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ゼロワールド  作者: kaito
二章 蒼瞳の少女編
14/43

想いが伝わるのなら

 ゼロ達がこの村に来てから四日目、この日はゼロとイゼの二人がこの村の外に潜む悪種族について調査をしていた。


 「今回の件が幽霊を扱う悪種族の仕業だった場合、潜むならどのような場所にするだろうか…」

 「私は墓場だと思うわ。死者の魂の溜まり場だからね。」

 「魂の溜まり場…まさか、自ら殺して得た魂を幽霊に変えるだけでなく、既に死んだ者の魂まで墓場から得て幽霊にしてるっていうのか?」

 「悪種族よ?そういうことはするに決まってるじゃない。」


 ゼロは改めて思う。悪種族は己の利益のためならどんな残虐なことでも行うのかと。この世界の者達と分かり合おうという考えはなかったのか。そもそも悪種族に助け合い平和に生きるという考えは存在するのか。


 「悪種族はなんで…こんなにも…」




 午後5時頃、二人は悪種族が潜んでいるであろう場所の目星を付け、今夜悪種族討伐を決行することを決意。

 そして、今夜の悪種族討伐に向けて部屋で準備していた時だった。


 「ゼロお兄ちゃん、イゼお姉ちゃん、いますか?」

 「ルピナス?体調の方は大丈夫なのか?」

 「ルピナスちゃん!お兄ちゃんとお姉ちゃんに何か用かな〜?」

 「体調の方は大丈夫です。ゼロお兄ちゃん。えっと、二人にお願いがあって来ました。」

 「お願い?」

 「いいよ!何でも言って!」


 ルピナスは真面目な顔で二人に言う。


 「私も…今夜ついて行っていいですか?」

 「今夜…悪種族討伐のことを聞いたのか。悪いがダメだ。ルピナスの命を危険に晒すことになる。」

 「ルピナスちゃん、お兄ちゃんとお姉ちゃんはルピナスちゃんの命の保証はできないわ。」


 二人は厳しめの声色で話す。けどルピナスは、引き下がらなかった。


 「ごめんなさい…実は、お兄ちゃんとお姉ちゃんが村の外に行ったとこをこっそりついて行ったんです。そしたら、今回の件が悪種族と関係していることを聞きました。もし、あのママとパパの幽霊が本当に悪種族の仕業なら、私はどうにかしてママとパパを悪種族から解放してあげたいんです。私はママとパパにもう楽になっていいって伝えてあげたいんです。」


 ルピナスは本気だった。ゼロ達は難しい表情で悩みに悩んだ末、答えた。


 「わかった…けど、本当に危なくなったら俺達を見捨ててでも逃げろ。それを約束してくれるなら連れて行く。」

 「本当は連れてくべきじゃないんだろうけど、あんな顔でお願いされちゃったらね。」

 「っ…!ありがとうございます!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そして、午後21時頃


 「二人とも、足元には気をつけろよ。」

 「大丈夫大丈夫〜!」

 「はい!」


 三人は村の外にある洞窟をイゼの炎で照らしながら歩いていた。奥へ進んでいくと墓場があり、ゼロとイゼはそこに悪種族がいると目星を付けたらしい。


 「それにしても、寒いわね。私の炎が近くにあるのにここまで寒くなるなんておかしいわ。」

 「奥に進むほど寒さが増してる…墓場にもうすぐ着くかもしれない。」

 「待ってて…ママ…パパ…」


 更に奥に進むと、墓場に辿り着く。

 そしてそこにはルピナスが森で出会ったあの男がいた。


 「やっぱり…この人がママとパパを。」

 「来るのが遅い。俺は夢の中で言ったはずだ。両親がお前を呼んでいると。」


 ゼロは龍刀を創り出し幽霊悪に向け、問いかける。


 「答えろ悪種族。お前はあの村の人達に危害を加え、この子に幽霊で襲わせたか?」


 幽霊悪は黙ったまま。答えるつもりはないらしい。


 「答えるつもりはないんだな?」

 「お前には要は無い。ルピナスに要があるんだ。」

 「ルピナスちゃんに手を出させないわ。お兄ちゃんとお姉ちゃんがこうして前にいる限りはね!」

 「ルピナス、少し下がっててくれ。」

 「気をつけてください…ゼロお兄ちゃん、イゼお姉ちゃん!」


 幽霊悪はため息をつきながら、辺りに大量の幽霊を出現させる。


 「人間が…お前達はとことん不快で醜い道具だ。」

 「俺達はお前なんかの道具じゃねぇ…生きるためにお前達悪種族に必死に抗う人間だ…!」


 そう言うと幽霊達を掻い潜り、急接近で幽霊悪に近づく。


 「元凶であるお前さえ殺せば、お前に幽霊にされた魂達も解放されるはずだ!」

 「ほう。こんなにも速く動けるとは、人間も少しは進化してるのか。」

 「私のことも忘れないでよ!」


 いつの間にか幽霊悪の背後まで移動しており、炎を放とうとしている。

 ゼロは龍刀に炎を纏わせ刃を幽霊悪に振り下ろす。


 「はぁ…仕方ない。醜い魂共、この二人を止めろ。」


 すると二人は身体を思うように動かせなくなる。

 周りをよく見ると、先程までいなかったはずの幽霊達が二人の身体を強く掴み、身動きを取れなくしている。


 「なっ…!?離せ…!お前達は解放されるんだぞ…!」

 「無駄だ。この醜い魂達は俺に逆らうとどれほど恐ろしい終わりを迎えるか理解している。」

 「ちょっとちょっと…!何この幽霊の数…!流石に身動きが取れないって…!」

 「ゼロお兄ちゃん!イゼお姉ちゃん!」


 幽霊悪はマヌケを見るような目でゼロを見つめ、そして近づき話し始める。


 「お前、身体に七大悪の魂を二つも取り込んでいるのか。」

 「だったら…どうした!」

 「七位と六位…コイツらは俺より弱い。」


 その言葉を聞き、ゼロは表情が一層険しくなる。

 あの七位と六位より強い。つまり、七大悪五位から一位の誰かの可能性があるからだ。


 「ならお前は…七大悪のうちの誰かなのか!?」

 「はぁ?七大悪とかいうもん興味はないさ。ただ、知識不足のマヌケに教えてやる。俺達悪種族の中で七大悪になるのは自主的に立候補しその中から選ばれたヤツだ。別に俺らのトップがその称号に見合ったヤツを見つけ決めるわけじゃない。俺みたいに己の欲望を満たすためにひっそりと人間共を襲う強者もいるんだよ。そういえば…今の七大悪は七世代目だったな。それとまさかとは思うが、その実力で今の世代の七大悪全員を殺すつもりか?理想だけは一丁前だなぁおい!」


 手のひらの上で踊るモルモットを見るかのような目でゼロを嘲笑いながら煽る。


 「ゼロをバカにするな…!アンタみたいな人を苦しめ嘲笑うようなヤツよりよっぽど凄いんだから…!!」

 「はっ、マヌケの仲間はマヌケか。さて、邪魔者には今からルピナスの末路を見てもらおう。」


 幽霊悪は勝ち誇った笑みを浮かべルピナスに近づく。

 ゼロは身体に魔力を込め幽霊達を引き剥がそうとするが効果は無く。

 イゼは手から炎を出そうとしても故障したかのように炎が出てこない。


 「お前達…!頼む…!離してくれ…!」

 「なんで炎が出てこないの!?」


 幽霊悪は二体の幽霊を出す。そして命令する。


 「さぁ、ようやくあの純粋に満ちた魂を俺の幽霊にできる。お前達はルピナスの両親だ。こちらに連れて来てやれ。」


 ルピナスの両親の幽霊がルピナスに近づく。


 「ママ…パパ…やめて…お願い…ゼロお兄ちゃんとイゼお姉ちゃんを助けて…!」


 両親の幽霊は動きを止める。


 「おい…何をしている。」


 両親の幽霊は突然幽霊悪の方に向かい、力強く掴み始める。


 「なっ!?貴様らァ!何をしている!恐ろしい終わりを迎えたいか!?」


 ゼロとイゼを掴んでいた幽霊達も何を思ったのか、幽霊悪を掴みに掛かる。


 「クソッ!ふざけるな!お前達は逆らった醜い魂がどうなったかこの目で見たはずだ!今すぐ!どけぇ!」


 ゼロとイゼは解放される。


 「ルピナスの想いが伝わったのか…!」

 「ゼロ!今がチャンスよ!私が炎で一気に弱らせるから、魂ぶった斬っちゃって!」


 イゼは高火力の炎を放ち、幽霊悪を焼き尽くす。


 「ガァァァァァッ!?」


 幽霊悪の魂が具現化される。幽霊達はイゼの炎を受けておらず、幽霊悪を強く掴んだままだ。


 「お前は所詮、幽霊達の力の上で成り上がってきた弱者にすぎない!今まで苦しめてきた魂の報いを受けろッ!」


 炎を纏った龍刀で幽霊悪の魂を斬る。


 「グガァァァァァァァァァ!?ふざけるな!醜い魂が!俺は貴様を許さない!絶望を迎えろゼロォォォォォォォ!」


 幽霊悪の身体が塵となり消えていく。

 解放された魂は生前の姿となり、光となって消えていく。


 「魂達が…光になってく…」

 「みんな笑顔で消えていくわね…私達、感謝されているのかしら。」


 ふと、ルピナスの目の前に二人の魂が近づく。ルピナスの両親だ。


 「ママ…パパ…」


 両親の魂は優しい笑顔でルピナスを見つめている。

 ルピナスは涙を流し、声を震わせ伝え始める。


 「私…もう一人でも大丈夫だよ。ママとパパが心配しなくてもいいぐらい成長するから。いつか村でいっぱい頼られて、感謝されて、笑顔にさせることができる人になる!私の憧れる、ゼロさんやイゼさんみたいなるから!」


 ルピナスはそう言うと、ママとパパに笑顔で伝えた。


 「だからもう…安心して。二人は先に、天国で幸せでいてね。」


 ママとパパは、ルピナスに近づき優しく抱きしめながら光になって消えていく。そして最後に伝えた。


 「愛してるわ。ルピナス」

 「愛してるぞ。ルピナス」

 「幸せに生きてね)幸せに生きてくれ」


 そう言うとママとパパは完全に光となり消え去った。


 「ママ…パパ…ありがとう…」

 「ルピナス…」

 「…ルピナスちゃん、村に帰ろっか!おじいさん達がきっと起きて待ってるよ!」


 ルピナスにそう言うと、優しい笑顔で手を差し伸べる。

 ルピナスは差し伸べられた手を繋ぎ、立ち上がる。


 「想いを伝えられて良かったな。」

 「ママとパパも、きっとルピナスちゃんの想いを聴いて喜んでるわ!」

 「ありがとうございます…ゼロお兄ちゃん、イゼお姉ちゃん!」

少女は一歩、成長する

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