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第49話 経過

 日は流れ、武闘大会は終わってしまった。


 結果は何というか、案の定だった。

 俺は優勝し、賞金を得た。


 ヌィンダがいなくなったので他の冒険者の士気は上がっていたのだが、それだけ。


 俺が無双して終わった。

 俺は天世界でも相当な上澄みということが実感できた気がする。


 それはとても嬉しいことだが、同時にとても気を付けなければいけない。


 強さ故に傲慢になってしまえば、その程度になってしまう。


 だからこそ、この強さはむやみやたらに振りかぶってはならない。





「で、オレはアルタに重いのを入れてやったんだ!」


 シュゼが楽しそうに(自慢)を聞かせている。

 相手は、


「お姉ちゃんカッコいい!」


 コンディである。

 目をキラキラ輝かせている。


 武闘大会が終わった後、俺とシュゼとミーヴはあの店に来ていた。



 大会には、当然シュゼも参加していた。

 で、当然のように無双していた。

 で、俺とシュゼの一騎討ちが始まった。

 で、舞台が使い物にならなくなった。


 賞金は、天貨10枚にされた。


 ヌィンダと始めて戦ったとき以上に壊れたからな。


 あの大きさの舞台を作り直すならもっと掛かるようだし、これで済んだだけ良かったか。


 それに、シュゼが賞金を全額俺たちにくれた。

 訳も分からず返そうとしたら、


『元々こうするつもりで参加したんだよ。返済大変だろ? だからこれ足しにしてくれ。

 まぁ舞台ぶっ壊して10枚に減ったから、あんま意味無かったのかもしんねーけど。そういう訳だから、使え』


 とのことだった。

 感謝でいっぱいだ。




 シュゼとの一騎討ちは、凄まじいことになった。

 他の試合は最小限に終わらせていたが、あの時はそんな余裕は無かった。


 もはや、途中から殺し合いになりかけていた気さえする。


 シュゼの剣、もちろん真剣が眼球のほんの手前をかすめた。

 そしてついに、片眼を斬られた。


 俺が放った拳は、半分はシュゼに流され、半分はシュゼにダメージを入れた。

 そしてついに、シュゼの片腕が折れた。


 そこで試合は止まった。

 運営側の魂術使いに治してもらった。


 一応、その後にミーヴにも鎮痛現象ペインリーフをかけてもらった。


 かけてもらった後は、俺とシュゼ共々、ミーヴに怒られた。

 やりすぎだ、と。


 全くその通りだ。

 これからはヒートアップし過ぎないよう気をつけようと思った。




「ぶん殴るときは、こうだっ!」


 そんなことを考えるうち、そう言ってシュゼは椅子を立って拳をブンっと放った。


 何を教えてるんだ、全く。


「えいっ! ......こう?」


 この子は何を学ぼうとしてるんだ。


 コンディは仕方ないとして、シュゼあんまり腰入ってないし。


 そしたら見かねたのか、ミーヴが割って入った。


「コンディちゃんはこのお店を継ぐんでしょ? 強くなる必要は無いんじゃないかな?」


「あ、そうだった。ごめんお姉ちゃん、私、お姉ちゃんみたいになれない」


 コンディは申し訳なさそうにしたが、シュゼは咎めなかった。

 コンディの頭に手を置き、


「そりゃそうだろ。この店は、コンディ(おまえ)が、ちゃんと継いでやれよ」


 と言った。


「うんっ!」


 コンディの笑顔は眩しかった。

 その後も、楽しく食事が続く。




 ▶▷▶▷▶▷




 妊娠発覚から1ヶ月。


 まだまだお腹は膨らまず、細いままだ。


 すごく、楽しみだ。

 産まれる子供の姿が、声が、動きが。



 俺の子なら、体術の才能とかあるのだろうか。

 それなら、その才能を伸ばしてやりたい。


 父さんが俺にしてくれたように。


 どういう風にやってくれたっけか。

 最初の頃は、型の手解きだったな。


 覚えるまでひたすらやらされた。

 辛かったな。


 だがそのおかげで今の俺があるのだ。文句言うまい。


 それに、その子が強さを求めないのなら、無理して教えることもないだろう。



 というか、ミーヴの子でもある訳だし、魂術の才能も可能性あるか。


 そっちの方面だったらどうなるかな。


 その子は魂術を成功させようと努力し、魂気の操作を極める。

 ついに成功し、ミーヴ(母親)に見せる。

 褒められて、喜びをあらわにする。


 そんな微笑ましい光景が見られるんじゃなかろうか。



 無論、どちらだったとしても、あるいはどちらでもなかったとしても、構わない。


 存在してくれるだけで嬉しい。






 そうそう、今日はシュゼが来た。


 相変わらず何の断りもなく寛いでいるが、今に始まったことではない。


 もはや日常の一部だ。


 寛いだら、いつものようにミーヴの腹をさすっていった。

 力を入れすぎるなよと注意したら、ムッとした表情をされた。




 ▶▷▶▷▶▷




 妊娠発覚から3ヶ月。


 ギルドにて、ヘブアルたちと出会った。


「やあアルタくん」


「久しぶりね」


 相変わらず元気そうなのは何よりだが、なんでこんな所に2人がいるんだ?


「どうしてお2人がウドレストに?」


「今度受ける依頼の場所がこっちだったのよ。いつもサトゥーアを出たりしないんだけど―――」


「報酬に目がくらんだんだよ」


 ヘブアルはジュリンの発言を遮り、言った。

 ムッとする彼女を尻目に、言葉は続く。


「ま~たカジノで負けてくれてね、埋め合わせすることになったのさ」


「何よ、すぐに埋め合わせれるように、こうして高い依頼受けてるんでしょ!」


「カジノに行くのをやめろって言ってるんだよ」


「やめないわ! ギャンブルは私の人生よ!」


「ならせめて私財でやれ」


「アンタが私の取り分を少なくしてるからでしょ! あんなはした金で楽しめる訳ないじゃない!」


 仲良いな。

 俺とミーヴも、こんな喧嘩することになるのだろうか......


 いやいや、するもんか。

 お互いに理解を深めて、受け入れ合って、衝突しそうになったら意見を聞く。


 そうすればいい。



 と思っていたら、ミーヴが口を開いた。


「け、喧嘩しないでください」


 あぁ、そうか。今はそれどころじゃなかった。

 早いとこ止めるべきだった。


「え? あぁ悪いね。嫌なもの見せてしまって」


「ホントよ、ったく」


 ジュリンは不服そうだな。


「ところで、君たちは最近どうだい? "新婚生活"の方は?」


 やたらと強調してきた。


「仲良く楽しくやってますよ」


「そうかい。それは良かった」


 とここで、ムスッとしたジュリンの顔が晴れた。

 好奇心に駆られた子供みたいな顔してる。


「じゃあじゃあ、の方は?」


 隣を見たら、ミーヴがうつ向いていた。

 多分顔も赤くなってる。


「いきなり何の話ですか」


「からかっただけよ。どうせ熱い夜すごしてんでしょ?」


「......まぁ、3ヶ月前に妊娠が発覚しましたけど」


「え」


 途端に一同無言となった。

 周りのガヤガヤした声ばかり聞こえてくる。


「それは、おめでとう。嬉しいことだね」


「はい。本当に」


 あれ、ジュリンが黙ってる。

 急にスンとなって、どうしたんだ。


「そう......アンタたちに子供がね......」


 ジュリンはそう言って自分の腹をさすった。


 あ、そういえば、この2人には子供がなかなかできないんだったか。


 悪いことしたかもな......



「ところで、出産のめどはついてるのかい?」


「はい?」


 出産のめど?

 どういう......あ。



 そうだ、ミーヴも俺も、出産に立ち会うのなんて人生で初めてのこと。


 ならば、2人だけでやるのはまずい。

 出産、あるいはその手伝いの経験がある者に手伝ってもらった方がいい。


 でも誰を?

 ジュリンたちに、そんな経験はない。


 知り合いで、出産経験のある者といえば......

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