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ゼロワールド  作者: kaito
二章 蒼瞳の少女編
16/43

優しさと冷たさ

 幽霊悪、狼悪を討伐した翌日の朝。


 闘国行きの辻馬車がこの村に来るのが残り3日後となり、この村やルピナスとの別れも近づいてきた。


 「今日からお仕事また頑張らなくちゃ…!」

 「体調は大丈夫なのか?」

 「はい!もうすっかり元気になりました!」

 「ルピナスちゃんやる気満々だね〜!私達もお仕事のお手伝い頑張るよ〜!えいえいお〜!」

 「朝から調子が良いな。」


 宿は全焼してしまったが、村の人達の提案で寝床にこの村の空き家を一つ貸してもらえることになった。

 ルピナスのおじいさんは一命を取り留め、今は空き家のベットでゆっくり休んでもらってる。


 「おじいちゃんが動けない分、今日からゼロお兄ちゃん達の朝食から夕食は私が頑張って作ります!」

 「お〜!ルピナスちゃんの手作り〜!絶対美味しいじゃん〜!」

 「そのためにまずは今晩の食材探しですね…!朝食は村の皆さんにご馳走させてもらいましたが、何度もさせてもらうわけにはいきませんからね!」




 そしてその日の夕食の時間…焦げた鹿の肉、ギトギトの野菜スープ、フニャフニャな果物デザートが出てきた。


 「………」

 「これは…また…」

 「だ、大事なのは味よ味〜!いっただきま〜す!」


 イゼはスープを飲んでみる。すると…


 「お、美味しいよぉ…!」


 涙目で必死に作り笑顔になりながら飲んでいる。


 「無、無理はしないでください!」

 「…うん。これは調味料の調整をミスってるな。」


 ゼロもスープを飲むと、即こうなった原因を答える。


 「ごめんなさい…二人に美味しい夕食を作れませんでした…」

 「気持ちだけでも十分だ。俺達のために頑張って作ってくれたことには変わりないだろ?」

 「そ、そゆこと!」


 イゼは冷や汗が凄いことになってる。

 そしてゼロはとある提案をする。


 「明日、俺と一緒に朝食から夕食を作ろう。これでも昔はよく母さんの夕飯の支度を手伝ったんだ。」

 「いいんですか?」

 「ルピナスが料理上手くなれば、おじいさんが元気になったとき今後一緒に料理をできるようになったりするだろ?それに、おじいさんはルピナスの美味しい料理を食べてみたいはずだ。」

 「ゼロお兄ちゃん…ありがとうございます!」


 こうしてルピナスは料理を教えてもらうことになった。




 次の日の夜


 「う、美味ぁ〜!」

 「ルピナスの作った料理だ。俺は少しコツと隠し味に良い調味料を教えただけだから、ルピナス一人で完成させたと言ってもいい。」

 「そんなことありません。ゼロお兄ちゃんが分かりやすく色んなことを教えてくれたおかげです!イゼお姉ちゃんに美味しいって言ってもらえて良かった♪」

 「毎日食べたいくらいだよ〜!」

 「明日はルピナスと過ごす最後の夜だ。イゼも一緒に豪華な夕食を作るの手伝ってくれ。」

 「豪華!?手伝う手伝う手伝う〜!私もできる女ってとこを見せてあげましょ〜!」

 「とっても頼もしいですね…!」


 三人はこのあとも団欒を楽しんだ。

 ふと、ルピナスは少し寂しげな表情でゼロとイゼに何かを伝え始める。


 「私はゼロお兄ちゃんやイゼお姉ちゃんと過ごしたこの短い日々を、一生忘れないと思います。ママ、パパ、私を含めた三人で過ごした日々が蘇ったような、そんなそんな1週間になりました。もちろん泣いたり傷ついたりした出来事もありましたけど、それ以上にいっぱい幸せをもらいました。ゼロお兄ちゃんとイゼお姉ちゃんには、感謝してもしきれないです。」


 ルピナスの想いを聴き、ゼロとイゼは心から嬉しく感じた。


 「俺もルピナスと過ごしたこの1週間、大変なこともあったがとても楽しい日々だった。もう二度と味わえない日々だと思っていたから…」

 「なーに言ってるの!私達が平和を取り戻したらまたルピナスちゃんと楽しくご飯食べたり今度はたくさん遊んだりしようよ!これから先一生会えないなんてこと無いんだから!」

 「そうだな…平和を取り戻したら、またこうして楽しい日々を過ごしたいな。」


 その言葉を聴き、ルピナスは嬉しさで心がいっぱいになる。


 「約束です…!また、いつの日か一緒に!」

 「あぁ!」

 「もちろんだよ!」


 三人はこうして平和を取り戻したときまたこうして共に楽しい日々を過ごそうと誓う。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 次の日、午後5時頃、ゼロとイゼは今晩の豪華な夕食に必要なモノを村の外で調達しに行っていた。ルピナスはその間、家の中で料理の準備から家の中の内装を飾り付けなどしていた。


 「ゼロお兄ちゃんとイゼお姉ちゃんとパーティー…楽しみだな♪」


 そのようなことを言っていると、家のドアを叩く音が聞こえる。


 「はーい!村の人かな…?」


 扉を開けると白い布の服で身を纏ったボサボサ髪の死体のように白い肌をした男が立っている。


 「こんばんハ。お嬢チゃん!」

 「アナタは誰…?」




 午後6時頃、ゼロとイゼはルピナスの待つ家に帰ってくる。


 「ただいま、ルピナス…っていないな。」

 「お手洗いにでもいって…ッ!?ゼロ!」


 突然切羽詰まったような声でゼロに話しかける。


 「どうした?イゼ」

 「この家から…悪種族の魔力の残りを感じる。それも七大悪クラス!」

 「本当か!?それじゃあルピナスは!?」

 「もしかしたら…七大悪に連れて行かれたかもしれない。」

 「意識を集中したら確かに魔力を感じた…この魔力の残りは外に続いているな。これを追えばルピナスのとこまで…!」


 すると突然村の出入口付近から何か叫び声が聞こえる。


 「なんだ!?」

 「村の出入口からよ!行きましょう!」


 出入口付近に行くと、異形の化物の大群が押し寄せてきていた。


 「あぁっ!?よせ!来るな!やめろ!あぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「いやっ!やめてっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」

 「ママぁ!パパぁ!助けてぇぇぇ!」

 

「■■■■■ーーー!」


 異形の化物は咆哮を放ちながら、村人達を無残にも食っていく。


 「こんな時にこんな怪物まで…!」

 「イゼ!ルピナスは俺が助けに行く!ここ頼めるか!?」

 「えぇ!ここは私がなんとかする!ゼロはルピナスちゃんを助けて!」


 イゼがそう言うとゼロは頷き、魔力の残りを辿りながらルピナスが連れて行かれたであろう場所まで向かう。




 暫くすると、廃れた工房のような場所にたどり着く。壁は至る所穴が空いており、人気が無い。

 だが、ここから強い悪種族の魔力を感じた。おそらくここが本拠地だろう。


 「おい!いるんだろ悪種族!お前が連れ去った少女を助けに来た!」


 すると奥から人の皮で作られたコートを着たボサボサ髪の死体のような白い肌をした男が出てくる。


 「ようコそ!少年!私は七大悪四位美悪!私ト素晴ラシイ美を!鑑賞死ましョう!」

ゼロワル豆知識


異形の化物は人間の皮膚や臓器、獣や魔獣の脳や心臓、爪などを組み合わせて作られている。

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