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第23話 平原の決闘

 



「「―――は?」」


 養子。

 養子?


 何を言ってるんだ、コイツ。


 俺が頭の中を(?)で埋めていると、ヘブアルが口を開いた


「何を言い出すんだ、ジュリン! 養子って......」


「何よヘブアル。あんたアルタが気に入らないの!?」


「そうじゃないが、唐突すぎる! 大体アルタ君にだって家族がいるだろう」


「あ、えっと、家族はもう他界しましたけど......」


 俺の呆気にとられた答えに、ジュリンが目を輝かせる。


「そう! それなら問題無いわ!」


「いや、あの......」


「あっ、もちろん邪魔とか言ったのは謝るし、助けてくれたことも感謝してるわ。ごめんなさい、そしてありがとう」


 そう言ってジュリンは頭を下げる。


「いや、それについてはいいんですけど......」


「本当に!? じゃあ早速―――」


 ジュリンが完全に暴走している。

 会った時とは偉い違いだ。


「はいはい、1回帰ろっか」


「あっ、ちょっと! 離しなさい!」


 ヘブアルがジュリンの首根っこ摘まんでそそくさと戻って行った。


 修理人たちの避難も積極的にやってくれてたし、

 頼りになる人だ。



 と思っていると、入れ替わりでシュゼが来た。

 剣を抜いている。


「......アルタ」


 シュゼが殺気が混ざった声を出す。

 青いつり目が俺を貫く。



 ドッ!



 シュゼが地面を踏み込み、俺に向かって剣を振って来た。

 咄嗟に避けて距離を取る。




「アルタ、オレと決闘しろ」


「いいけど、それは―――」


「木刀じゃない、真剣だ。寸止めもしない」


 シュゼの声は本気だ。何も嘘をついてない。

 本当に俺を斬り殺す勢いだ。


本気で(・・・)、オレと戦え!」




 ▶▷▶▷▶▷




 シュゼはこう言った。

『オレに手加減するな。オレも手加減しない』と。


 そしてそれは嘘でもブラフでもなかった。


 シュゼが一閃を放つ。

 それは悪魔を斬るときと変わらない迷い無い

 剣撃。

 魂気で防御し、隙ができたシュゼの腹に拳を放つ。


「ぐっ! ―――ふふっ」


 シュゼの口元が緩み、殺気が一瞬止まる。

 しかしそれは本当に一瞬。

 すぐにまた剣撃が飛んでくる。


「そうだ、そうだ! 本気のお前に本気のオレが勝つ。手加減なんてゴメンだ!」


「そうか、よっ!」


 シュゼの剣撃を防御しても、すぐに反対側から追撃される。

 本気のシュゼ。

 攻撃の威力を弱める暇なんて無い。


 こっちも本気でやらないと死ぬ。



 あちこちにクレーターができていた。

 荒れた平原に風が吹き荒れる。


「......」


「......」


 互いに黙り込む。

 見つめ合い、時間がすぎる間も風は吹き続ける。

 曇った空の下、シュゼの短い金髪が小刻みに揺れていた。


 風が止んだ瞬間、シュゼの目の前まで走る。

 シュゼのカウンターを避けて、剣をはたき落とす。


「しまっ―――」


 シュゼの視線が逸れた。


「隙あり!」


 右肩に拳を打つ。

 シュゼは左手で殴ろうとするも、刃術使いの打撃は体術使いほどの精度は無い。 


 飛んでくる拳を避ける。

 空いた横腹に蹴りを入れる。


 シュゼが飛んでいった先には、さっき落とした剣が落ちていた。


 体勢を立て直ながら拾い、シュゼは構え直す。


「次で終わりにしてやる、アルタ」


 白い歯を見せながら嬉々とした表情でシュゼが宣言する。


「来い......っ!」




 ▶▷▶▷▶▷



 ―ミーヴ―



 ギルドにて、冒険者たちの力比べを眺めたりしながらアルタとシュゼの帰りを待っていた。


 後ろの方から「俺の勝ちィ!」とか「まぐれだ!」とかいった声が聞こえる中、依頼の報酬の袋を見てみる。


 銀貨2枚を貰った。

 揺らすとチャラチャラ音がする。


 今回の依頼は物探しの手伝い。

 と言っても、私より小さい子供の依頼だった。


 失くしたおもちゃ探し。

 見つけたら可愛らしい笑顔を見せてくれた。

 ニコって。



 ガチャン



 ギルドの扉が開く音がした。

 待っている間に何回も聞いた音。


 帰ってきた! と思って振り返っても別の冒険者ってことが常。

 でも今回は本当にアルタとシュゼだった。


 他にも数人の冒険者が一緒にいる。

 私はすぐに駆け寄った。


「おかえり。アルタ、シュゼ」


「あぁ、ただいま。イテテ」


「おう。すー、はぁ」


 アルタは腕を抑えて、シュゼはため息をついて歩く。


 その後ろには依頼を受けたときにアルタに話しかけてきた人がいた。


「おや、ミーヴちゃんか。アルタ君とシュゼ君、凄く強いね。僕たちの出る幕は無かったよ」


「あ、あー、そう、ですね」


 シュゼ()

 やっぱり男の子だと思われてるんだね、シュゼ。


 本人の方を向いてみると、色石を提出しているところだった。


「感謝の意味も込めて、みんなで宴をしようと思うんだけど、君もどうだい?」


「あ、じゃあご一緒させて貰います」




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