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第22話 怠惰級

 



「シュゼ、やれるか?」


「おう!」


 そう言った瞬間、シュゼが飛び掛かる。


「ガァァァア!!!」


「ふっ!」


 噛みつこうとした悪魔の首に刃が通る。



 ザシュ!



 悪魔の首が落ち、1人の冒険者が力無く呟く。


「―――お、終わった......?」


「まだだ! 多分今に......」


 シュゼが大声を上げてそれを否定した。


 そして。


「っ!?」


 悪魔の斬られた断面から黒いモノがぬるりと出てきた。

 黒い何かは形を形成していき、頭の形に近づいていく。


「シュゼ、あれって......」


「あぁ、急所は首じゃなかった。オレは心臓をやる。お前は脳だ!」


「あ、あぁ、分かった!」


 俺が答えると、シュゼは走り出した。

 俺も合わせて走る。


 魂気を足に集めろ。

 魂気で足を覆って強度を上げろ。


 跳び上がり、悪魔の頭に蹴りを入れる。


 それと同時、悪魔から鈍い音が聞こえる。



「ガァァァ!」


 悪魔が雄叫びを上げ、暴れる。

 地面をえぐり、草と土煙が辺りを舞う。


 俺は悪魔の耳にしがみつく。

 頭の上に降り立ち、殴る。


「ギェェァアァア!」


 悪魔の尻尾がブンブンと振られる。

 風圧を起こし、小石の弾幕が飛び交う。


 その先には......ジュリンがいる!


 剣は持っているが、防御の体勢に入れてない!

 まずい!



「危ない!」


 悪魔の頭を蹴ってジュリンの元に跳ぶ。

 今度は右手だ、右手に魂気を集めろ。


「―――へ?」


「ぐっ!」


 間に合った。

 が、足が地面に着く前に尻尾に打たれた。


 ジュリンごと俺の体は吹っ飛び、少し離れた木にぶつかる。


 木がバキッと折れる。


「がふっ!」


 ジュリンが声を漏らす。

 意識が朦朧としているようだ。背中からの出血も多い。

 ジュリンを抱えている腕が濡れているのを感じる。


「誰か! 魂術使いの人は!?」


「あ、あぁ! 俺だ!」


 絶句していた冒険者の1人が駆けつけてきた。

 細身の痩せた男。


「意識が朦朧としてます、魂術を」


「分かった」


 男はようやく自我を取り戻したように言った。



 その答えを聞き、俺は悪魔の方に走りながら

 叫ぶ。


「みなさん、下がってください! 俺たちで悪魔をなんとかします! 修理人の避難を!」



「あ、あぁ!」

「分かった!」

「気をつけろよ!」


「任せたぞ!」



 何人かのそんな声を横に、魂気を足に集める。

 人がいなくなれば遠慮なく戦える。


「グルァァア!!」


 悪魔の爪が前から迫る。

 1度回避に専念。


 獲物を見失った爪が地面を斬る。


 悪魔は暴れ、その力を振るう。


 悪魔の爪、牙。

 シュゼの一閃。

 俺の打撃、蹴り。


 交わり、互いに傷を生む。



「たぁっ!」


 近くの岩を利用し、俺は悪魔の頭上へ行く。


 悪魔の意識は俺に向いた。


 悪魔の体が縮み、一気に放出。

 跳んできた。


 防御はしたが、流石の体格差。

 防御を突き抜け、頭上から攻撃が振り下ろされる。


 しかし悪魔も空中戦は苦手らしい。


 爪ではなく、肉球が当たった。


 俺は空中で叩かれた。

 当然下へ落ちる。


 轟音を立て、土煙があがる。


「グルル」


 悪魔の目が光った。

 赤い口が開かれ、中の白く尖る歯が眼前に迫る。


「アルタ!」


 直前でシュゼの乱入。

 悪魔の口を斬り裂いた。


 俺はすぐさま起き上がり、悪魔の背後へ回る。


 背中に登り、頭へ走る。


「グァルゥァア!」


 すぐ背後から殺気を感じた。


 ジャンプ。

 滞空中に見てみれば、悪魔の尻尾が伸びていた。


 俺がさっきまでいた場所だ。

 跳ばなければ刺されていた。


 そんなこともできるのか!



 尻尾はまだ勢いを失わない。

 またも俺を貫かんと、放たれた。



「はっ!」


 魂気を纏わせ、流す。

 矛先のずれた尻尾。


 シュゼがそれを斬るのを尻目に、俺は走る。


 そして着いた。


 全ての魂気を集め、垂直に撃つ。


 頭が揺れ、その振動が尾まで伝わる。




 ―――あまりダメージがあるようには見えないな。


「シュゼ」


「おう。今のでハッキリした。急所は心臓だ!」


 と、シュゼが言い終わった直後。


 悪魔が思い切り身震い。

 加えて、そこかしこを走り回った。


 急所でなくとも、痛いものは痛いか。


 足場となる悪魔の体が揺れ、俺たちは投げ出される。


 受け身をとり、地面に着地。


 視界の中心に、悪魔の鋭い眼光が置かれる。


「シュゼ」


「アイツを仰向けにできるか?」


「......やってみる」



 風が吹き、地を埋め尽くす草花が揺れる。

 草花が互いの闘志とリンクし、さらの揺れる。


 1歩。

 俺たちは踏み出す。


 悪魔もまた、1歩踏み出す。


 距離が少しずつ縮まってゆく。


 視界の中心に据わる、悪魔の目。


 風に乗る木葉により一瞬隠れた、悪魔の目。



「はぁぁぁぁ!!!」


 シュゼは悪魔の頭上、さらに上へ回る。

 およそ3度目の構図。


 悪魔は慣れたとでも言うように、その牙をシュゼへ向く。


「アルタ!」


「おう!」


 悪魔の重心。

 その位置ががら空きになった。


 今なら行ける。

 傾かせられる。


 魂気を全て右手拳に集中。

 重く鋭く。


 吹き飛ばすつもりで―――



「がァっ!」



 打つ!



「ガルァア!」


 巨体がよろめき、倒れて行く。


 轟音と共に巨体が地面とぶつかり、その胸があらわとなる。


「シュゼ!」


「これで終わりだぁ!」


 空。

 銀色の刃が降り、悪魔の胸へ一直線。


 剣は深く突き刺さり、急所コアを打ち抜いた。




「グ、ガ、ルル......ル......」


 悪魔の体が溶け出した。

 煙を立てて、シュ~という音が耳をつく。


 その中央に白い色石が輝いていた。




 ▶▷▶▷▶▷




 色石を回収した後、俺たちは橋の方に戻った。

 俺もシュゼも、無傷とは行かなかったから、

 ジュリンを預けた男に治してもらった。


 その後修理人たちに感謝されて、何のかんのあってヘブアルに連れて来られた。



「あの、なんで連れられてるんですか?」


「まぁ、いいから来てくれ」


 俺の質問もうやむやにされる。

 ヘブアルはひたすら突き進んでいく。


「―――ほら、連れてきたよ」


「え、えぇ」


 ヘブアルに連れて来られた先には、ジュリンがいた。


「ほら、アルタ君に何か言いたいことがあるんだろう?」


「う、うるさいわよ!」


 ジュリンはヘブアルに噛みつく。

 もちろん物理的な意味ではなく。


 だがこんなことはいつものことなのか、

 ヘブアルは涼しい顔して流している。




「そ、その......う、ウチのよ、養子にならない?」


「「―――は?」」


 俺とヘブアルの気の抜けた声がこぼれ落ちた。




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