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第24話 目的

 



 シュゼと平原での戦い。


 ほぼ相討ちだった。

 お互い強烈な一撃で、しばらく動けなかった。


 待っているとヘブアルとその他数人が来てくれて、

 あの細身の男に魂術をかけて貰ってからギルドに戻った。



 ギルドの食堂。

 俺はシュゼのそばにいた。

 ジュリンの追っ手を掻い潜っていたところ、

 ヘブアルがまた首根っこ掴まえて連れていってくれた。


「―――は? アルタお前そんなことも知らないのか?」


「えと、まぁ、うん」


 俺の質問にシュゼは目を見開いて驚いた。

 内容は悪魔のことだ。

 シュゼは『急所は首じゃなかった』て言ったし、

 初めて一緒に強欲級を倒したときは、あの怠惰級みたいに黒い何かは出てこなかった。


 悪魔のことはよく知っておいた方がいい。

 そう思って聞いたが......ミーヴに聞いた方が良かったか?


「はぁ。よく聞けよ? 悪魔は罪級で性質が変わる」


 ふむ。


強欲級マモン以下は牛とか馬と同じように殺せる。

 でも怠惰級ベルフェゴール以上だと違う」


 なるほど。


「欠損もすぐに治るし、急所をやらない限り再生し続ける」


「『首じゃなかった』っていうのは......?」


 俺の呟きにシュゼはまたため息を漏らす。

 その後手に持ったコップを飲み干す。


「本当に知らないんだな。―――急所は4つ候補がある。首、脳、心臓、色石だ。今言った順に急所の可能性が高い。分かったか?」


 なるほど。

 急所の可能性が高い首を斬ったけど違ったから

 ああ言ったのか。


 それで俺に脳を攻撃するように言った。

 心臓が急所だったからあのひと刺しで死んだ。


 ということは俺の頭への攻撃は意味が無かったのか。

 いや、俺が悪魔の頭を攻撃していたからシュゼが心臓に集中できたんだ。

 役にはたっていただろう。


「分かった、ありがとう。わざわざ悪かったな」


「いいんだよ。ほらもっとジュース貰ってこい」


「はいはい―――ん?」


 ふと、机の下に違和感があることに気づいた。

 そして―――



「アルタ、ウチに来なさい! そして私の息子になりなさい!」


「う、うわぁっ!」


 机の下からジュリンが這い出てきた。

 それと同時に俺は椅子から転げ落ちた。


 すぐに立ち上がってその場を離れる。


 ヘブアルは何してるんだ!?

 あ、あっちに......寝てやがる!



「あっ! 待ちなさい!」 



 宴とは騒がしいものだが、今回の宴はより一層騒がしかった。




 ▶▷▶▷▶▷




 その後俺たちは小屋に戻った。


 ギルドを出る前にヘブアルたちにあの天使のことを聞いたが、知らないとのことだった。


 小屋まで戻ったときには日は西に大きく傾いていたため、早く水浴びしに行くことになった。


 もちろん、ミーヴとシュゼが2人でだ。

 俺はその後1人で行く。




「―――アルタ、少しいいか?」


 ヌィンダが聞いてきた。

 朝に失った風格は取り戻したようだ。

 2ヶ月で見下ろされるこの感覚にはもう慣れた。


「はい、何でしょう」


 ろうそくの火を横目に、ヌィンダの方を向く。

 いつもの目だ。静かで澄んだ目。


 互いに見つめ合ったまま時間が経つ。




「今更かもしれんが、お前は何故強くなりたい?」


 ヌィンダは淡々と言った。


 強くなりたい理由。

 そりゃあ、あの天使を殺すためだ。


「倒すべき相手が......いるんです」


 俺が答えた後、またしばらく沈黙が流れる。

 ヌィンダの口元が緩んだ。

 何かいい感情を抱いてるときのヌィンダの癖だ。


「そうか......いいな」


 ヌィンダがうつ向き、呟く。


「私は2000年ほど生きたが、強さに目的を持ったことが無かった。適当に、適当に悪魔を殺して生きていたら強くなっていた」


 この前聞いたが、ヌィンダは長命種らしい。

 それならこの圧倒的な強さにも納得が行くというものだ。


「私が持つのは適当な強さだ。適当な強さは枯れる」


 ヌィンダはいつの間にかうつ向くのをやめていた。

 代わりに、ろうそくの火を見ていた。

 いや、もっと奥だ。

 火の奥の窓。窓の奥の空。そのさらに奥。

 その静かな目で、どこか遠くを眺めていた。



「500年前、弟子をとったことがあってな。そいつは強くなる目的があった。そして当時の私を越えてしまった」


 500年前か。

 それならその人はもう死んでるのか。

 長命種じゃない限り。


「お前も、そいつと同じだ。目的がある限り、お前はずっと強くなる。―――私の言えることじゃないかもしれんがな」


「そうですか......ありがとうございます」


 俺はヌィンダを越えられる。

 言われなくとも、もともと目指していたことだ。

 あの天使は、多分ヌィンダより強い。


 ヌィンダは越えるべき壁だ。




「アルタ、ヌィンダさん、ただいま」


 ミーヴとシュゼが帰ってきた。


「次お前だぞ、アルタ」


「おう。行ってくる」


 俺はシュゼたちの横を通りすぎ、小屋を出た。




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