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第34話 帰宅と宣告

 



 小屋までの道は歩きにくい。

 流石に半年も住んでいれば体が勝手に慣れてくるが、最初の頃とかは転ぶのが常だった。


 石や枝が散乱している道だ。

 1度片付けようとしたこともあったが、キリが無くてやめた。


 そんな道を歩いて小屋に着いた。

 半年、4人で暮らした家だ。

 その扉を開けると、家具が目に入る。


 ミーヴがいつも読んでいる本がある本棚。

 その奥のキッチン。

 中央には机と椅子。

 ベッドも4つある。

 居候し始めて何週間かしたときに全員で協力して作ったんだ。


 ヌィンダとシュゼは見えない。

 外にもいなかったし、出掛けてるのだろうか。


 買ってきた荷物を机に下ろす。

 食材はキッチンに運ぶ。

 ろうそくは戸棚にでも入れておく。


 シュゼに買った短剣はどうしようか。ベッドの下にでも突っ込んでおけばいいだろうか。

 でもそれだと汚くなりそうだな。

 うーむ。これも戸棚に入れておけばいいか。


 そう考えて戸棚の奥に短剣を入れる。

 ここならシュゼにバレることも無いだろう。




「じゃあミーヴ、俺はそろそろ行くよ」


「うん、行ってらっしゃい。アルタは凄いよね。生命神様と繋がりがあるなんて」


 俺が今から行く場所は神殿だ。

 昼間の内にミーヴには伝えておいた。

 生命神は俺がこれからは天世界で生きていくつもりなのを知らない。

 早い内に伝えておかないと。


「繋がりって言っても、俺が頼んだ側だけど......」


「だから凄いんだよ。生命神様に認められてるってことでしょ? 羨ましいくらいだよ」


 生命神に認められている。

 そうなんだろうか。

 俺の魂は興味深いとは言ってたけど、認められているっていうのは違うような。

 それに、俺は自分でした頼み事を取り消しに行く訳だ。

 胸は張れない。


「まぁ、行ってくるよ」


「行ってらっしゃい」


 ミーヴは微笑み、小さく手を振った。




 ▶▷▶▷▶▷




 そして天世五魂神の神殿。

 久しぶりだ。2ヶ月ぶりくらい。


 あの時は確か......そう、驚いたんだ。

 生命神が何か変わった物を持っていた。

 何か、黒っぽくて薄い板。

 そのうち1つの面は光っていたな......

 えっと......確か[スマホ]と言っていたか。

 73番世界に遊びに行って買ってきたとか何とか。


 あの世界は文明が発達してるけど、発達し過ぎて多くの問題が起きてるとか。

 破壊神が滅ぼさずとも勝手に滅びそうとか。

 そんなことを言っていた。


 まぁその事は別にどうでもいいんだ。


 今日は生命神に言うことがあって来た。

 今は目の前のメイドに着いて行っている。


 生命神は俺がハーフであることは話したとのこと。

 だから最初の頃ほど嫌悪はされてない。

 羽を出さないのは羽を持っていないからだと、納得はしてくれた。

 でもそれだけ。

 やっぱり五魂神に定期的に会えるのは嫉妬を買うようだ。


 そして、その事を口外することも許さないとのこと。

 五魂神の命令だ。天使なら誰もが従順に聞く。

 おかげでなんら問題ない生活ができている。


 と思いながら歩いていると、1人の天使が目に入った。

 メイド服じゃない。

 タディスと同じ服だ。

 長い金髪が後頭部に纏められていて、腰に剣が携えられている。


 彼女は、半年前に助けてくれた神官天使だった。


「―――神官天使、アイガス様に何かご用ですか?」


 案内役のメイドが聞いてきた。

 ついあの人に目を奪われていた。


「はい。半年ほど前に、命を救って頂き、そのお礼を言いたくて」


 俺がそう言うと、メイドは少し冷ややかな目で俺を一瞥した。


「半年前......あぁ、憤怒級サタンが出たときの。でしたら私が伝えておきます。早く行きますよ」


「あ、はい」


 やっぱり、俺が神殿ここでしていいのは最低限のことだけらしい。

 もうここに来ることも無いだろうから、自分の口で伝えたかったけど、仕方ないか。




 ▶▷▶▷▶▷




 生命神の部屋に通された。

 まだ本人は仕事から帰っていないようだ。

 俺はソファに縮こまって座っている。


「......」


「......」


 そして、目の前にタディスがいる。

 怖い。冷たい目が俺を貫き続けている。

 見るからに不機嫌そうだ。

 2ヶ月前、生命神は彼を説得していたらしく、一応タディスは俺が生命神と会うのを認めた。


 だがそれも外面だけの話。

 冷たい視線がその証拠というものだ。


 生命神の命令により、タディスは俺に手を上げたりはしないが、それだけ。

 心の奥は嫌悪に満ちているし、表情は不機嫌そのものだ。


「―――お前」


 ふと、タディスが口を開いた。


「普段と様子が違うな?」


「え?」


 普段と様子が違う。

 どういうことだろうか。

 いつもと違って、生命神への頼み事を取り消しに来たからだろうか。


 いつもと同じように振る舞っているつもりだが、タディスの目には違って映るのか。


「分かってしまいますか」


「......やはりか。そんな態度で、生命神様に頼み事をしているというのだから、笑えたものだな」


「......申し訳ありません」


 タディスの声色は嘲笑だ。

 鼻息を1つ、ふんと鳴らした。


「謝る暇があるなら善処しろ。―――全く、表面上客として接しているが、生命神様のご意志でなければとっくに殺してる」


 タディスはそう言って席を立った。

 そのまま部屋の出口に立ち、また言った。


「―――今日は生命神様から重要なお話があるそうだ。心して聞くがいい」


 タディスはそれだけ言って部屋を去った。




 ▶▷▶▷▶▷




 その数分後、生命神が帰って来た。

 俺は立ち上がり、頭を下げた。

 その行動に生命神は意外そうにした。


「どうしたの? いつも頭下げたり(そんなこと)しないじゃん」


 生命神は俺の向かいの席に座った。


「タディス様に態度について指摘されたので」


 俺がそう言うと、生命神は「はぁ」とため息を1つこぼした。


「まったくタディス(あいつ)。ボクは何もするなって言ってるのに......。アルタくん、別に普通にしてていいんだからね? あとタディスに様なんてつけなくていいよ。」


「はい......」


 と言っても、やっぱり相手は天世五魂神。

 敬意を持った態度で接して行かないと行けない。


 そしてタディスに様をつけなくてもいいという話。

 タディスは神官天使だ。

 天世界では、天世五魂神の次に偉い立場。


 様はつけるべきだと思うが......そのさらに上の立場の生命神の親切を蔑ろにしても良くない。

 せめて彼女の前では呼び捨てにしようか。

 いや、本人に聞かれても良くない。

[さん]はつけておこう。


「タディスさんから聞いたのですが、重要な話とは何でしょうか?」


 俺の言葉に、生命神は申し訳なさそうな顔をした。


「あぁ、聞いたの。内容も聞いた?」


「いえ」


「そっか......落ち着いて聞いて欲しいんだけどね?」


 生命神はやけに真剣な声で言った。

 そして、続けた。


「この半年間、ずっとキミの魂を観察、研究してきたけど......どうやら、ね」


 生命神は大きく息をついてから、言い放った。


「キミは転生できないみたいなんだ」




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