表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロワールド  作者: kaito
二章 蒼瞳の少女編
13/43

私を呼ぶ声

 誰かが呼んでいる。


『……ピ…ナ………』


 遠くで誰かが呼んでいるけどよく聞こえない。もう少し近づいてみようかな。


『ル…ピ……ナ………』


 あれは…ママ?パパ?


 「ママとパパだ…!私に会いに来てくれたんだ…!」


 ママとパパの元に走っていく。そして…目の前には血に塗れた二人がいた。


『ルピナス、アナタモオイデ』



 「っ…は…!」


 目を覚ます。ルピナスは酷い悪夢を見た。ものすごい汗をかいており、鼓動も激しく動いている。


 「大丈夫か?ルピナス」

 「すごい汗…私、タオルと替えの服持ってくるね!」

 「待ってください…ゼロお兄ちゃん…イゼお姉ちゃん…私…その…」


 私のせいで迷惑をかけてしまった。私があの時倒れたせいだ。二人に謝らなきゃ。


 「あの…私…」

 「迷惑を掛けたなんて、思わないでくれよ。」

 「え…?」


 なんでそんなに私のことを思ってくれるのだろう。短い日数しか関わりのない私に。


 「なんで私に…会って間もない私に…こんなに優しく…」

 「そんなのは関係ない。俺は苦しんでたり助けが必要な人がいれば、助けたいだけなんだ。」

 「ゼロはお人好しだからね〜!私はどちらかというと、可愛いくて頑張り屋のルピナスちゃんに元気になってほしいだけだよ!」


 あぁ…なんて優しい人達なんだろう。こんなに優しい人達が本当にいるんだ。


 ルピナスは涙を流す。本当はとても怖く辛かったのだから。二人の優しさに安心しきったのだ。


 「っ…ありがとう…ございます…」

 「…疲れてお腹空いただろ?下でおじいさんが夕飯を用意してくれている。一緒に食べに行こう。」

 「美味しいものを食べれば気分もスッキリするからね〜!」

 「うん…一緒に食べます…!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 夕食を食べた後、ルピナスは疲れたが残っていたのか部屋に戻り就寝。ゼロとイゼは老人に呼ばれ話し合っていた。


 「今日は本当に助かった…あの子に万が一のことがあれば、私はあの世にいる二人に顔向けができない…」

 「あの世にいる二人…?」

 「ルピナスの両親のことじゃ。過去に村の外で仕事を行ってた時に、不運にも悪種族に襲われ命を落としてしまったんじゃ。死体一つ残さずな。」

 「死体が無いなら、まだ何処かで生きてるのかもしれないじゃない!」

 「それは無い。何故なら、私は…」




 今から二年前


 老人は真夜中に一人でルピナスの両親の死体を探していた。


 「せめて…土に埋めてやらんと…あの二人にはたくさん恩があるんじゃ…」


 暗い森の中をランタン一つで明かりを照らしながら歩き回る。

 ふと、奥に人影が見えた。


 「なんじゃ…?冒険者か…?」


 その人影は、ルピナスの両親だった。


 「生きていたのか…!お二人とも…!そんなとこで何を…!」


 近づくにつれ、違和感に気づく。二人は青く透明になっていた。人ではなく、幽霊を見ているような。


 「なっ…!?幽霊…!?」


 二人は老人に気づいたのか、先程までの生前の表情から一変し、骸骨のような顔になり、老人の元に近づき始める。


 「く、来るなッ…!」


 老人は必死に村の方へと戻った。ランタンの明かりを照らしながら。死から逃げた。




 「それが、私が二人の死を確信した瞬間じゃった。」

 「幽霊…悪種族…ゼロ、もしかしたら今回のことは悪種族が関わっているかもしれない。」

 「確かに、ルピナスが森で倒れる寸前、何かから逃げていたかのような息切れをしていた。普通に走るだけならあそこまでなる前に息を整えるはずだ。」

 「まさか…二年前から村の付近に、悪種族が住み着き、あの幽霊はソイツのせいだと言うのか…!?」

 「可能性はあるわ。悪種族は一度見つけた餌場を完全に飽きるまで襲い続ける。」

 「なんということじゃ…ルピナスの両親の幽霊が…ルピナスを襲ったかもしれないというのか…」

 「ルピナスも…悪種族のせいで…両親を…」


 怒りで手が震える。自分と同じように両親を奪われた人がいるということに。ゼロはある決心がつく。


 「俺がルピナスと…ルピナスの両親を…村の人達を苦しめる悪種族を殺ります。」

 「まぁ、そうなるよね〜!」

 「そんな…もしもあなた達に何かあれば、ルピナスは…」

 「大丈夫です。死ぬなんてこと、イゼが許さないんで。」

 「よーくわかってるじゃ〜ん!」

 「お二人とも…ありがとうございます…どうか無事で…」

 「「はい!」」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 同時刻 ルピナスの部屋


 「っ…!」


 お前を呼んでいるぞ

 両親がお前を招いてるぞ

 苦しみから解いてほしいと願っているぞ


 「お前を呼んでいるぞ。ルピナス」


 「っ…はっ!?」


 村から少し離れた洞窟に墓場がある。夢の中で、あの森で見たあの男がその場所にいた。そして、私を呼んでいた。


 「ママ…パパ…私が助けなきゃ。」

ゼロワル豆知識


ルピナスが仕事をする理由は、少しでも両親が安心するよう村のために頑張れる頼れる人になりたいから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ