た来た来た!

 来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た!


 「キタアアアアアアアアアアアアアアッ"!」


 落ち着け俺!落ち着け欲望!落ち着け本能!あぁ、わかってるさ!能無しにまだ力が有り余ってでもいたら即座に俺の場所に来られてしまう!だが!この殺す前の醜い姿は勃起モンだ!


 「落ち着け…まだだ…殺すにはまだ…」


 口より先に身体が動く。何百の獲物を殺してきた刃を手に、暗殺悪は走り出す。

 殺したい!今すぐにでも!あの醜い獲物を!


 「今ここでなぁッ"!」


 刃が振り下ろされた先は、紅い鱗で纏われた腕。まるで龍のような強靭な鱗、そして獲物は徐々に立ち上がる。


 「名演技だっただろ…能無し」

 「な、何ッ!?あの毒を受けて尚立ち上がる!?ふざけるな!興ざめだ!能無しがァ!」

 「あのナイフが刺さった後…どうも変な魔力を感じてな…周りの静かな魔力と違い…少量ながらも荒ぶるような魔力を感じた…徐々にテメェが近づくから気づかれねぇよう死にかけの不利をしたってわけだ…」


 まぁ…それでもこの目眩と吐き気は痩せ我慢してるだけだけどな…


 「チッ…!顔がバレた程度不利でも何でもない…!」


 ゼロを勢いよく蹴り飛ばすと、暗殺悪は暗闇に身を隠し魔力を整える。


 「クソッ…!反応が…!」


 毒の影響はやはり強かった。あの蹴りならば即座に受け止め対処できた。だが、それが出来ないほどに身体は毒による負荷が掛かっていた。


 「スゥー…ハッ…」


 落ち着け俺。欲望に駆られるな。冷静になるのだ。魔力は整えもう周りとの区別はつかない…能無しをまた死の間際まで追い詰める。好都合に、毒がやはり効いてるのか動き出さない。今動いてしまえば症状が悪化するのは理解してるようだな。抵抗を少しは見せるだろうが、俺の銃弾はおそらく反応不可能。


 「殺しを長引かせるなよ…我慢ができなくなっちまう…!」


 銃弾が放たれる。ゼロの胴体に目掛けて真っ直ぐに進んでいく。もはや対処は不可能…


 「させるかよッ!」


 腕に装着した鉄骨で銃弾を弾く。ゼロ一人では対処は不可能だったのは間違いない。だがしかし、仲間が一人駆けつけたとなると話は別だ。


 「ザック…助かった…ありがとう…」

 「帰って来るの遅ぇから様子見に行ってみりゃ、メルドサズが殺されてるしよ!とりあえず気持ち悪い魔力で染まったこの森を突っ走ってみたら、死にかけのゼロを見つけたってわけだ!」


 ここに来て幸運がゼロを救う。暗殺悪は冷静さを保とうとしていたが、狩人の狩りを阻止されたこともあり、怒りで満ちていた。


 「なんなんだ…あの第二の能無しはなんなんだぁ!?あぁ!?銃弾が貫く瞬間…俺はあの時の快感を今かと待ち望んだというのにッ!狩りの邪魔をしやがってッ!」


 落ち着け俺…冷静さを保て…能無しが一人増えただけじゃないか。何の困難も無い。むしろ、娯楽が一つ増えたのだ!アイツも共に絶望に満ちた時に…


 「俺の手で…殺してあげるからねぇ。」


 興奮に満ちた表情を浮かべ、狩りは再開される。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「お前が来てくれたお陰で、傷をある程度治癒できた。ここからは俺一人でも…」

 「何言ってんだ!俺のライバル殺そうとした野郎に一発拳入れてやりてぇんだから戦うに決まってんだろ!」

 「ここで何かあって家族に会えなくなったら…」

 「は!?俺の心配なんていいんだ!それに、俺は死ぬつもりで戦うんじゃねぇよ!お前とぶっ倒して無事に決勝で戦うに決まってるだろ!」

 「……なら、お互い死なずにぶっ殺すぞ。悪種族をな」


 お互い相手の出方を伺う。ザックが参戦した今、例え背後から来ても対処は可能になったと言える。今はただ、相手に一撃を入れるためにこの攻防戦の逆転を待つ。




 とでも考えているんだろうなァ〜!あの能無し共ッ!攻撃の対処?否否否否否否否否否否ッ!俺はもう早く絶望に満たしたくて限界なんだッ!ビンッビンになった魂が爆破しそうなんだァ!だから俺は今この時をもってッ!


 「一方的虐殺を開始するッ!」

 「「ッ!?」」


 宣言と共に四方八方から放たれる毒を付着した強靭なナイフ、対処をするにも限度があるのだ。対策されたというのなら、数を増やし対策不可能にまで叩き潰す。


 「さぁさぁさァ〜!楽しい楽しいパーリィータイムの始まりだァァァァァァァァ!」

 「グッ!?この数は流石に…!」

 「チッ…!ウグッ…!?耐え続けろ…!」


 一つ避けると一つ突き刺さり、一つ弾くと三つ突き刺さる。毒が回り始め、あの時の強い吐き気や目眩、そして寒気が二人を襲う。


 「ヴォェッ…!?おいおい…!洒落になんねぇな…!」

 「とにかく耐えろ…今はただ…ヴゥッ…!?」


 ナイフの雨は鳴り止む。二人の身体には大量の毒ナイフが突き刺さっており、周りには弾き落とした毒ナイフが散布している。お互い意識はいつ無くなってもおかしくは無いだろう。むしろこの状態でまだ立ち上がってるのは異常に近しい。


 だが、その二人の異常は逆転の兆しとなる。


 「ザック…ナイフを集めろ…次の攻撃が来る前にだ…」

 「ナイフ…?」


 まだまだ耐えるほどには力が残ってるな。なら、第二波を放つまで。今回は確実に死に近づいた状態まで…!落としに落とすまでッ!




 「とでも考えてるんだろうな…!今だ…!ザック…!」

 「お返しだァ…!」


 毒ナイフは放たれる。ただ四方八方にではない。暗殺悪に全て…


 「グッ!?なん…だぁ!?」


 「返却してやるよ…テメェの毒だろ…」


 何故だ!?俺の場所が何故!?魔力は周りに放たれたのと大差は無いはずだ!?


 少し前に遡る。


 「ナイフを集めたのは良いけど…何処にいるかわかんのかよ…!」

 「ナイフが放たれる前…ものすごい速さで辺りを何かが駆け回っていた…周りの魔力の動きが変わるほどにな…そしてその動きは…あの方角で突然止まった…それ以降動きはねぇ…賭けみたいなもんだが…」

 「まだそこで…俺達がゲボ吐いてたりするとこを…眺めて楽しんでるかもしれねぇんだな…!?」


 そして現在、賭けは成功した。


 「魔力の乱れを感じた…行くぞ…ザック…!」

 「反撃開始だな…意識保てよ…!」




 ふざけるな…!俺の毒を…!我が物のように…!冷静さだ…!冷静さだ…!冷静さだ…!


 「能無しが来る前に…体勢を立て直すまでだッ…!」

 「否。お前はここで死ぬ。」


 悪の魔力が強く乱れたことにより、闘国の方まで感じ取れる状態になった結果、アルクは悪種族という名の獲物に辿り着く。0距離から胴体を撃ち抜かれるほどの致命的油断。毒による負荷、ゼロ達からの逃亡、その二つに考えを集中し過ぎたのだ。狩人が直ぐ側に近づいてると知らずに。


 「ガハッ…!?クソ能無し野郎がァ"!!」


 魂は具現化し、絶望が暗殺悪を満たす。獲物だと思っていた相手は狩人へと変わる。俺は獲物に変わったのだと。


 「やめろッ!絶望を満たすのは俺ではない…!俺ではなくクソ能無しだァァァァァァァァ"!」

 「見つけたぜクソ野郎…!」

 「能無しは俺を怒らせたテメェのことだ…悪種族ッ"!」


 暗殺悪は体勢を崩し地面に倒れるよりも先に、ザックの鉄骨により高く空中に吹っ飛ばされ、ゼロの龍の拳による激で叩き落される。

 身体は消滅し、空っぽの魂のみが残された。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「七大悪だったのか………これで………四つ目だな………」


 魂が取り込まれると力尽きたのか倒れてしまう。


 「ゼロ…!?」

 「わりぃ…俺も…限界だ…」

 「肌の色が二人とも酷い…まさか毒が?国まではかなり距離がある…私の治癒魔術では…!」


 ゼロとザックの命が危ういこの状況、アルクはあの時の家族を救えなかった日のことと重なり恐怖する。だがそのような時に彼女は現れた。


 「治癒魔術なら、私の出番ね!」

ゼロワル豆知識


ゼロの会得した激を使える者は零世界の中で7%ほどしか存在しない。

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