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第77話 女王の戦場

 


 ―アルタ―



 凄まじい速度で放たれた塊。

 俺が横へ飛び退いた直後、グチャリと音を立てて飛び散った。


 今の攻撃は、魔術か。

 このまま遠距離で攻められると厄介だ。


「くっ! ふっ!」


 考える間も、肉塊は飛んでくる。

 速度が少しずつ増している。

 まずい。

 このままでは避けきれなくなる。


 縦横無尽に飛んでくる肉塊。

 回避と防御に専念しつつ、タイミングを見計らう。


 ......今!


 飛び交う肉塊の間を縫う。

 1度、どこかに隠れよう。


 闘技場の外に行けば、隠れる場所はいくらでもある。


「逃がさんぞ」


 後ろから声が聞こえた。

 闘技場の入り口が、悪魔の体で覆い隠されていく。


 だが関係ない。

 飛び越えてみせる。


「ふっ!」


 観客席との仕切りを経由。

 その勢いでさらに跳び上がった。

 屋根を越え、闘技場の外に出る。


 悪魔が来る前に、適当な瓦礫の裏に入った。



 瓦礫の向こう側の魔力を探りつつ、考える。


 俺は魔力を持っていない。

 だから、姿を隠すこと自体は簡単だ。

 恐らく悪魔は相手を視覚で見ると同時に、魔力で探っている。


 だから俺は、気配を消して背後などから攻めれば勝機はある。


「......」


 そして、もう1つ。

 サキュラは、俺を純粋な天使だと思っている。


 俺が人間とのハーフであること。

 つまり俺が魔力を感じられることを知らない。


 これを利用できないだろうか。


 今は、攻めに転じるには少し早いと思う。

 恐らく、奴の魔術は、肉塊を飛ばすだけではない。

 攻撃手段は他にもあるだろう。


 魔術で攻撃するなら、魔力が動くはずだ。

 その動きを覚えれば、次の攻撃も予測できる。


 かといって、どう探ったものか......







「見つけたぞ」


 直後、俺が隠れていた瓦礫が吹き飛んだ。


「ぐっ!」


 俺も吹っ飛ばされ、地面をバウンド。

 空中で回転して着地する。

 背中に痛みが走った。


 出血は......まだしていない。

 だが時間の問題だ。

 持久戦は不利だ。


「全く、戦場を広げおって。またも都が壊れてしまうではないか」


 翼を生やしたサキュラが、頭上から見下ろしている。

 冷たい眼光が降り注ぐ。


「まぁ、また直せば良いわ」


 そう言い、サキュラは腕を振りかぶった。

 闘技場の中から、悪魔が次々と駆け出てくる。


「ほれ。捌いてみい」


 軍勢が迫りくる。

 俺は後ろを向き、走り出した。


 とても、あの数の怠惰級は1人で相手取れない。

 建物の死角も利用しつつ、軍勢から逃げる。


 どうすればいい。

 接近戦を仕掛けようにも、サキュラは空中に鎮座している。


 どうにかして引きずり下ろしたいが、悪魔の軍勢が邪魔だ。

 このままじゃ、体力が尽きて終わる。


 一か八か、やるか。



「む?」


 サキュラが怪訝そうな顔を浮かべるが、無視。

 俺は建物の上に登った。

 都の建物は、三角の屋根のものはほとんどない。

 上を走り、来た道を戻る。


 サキュラに近づいていく。


「ガあッ!」


 足に力を込める。

 踏み込み、屋根が崩れる勢いで跳んだ。


 魂気を拳へ。

 狙いは奴の頭!


「ぬるいわ」


 防がれた。

 が、サキュラは動いていない。


 黒い手が、俺の拳を止めていた。


 下で俺を追いかけてきていた、悪魔のうちの1体だった。

 跳んできたというのか。


「......!」


 悪魔が生気のない目で睨み、放たれる拳。


 バランスのおぼつかない体で俺は払おうとするが、失敗。


 俺は地面に叩きつけられ、煙が上がる。


「がふっ!」


 なるほど。

 サキュラの魔術は、恐らく悪魔を操る力だ。


 そして、今俺を殴った悪魔以外のやつは静止している。


 それを踏まえると、複雑な動きをさせるには数を限定する、といったところか。


「......!」


 無言の悪魔が再度拳を叩きつける。

 俺は軌道から体をずらす。


 真横を通るその腕を掴み、サキュラへ投げ返す。


「オラッ!」


「ふん」


 サキュラは空中で動いて回避。

 投げた悪魔は、そのまま後方へ消えていった。


 だが俺は見た。

 サキュラは、投げた悪魔を目で追っていた。


 回避のタイミングも、ギリギリに見えた。


 やはり、奴は近接は不得意だ。


「はあっ!」


 着地後、すぐにまたサキュラへ向かって跳ぶ。

 奴が空中でバランスを取り戻す前に、距離を詰める。


 しがみついてでも、引きずり下ろす―――



「キェアッ!」


「ガァッ!」


「グオーッ!」


 突然、3体の悪魔がこっちに跳んできた。

 俺は魂気を回し、相手の攻撃を流そうとした。


 そして気付いた。


 奴らは攻撃の体勢をとっていない。

 まるで、近付きさえすれば良いような―――



「『厄誓跋扈やくせいばっこ』」



 3体の悪魔の体が光り、爆発した。


「ぐぁぁあっ!」


 まずい。

 遅れをとった。


 目がくらんで、何も見えない。

 体を吹き飛ばされているのが分かる。


 勘でも何でもいい。

 早く受け身の体勢を―――


「ぼふっ!」


 腹に激痛が走った。

 どこかの建物か何かに、腹からぶつかったのだ。


 一瞬で何かが喉を駆け上がり、吐血した。


「かはっ!」


 血を吐きつつも、安定しない視界に集中してみる。

 まともに見えるくらいに回復したとき、



「「「ブワァァォォア!」」」



 何体もの悪魔(爆弾)が、先程と同じように飛んできていた。




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