戦士祭
戦士祭参加予選を終えたその日の夜、ゼロ達は夕食を食べに行った。
食べに行っただけならいい。ただ、今夜の夕食は少し…いや、超騒がしい夕食となった。
「「「ゼロの兄貴ィ!俺達をどうか!弟子にしてくれェ!」」」
「………」
どうしてこうなった…?こういうのって大体恐れられて近づかれなくなるんじゃないのか…!?
睨みつけられて喧嘩売られることは無くなった分マシではあるが、これはこれで恥ずかしいからやめてほしい…!
「うわ〜今までにないほど無の表情してる!」
「食事の時ぐらい静かにしたいんじゃないか…?だからその辺に…」
「俺達はゼロの兄貴に言ってんだ金魚のフンがッ!」
「………」
「アルクちゃん…?顔怖いよ?」
アルクは鬼の形相をしていた。今にも銃を突き立てそうな様子であり、このままだと異種族三バカ蜂の巣事件が起こるだろう。
ゼロは深くため息をつき、三バカに話しかけた。
「わかった。お前達を弟子にしてやる。」
「本当か!?ゼロの兄貴ィ!」
「だが一つ言いたいことがある。俺の仲間を悪く言うな。あとうるさい。そしてしつこい。」
「兄貴、それじゃ言いたいこと一つじゃなくて三つですぜ…?」
「とにかくまずは俺の仲間を悪く言ったこと謝れ。」
呆れた表情でそう言うと三バカはアルクに向かって土下座の体制を取り、謝罪をする。
「本当にすいませんでした!アルクの姐さん!」
「姐さん…?あとそんな大袈裟に謝ることは…」
「いいやダメだ!これが俺達の謝罪!行動でもしっかり示す!」
「イゼの姐さんにも不快なとこ見せちまったのをしっかり謝罪する!」
「本当にすいませんでした!」
「反省してるならそれでOK〜!」
「……なぁ、今後はもう少し声も小さくすることはできないか?」
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次の日の朝
「反応が遅いぞ!」
「す、すまねぇゼロの兄貴!」
「お前はもっと考えて攻撃しろ!」
「わかったぜゼロの兄貴!」
「お前は攻撃をしっかり観察して正確に回避しろ!」
「悪ぃゼロの兄貴!」
ゼロは朝からこの三バカに「修行を頼む!」と頼まれた。弟子にすると言ったのは自分の責任だ。これは仕方ない事と認めるしかない。
「そういえば第一回戦はいつなのかしら〜?」
「二日後って聞いたぞ。」
「先に言う!二日後は修行しないからな!」
「そんなことわかってますぜゼロの兄貴!」
そんな会話をしていると、何者かがこちらにやって来る。
「おっ!こんなとこにいた!アンタのこと探したぜ!」
「お前は…確かあの時」
「そうそう!お前の蹴りを止めた拳撃の戦士ザックとは!俺のことだ!」
あの時の鉄骨を腕につけたまま謎のポーズを取っている。
同年代であの攻撃を止めたということもあり、少し気になってはいた。
「俺はゼロだ。よろしくザック。」
「よろしくなゼロ!それにしても良い蹴りだったよな〜!」
「おいお前!気安くゼロの兄貴に…!」
「はーいちょっとうるさい〜!私はイゼ!よろしくザックくん〜!」
「私はアルクだ。よろしく。」
「よろしく!イゼとアルク!アンタらもめちゃくちゃ強そうだな〜!」
明るくて接しやすい人だとゼロは思う。三バカと比較にならないレベルで接しやすい。
「そういえば、俺に何か用でもあるのか?探してたみたいだが…」
「あーそうそう!今回の戦士祭で対戦相手になるかもしれないだろ?挨拶は大事だと思ってよ!」
「そういえば…参加予選の後、本戦の詳細を言っていたな。」
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参加予選終了後のこと。
「よく立ち上がった8人の戦士よ!早速だが、三日後の本戦についての詳細を話す!しっかり聞いておけ!」
「まず、本戦はトーナメント形式で行う!お前達8人の戦士には仲間が二人いるのはご存知だろう!彼彼女らと共に他チームと3対3の試合を行ってもらうのだ!
トーナメント表は第一回戦試合当日に発表するので楽しみに待つといい!
勝敗の付け方だが、相手から二勝勝ち取ったチームが勝ち上がることができる!まずは仲間である二人が順に相手と1対1のタイマンを行ってもらう!そしてリーダーのために勝利を勝ち取るのだ!
同チームの仲間により先に二勝した場合、リーダー戦はどうなるのかだが、これは勝ったリーダー側のチームの勝利とする!仲間の力に頼るばかりの弱き戦士は勝ち上がる資格なぞ無い!
これで本戦についての説明を終える!理解したのなら去れ!そして三日後のために力をつけろ!」
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「リーダーの勝利が勝ち上がる条件…イゼとアルクの為にも、一度の敗北も許されないな。」
「私達のどっちもが負けても、ゼロが勝てば勝ち上がれるのなら優勝は手に入れたも同然ね!ゼロは最強に強いんだから!」
「まぁ、私達も負けるつもりは無いけどさ。」
「俺のチームも負けるつもりはねぇぜ!何せ俺には頼れる弟と頼れる妹もいる!いざっていう時は応援されりゃ勝利確定だ!」
「妹と弟がいるのか。」
「おうよ!俺含めて8人兄弟姉妹!勝って国王から遊んで暮らせるほど大金貰うつもりだぜ!」
「そうか…なら、お互い負けてられないな。お互い良い戦いをしようぜ。」
「おうよ!お前達も全力でな!ゼロ!」
二人は微笑み拳を重ね合う。
そして二人の眼は戦士と呼ばれるに相応しいほど闘志を感じる眼をしていたのだった。
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第一回戦試合当日
「ついに第一回戦の始まりね〜!」
「やるならもちろん、目指すは全勝だな。」
「あぁ、全力で行くぜ!」
戦士祭の本格的な幕開けである。
ゼロワル豆知識
零世界には七つの巨大な大陸があり、ゼロの物語はその中の一つの大陸での物語




