第28話 震え
俺は奴の後を追っていた。
何度も見失いそうになった。
その度に適当な岩に登ったりして、見つけた。
奴は歩き続けていた。
羽は無かった。
長い銀髪と、光の無い灰色の目がひたすら奥へ進んで行く。
冷たい地面に一定のリズムで足音が響く。
「......」
殺気が漏れ出さないようにするのが苦しい。
俺の目は奴だけを見続けていた。
奴の腕が揺れる度、拳に憎悪が溜まって行く。
あの腕。
赤く染まっていたあの腕はもう白く戻っていた。
最期に見た赤い腕が照らし合わせれる。
憎悪、恨み、怒り。感情が全身に巡った。
▶▷▶▷▶▷
そして奴は歩を止めた。
奴は小屋の前に立っていた。
奴は目を閉じ、ため息をつき、目を開け、小屋を見上げた。
ヌィンダの住む小屋より小さく、古い。
薄暗い場所だ。
岩肌に隠れ、日光が遮られている。
暗く曇った空は俺と奴を包んでいる。
「俺は......」
奴が口を開いた。
目は動かず、一点を見続けている。
静止して、どこか遠くを見ながら声を発し続ける。
「後悔、している......」
静かだがよく聞こえる声。
低く単調な声が耳を通じて俺に届く。
どう見ても、俺に話し掛けているとしか思えなかった。
そして、何故か俺の体は動かなかった。
今にも飛び掛かりたいのに。
飛び掛かって奴に憎しみをぶつけたいのに。
手に、足に、力が込められて行くのに。
拳は震えるばかりで、行動に移せない。
奴は立ち尽くしたまま、続けた。
「俺は―――」




