表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/116

第79話 狂気の来襲

 サキュラの悪魔も全滅し、静寂が訪れた都。

 互いに支え合って歩いてきた2人と合流した。


「ハァ、ハァ......」


 息切れが止まらない。

 手が小刻みに震えている。


 緊張が解けたら、力が抜けた。

 俺は無造作に地面に座った。


 しばらく立てそうにない。


「お2人とも、ちょっと待ってくださいね。魔力が回復したらすぐに治しますから」


 ペタは俺たちの間であたふたしている。

 外見は自分が1番怪我をしているのに、俺たちを先に回復させるつもりらしい。


 今はそれがありがたい。


「とりあえず、それまで止血しないとな」


 節々に小さな穴が開いている。

 血は止まりつつあるが、放っておく訳にも―――




「妾は......」


 後ろから声がした。

 サキュラの声だ。


 咄嗟に振り返ると、奴の頭がぽつんとあった。


 頭の上側は砕け散り、左目と口だけが残っている。

 まだ喋れるのか。


「妾はもう、死ぬ」


「ククッ」という笑いが耳を撫でた。

 目が離せない。

 体も動かない。

 シュゼはボロボロの体でトドメを刺そうとしているが、俺と同様動けていない。


 奴の遺言(はなし)は続く。


「2ヶ月前、妾はある憤怒級サタンと戦った。自分本意な奴での、その時妾は魔術で奴を民としたが、さぞ屈辱だったじゃろう」


 何の話だ。

 何のつもりだ。


「じゃが奴は完全には支配できなかった。遠くへ押し退けておくのが精一杯じゃ」


 今もなお、サキュラの頭は溶け続けている。

 黒い液体(じぶん)が口の中に入っても、目が液体に浸かっても、話は続く。


「妾が死ねば、民は妾の民ではなくなり、己の意志を......取り戻す......」


 ......まさか。


「今頃ここへ向かっておる」


 まずい。

 少なくとも、今の状況では絶対に勝てない。


「貴様らは死ぬ」


 最期、ドロドロに溶けた口は、ニヤリと笑っているように見えた。




 ▶▷▶▷▶▷




 一気に胸騒ぎがした、次の瞬間。

 都の端の方で、轟音がした。


 この大きな魔力。

 奴が来た。


「もう来たのかよ......シュゼ、気配消せ」


「分かってる」


「ペタも魔力消せるか?」


「何とか頑張ってみます」


「よし。じゃあ早いとこ隠れよう。ぐっ」


 疲れ切った体を無理やり動かし、近くの瓦礫まで這う。


 体の節々が痛む。

 間接を動かす度、自分の顔が苦痛に歪むのがよく分かる。


「ふっ、くっ!」


 サキュラの口調からして、奴はサキュラよりも強い。

 さらに今、俺たちは体力を消耗している。


 戦えば、見つかれば死ぬ。




 ▶▷▶▷▶▷




 隠れた後、少し経った頃だった。


「―――あぶり出しましょうか」


 奴の奇怪な声が響く。

 そして直後、魔力は暴れる。


 瓦礫の間から外を覗いたとき、奴が手をかざしているのが見えた。

 そしてその手に向かって、魔力が集まっていくのが見えた。



 チュドォォォォオン!!!



 何かが青く光った。

 純粋な天使なら、そう思っただろう。


 そうとしか見えないのだから。


 だが俺には分かった。


 あれは、魔力が撃ち出されたのだ。

 ただ単純に、シンプルに。


 破壊力は凄まじかった。

 瓦礫と化していた建物は、塵と化した。


「早く出てきなさい。ワタシシが隠れ蓑を壊しきる前にね」


 次から次へと、瓦礫は消えていく。

 魔力が撃たれる度に、心臓が締まる。


 地面が揺れる。

 空気が揺れる。




「......おや」


 破壊が止まった。

 続いて奴の足音が聞こえてた。


 近付いてくる。


 気付かれた?

 いや、大丈夫なはず。

 きっと、サキュラの死体に目が留まったんだ。



 足音が止まった。


「黒の色石。そうですか。あいつは死にましたか」


 どうでもよさそうな、かほどの興味もないことが、声から簡単に分かる。


「そしてこれは......奴が保有していた天魔界鏡でしょうか? フフフ、では遠慮なく頂きましょう」


 話からして、奴はサキュラに報復に来た。

 ならもういいだろ。

 早く帰ってくれ。


「―――ところで」


 そう思ったときだった。



「あなたが、この女を殺したのですか?」



 奴の視線が針のような視線が、こっちを向いているのが分かった。

 見えなくとも分かる、威圧感。


 そして、その空気に圧倒されていた時。




「......は?」


 口から、情けない声が漏れた。

 俺の真横。

 爪1枚分ほどの箇所が、えぐれて消えた。


「......」


 視界の奥に、奴がいた。

 手をこっちに向けて、そこに立っていた。

 威嚇には充分すぎた。



「あなた方が殺したのですか?」



 俺は無言で頷いた。

 すると、奴の声色はみるみる上機嫌さを隠さなくなっていった。


「それは凄いですねぇ。ただの野良悪魔のくせに、仮にも憤怒級サタンのあの女を倒すとは」


 笑っている......ように見える。

 不気味な笑いだ。

 耳の奥を突くような、そんなもの。


「特別に殺さないでおいてあげましょう。ワタシシは今機嫌がいい。

 フフ。これでまた、ワタシシはザーナ様に褒めて頂ける......! フフ、フフフ、ハハハハハ!」


 狂っているようにしか見えなかった。

 奴は頬を赤らめ、愉悦に満ちた表情で、翼を出して飛んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ