無謀な戦い
ゼロは怒りで冷静な判断はできない状況に陥っていた。
目の前にいる七大悪を今すぐにも殺す。その事しか考えていなかった。今の自分の実力で七大悪に敵うのか?そんな疑問すら浮かばないほどに、ゼロは冷静さを失っていた。
「おいジジイ。お前は死体を処理して引っ込んでろ。」
「御意。こちらの死体は肉片残さず我が虫が処理致します。」
虫悪は速やかに死体を全て羽虫により回収させた後、闘技場を去る。
強悪とゼロ。この二人のみが闘技場に残る。
「なんで国民を苦しめる…無実の人をなんでそうも軽々しく苦しめる!?」
強悪は笑みを浮かべる。そしてこう言った。
「娯楽だよ。俺は殺し合いをみるのが好きだ。死の間際に見せるあの必死な表情が俺の闘志を最高に滾らせるんだよ!」
ゼロは理解ができなかった。そんな理由で?自分の娯楽のため?ふざけんなよ。
「テメェはそんな理由で無実の人を苦しめたんだな…容赦なく殺せそうだ。」
自身の龍魔力で龍刀を創り出す。そしてゼロは…
怒りに身を委ね強悪を向かって走りだす。
「テメェみたいなヤツが…!生きていていい理由はねぇ!!」
強悪の目の前まで行くと龍刀を振り下ろし喰らえば浅い傷では済まない一撃を負わせようとする。
だが、強悪は余裕の笑みを浮かべ、龍刀が強悪を斬るより先に、拳で龍刀を砕き折る。
「クソッ…!」
ゼロは龍刀が砕き折られても動揺はせず、拳に龍魔力を込め、強悪の顔面を殴り飛ばす。
「重い一撃とは言えない弱っちぃ一撃だな。」
強悪はそう言うとガキの相手をするかのように魔力すら込めてない拳でゼロの顔面を殴り飛ばす。
ゼロは勢いよく闘技場の壁まで吹き飛ばされる。
「ッ…!ガハッ…!?」
口から血を吐き出す。だがゼロはすぐに体勢を立て直し、強悪へと向かっていく。
龍刀を創り出し、それと同時に龍の炎を纏わせる。龍刀を握る拳も龍の炎を纏いゼロは強悪を焼き尽くす怒りの炎と化す。
「絶対に…!今お前を…!殺すッ…!」
龍の炎を纏った龍刀は強悪に振り下ろされる。
強悪は拳で龍刀を受け止め砕き折ろうとするが、先程と違い容易く砕き折られる気配はない。
「いい!ならば俺は魔力を込めるとしよう!」
拳に魔力が込められた瞬間だった。先程まで拳の勢いに負けず耐えていた龍刀は一瞬にして砕き折られた。そして魔力が込められた拳はその勢いでゼロをおもいっきり殴り飛ばした。
「グッ…!?ガ…ハァッ…!?」
腹に重い一撃を叩き込まれ血を吐き出すのが止まらなくなる。
「まだ…俺は…戦える…」
強悪は呆れた表情をしながらゼロに近づくと拳に魔力を込めトドメの一撃を叩き込もうとする。
「ガキが俺を殺そうとするのが間違いなんだよ。自分の身の程を弁えろよ雑魚ガキが。」
ゼロは意識が遠のき身体を動かせない。戦闘にもならなかった。拳を二回叩き込まれただけでこの様。七大悪との力の差に悔しく思いながら怒りで満ちた眼で強悪を見つめる。その時だった。
強悪は突然紅い炎に包まれる。
「なんだ!?この紅い炎!?」
ゼロは龍の炎を使った覚えはなかった。ではこの炎は?
そう思っていると一瞬にしてゼロは何者かに身体を抱えられ闘技場から連れ出される。
「なんで一人で先走っちゃうかなぁ!?もう!」
「イゼ…なんで…俺を抱えて…」
「ゼロが一人で七大悪に挑む大バカだからだよ!」
そう言われるとゼロは意識を失った。